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2018年09月15日23:04

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日本脱出

『日本脱出』
 物欲、怒り、焦燥、性欲動、数多なコンシャスネスが交錯しながらも、クールな感覚で整理されスタイリッシュする。裏切りとファムファタール、拳銃とサスペンスといったフィルムノワールのフォルムに、我々が身近に持ち合わせているネイチャーが描きあげられる。ネイチャーとは、あるがままに在る欲望だ。
 現状打破の希求はいつの時代にも起こるものであり、欲望はどんなときにだってあらわされている。喜重は226、東京オリンピック、王貞治756本ホームランと、日本帝国国家が開催するビッグイヴェントを題材として作品を表すが、ミームによって引き起こされる欲望とは違う、根源的な欲望を常に追っている。そしてそのそうした欲望は、常にオールウェイズ、宙ぶらりんであり、悲劇性も歓喜もごちゃまぜになっている。人間本質なそのものは曖昧なものというより、ごちゃ混ぜになっているもの。ラストに表される揺れるカーゴネットの中で歌う主人公のジャズソングに、ネイチャーが表されている。或る方向に向かっていても、志向性は決して定まらずにいるのである。脱出へと向かうその先には、定まらぬものだけしかない。表層の下に隠れ奥底にあるものを顕さんとすること、現況を糾弾するがあまり時代が当時から現在へと移ればその熱さと怒りだけが突出せしめてしまい古さ感じさせてしまうオオシマ(もっとも、状況がいっこうに変わらないがゆえにそのことに対するフューリーは現状維持をし続けるのではあるが)とは違い、イマヘイ寄りにあるセンスである。普遍的である本質なるもの、オリンピックが2年後に迫ったこの時代にも現実性を帯びて色あせない欲望として在る。



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