『
ソハの地下水道』
いかなる底辺に生きていても、人は変われるチャンスがある。
しかし変わるのは大変だ。長いものに巻かれるほうが楽だもの。
これは第二次世界大戦時、ナチスの占領下にあったポーランドに住むレオポルド・ソハという実在した人物の想像を絶する物語。
第二次大戦を舞台にした映画は数知れずあったが、まだ隠された逸話が存在していた。
英題は“In Darkness”だが、邦題は同じポーランドの先輩アンジェイ・ワイダの『地下水道』に倣ったのだろう。実際、アグニェシュカ・ホランド監督はワイダのもとで働いたこともあるということなのでまんざらでもあるまい。
<衣食足りて礼節を知る>…という諺があるように、物質的欠如がいかに人間性を奪い取るかはよく承知している。
足りていて礼節が欠如している人間は非難してよかろうが(笑)、この主人公の打算的な行動を非難できるものはいるだろうか?
それでも人間ならば“ドブネズミ”並みの生活者を前にして葛藤を持ち得ないとしたら哀しすぎる。
底辺の生活を知るものだからこそ共感しえたのかもしれないが、
絶望が支配する“暗黒”に一筋の光を見せたソハの行いは人の持つ崇高さを提示してくれているように思える。
ことさらナチスの残虐性をクローズアップさせた描き方をしていないのは今時のスタンスだろうか。
ソハの分岐点となる箇所で、もう少し印象深い演出を見せても良かったかとも思うが、キチンとポーランド語やドイツ語などを使っていたのは(当然といえば当然だが)好感が持てる。
女性監督らしいなと思ったのは、折に触れてキーとなる言葉を発するのが女性だという点か。
ソハの妻しかり、娘しかり、またユダヤ人少女の<
対になるセリフ>には思わずハッとさせられる。
しかし終始息が詰まりそうな映画。閉所恐怖症の方は覚悟してご覧ください。
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