『
25年目の弦楽四重奏』
順風満帆に見えるユニットにも、その内情は誰にも分からない。
人は各々属する社会の中で役割を持つ。その中で自分の能力・実績が正当に評価されているかは誰しも気になるところだろう。
適材適所とはいうけれど、全ての人が<今いるポジション>を望んでいるとは限らない。
まして芸術家ならばなおの事…。
有名なカルテットのチェリストがパーキンソン病に侵され存続自体が困難になるところから、カルテットもそれを構成する家族にも見えないほころびが出始める物語。
監督2作目とは思えない手堅い演出をみせるヤーロン・ジルバーマンがベートーベンの弦楽四重奏曲第14番(作品131)にインスパイアされて思いついた作品だという。
脚本もかねる同監督は、
この曲の歴史的背景を巧みに活用して物語に置き換えたかに思える。
劇中に説明はあるが、興味深いところに目をつけたと感じる。
はからずも冒頭で<ピーター>が語る言葉が作品全体を支配していて、なるほどと思う。
人生に狂いが生じることは誰にもあるだろうが、そんな時いかに修正していくかがまさに試される。
世の中は危ういバランスの上で成り立っているのだ。
まずは見事なキャスティング。
カルテットの“父親的存在”でチェロ奏者<ピーター>のクリストファー・ウォーケン、第2バイオリン<ロバート>のフィリップ・シーモア・ホフマン、その妻役でビオラ奏者<レイチェル>のキャサリン・キーナー、第1バイオリン<ダニエル>のマーク・イヴァニールと彼らの奏でるハーモニー(というよりバトル)に酔いしれる。
いつもながら卓越した演技を見せるホフマンは劇中でこそ<第2>であるが、芝居では<第1>だな。(笑)
ホフマンとキーナーの娘を演じるイモージェン・プーツの存在も忘れがたいものがあった。
不協和音を超えた余韻がいつまでも響き渡る。
7月6日より公開
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