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2017年03月24日12:19

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ジャンゴ 繋がれざる者



『ジャンゴ 繋がれざる者』
  契約という供儀をもつ社会で、登場人物たちはプライドを賭けている。尊厳はアンチェインドゥ、縛り上げられ閉ざされるものではない。ディカプリオは、今回よくよく見れば、ワルのトップというより、ジャッキーブラウンのデニーロの役回りと同じような、お人よしな役を演じている。タランティーノはこうした一貫性のない多様な趣ある人物には、演技力あるスターを起用するのかな。お人よしだけれど、プライドのないデニーロに比し、ディカプリオ演じるカルヴィンキャンディはプライド高い。登場人物たちはプライドを賭けているのである。
  主人公ジャンゴの本当の敵はジャッキーブラウンと同じように、サミュエルLジャクソンである。ジャクソンによって肉体化されたスティーヴンは本当は毅然としているのであるが、にもかかわらず、農場主にフレンドリーに下手に出てヘコヘコしてして、そして陰で支配している。ジャンゴにすれば、同胞として人として風上に置けない卑劣な野郎なのだろう。スティーヴンは環境汚染された人物というではなく、ミュウータントと化した奇異な人物である。タランティーノには終盤には、そこで描かれる世界総てを知っている謎の人物が登場する。我々オーディエンスの知らないそこで描かれている世界を全て知っていることは、キルビルにおけるビルやヘイトフルのデイジーの弟ジョディにも言えるし、忘れたけれどレザボアにもそうした人物いたはずである。
  ところで、これはヴァイオレンスの連鎖であっても、サムペキンパーのような情緒性はない。タランティーノはあまりペキンパーには興味ないのだろう。アルドリッチのようにストレートである。情緒性はスパゲッティウェスタンにパロッた哀愁に僅かに表されるばかり。されど、さっぱりとドライではない。会話が多いことによって、人物のエモーションが微かにテクストをウェットにさせる。
  一番興行成績がよかったのが分かるぐらい、ストレート。なんやかんや言わずとも、意味なく、ただただ水戸黄門的に楽しむもの、それがこの作品である。主人公の妻ブルームヒルダがラストに手を叩くが、アプローズのサインが如くにオーディエンスはこれに導かれ、シアターでは拍手をする仕掛けとなるものである。




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