『
ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
人は辛い現実を直視しがたいもの。
生きるために様々な緩和策を意図せず講じるものだと思う。
名匠アン・リー監督は極限状況下でのサバイバルの苦労を美しい映像とともに見事な作品に仕上げている。
ヤン・マーテルの小説『パイの物語』の映画化で、副題にあるとおり227日間虎と小さなボートで漂流した体験談を中年になったパイがフリーライターに語って聞かせるというスタイルでみせる。
原作未読なれど、出来上がった映像から
<どういう文章>をここまで幻想的に仕上げたのかは想像もつかない。
キャスティング、虎、大海原の描写といずも困難を極めたのではないか。
撮影前は素人だったというメインキャストである青年<パイ>役のスラージ・シャルマが物語の進行に合わせ体重を増減させていることやほぼ全編に渡ってCG処理された虎。少しでもウソ臭いと内容が奇想天外なだけに作品全体がウソ臭くなってしまうので、かなり気を使ったのではないか。
なんと言っても描かれる
「水」の美しさは筆舌に尽くしがたい。
世界一美しいプールの底から空を切り取ったカット、黄金に輝く鏡のような海原、夜空に映える水しぶきなど枚挙にいとまがない。
暗喩を感じる箇所が随所に存在する。
人が横たわるように見えるシルエットや、あたかもノアの箱舟のように多くの動物を乗せる船、また沈没するのが<日本船>で態度が悪く“終わっている”と思わせる仏人(白人)コック、そして生き残るのがインド人というあたりも何をかいわんやである。
何より複数の神を信じ、円周率を意味する名<パイ>に込められた願いも読み取りは様々にできそうだ。
脚本家デヴィッド・マギーの力量は青年と虎との関係のみならず、全体を通してキチンと家族の話になっている点にも確かさを感じる。
3D効果も幻想美向上に大いに寄与していると思う。
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