1月14日の祝日は、豊島区千早の友人宅で、お正月恒例のかるた会だった。
友人と、そのお父様お母様と、友人の息子さん、私の4人。
皆それぞれ得意札もあり、力のこもる熱戦になっていつも楽しい。
読み手をつとめるのも大好き。雅な歌を声にのせるのは気持ち良い。
ひとしきり手合わせしたあと、手作りのぜんざいをいただいた。
香ばしく焼かれた角餅が入っている。塩昆布と白菜の漬物が箸休め。
私は西の育ちだから、なじんできたのはもちろん丸餅。
母は静岡から山口にお嫁に行った当初、
お餅が丸いのには驚いたとよく言っていた。
でも慣れてみたら餅つきのその日のうちに、さっさと形を作ってしまうのは、
そのあと切り分ける手間もなく、そのまま保存しておけるので楽で良いとも。
私のほうは丸いお餅しか知らないので、
四角いお餅があるという話にびっくりした。
まあ、かき餅はやはり切り分けて干していたけれど、別物だから。
お餅つきと言えば、皆でわいわいお餅を丸める情景が目に浮かぶ。
うんと小さい頃、それは楽しみな日だった。
決まって12月30日。9の付く日は「九（＝苦）餅」だからいけないとか、
31日は一夜餅だからいけないとか、
母がそのつど言うことでしきたりを覚えた。
お正月飾りと同じこと。
物心ついた頃は、台所はまだ土間で、かまどもあった。
後には改装してしまったけれど、
年に一度この日ばかりはかまどが大活躍。
ここでもち米を蒸すのだ。
最初はお湯を沸かし、それをひしゃくで掬って、
土間に用意した石臼に入れ、丁寧に洗う。
臼のそばに三脚台を用意して、水をいれたボウルを置く。
これは返し手用。
蒸しあがったもち米を、臼の中に入れると、
まだ米粒がつんつん立っていて、蒸し器の底のかたちがそのまま。
それを杵で突き崩してゆく。最初から杵を振り上げて搗いたりしたら、
米粒が飛び散ってしまうから。
臼にこすりつけるように上から押しつぶしたあと、いよいよ搗き始める。
時に従兄弟やら近所の人など、男性の助っ人も来たような気がするけど、
たいていは母が杵をつき、幼児を卒業した頃から私が返し手だった。
「よいしょ！」「よいしょ！」と声を掛け合いながら
リズムにのって繰り返すうち、米粒のかたちがだんだん無くなって、
ねばりが出てくる。
熱いから一手ごとにボウルに水をつけては返す。
途中で中断して、まわりからあつめてまとめて、
よいしょ、とお餅のかたまりをひっくり返す。
このくらいでもう良かろう、というのは杵をやるひとの判断。
搗きあがったら、すぐわきの畳の部屋に用意した戸板の上に、
白い餅取り粉をふんだんに擦り付けて、そこにどん、と置く。
戸板には節穴などもあって下にこぼれるから、
下には新聞紙をいっぱい敷き詰めていた。
大きなかたまりを、粘土細工をひねるようにしてぽんぽんとちぎってゆくと、
戸板の周りでは待ち構えていて、そのひとつひとつを丸くまとめてゆく。
最初にまず鏡餅用の大き目のをつくり、あとは普通に食べる小ぶりのもの。
手でさするようにして、戸板のうえでくるくると回転させ、平たい円盤状にして、
お盆のような平たい木の箱に並べて重ねて行った。
いくつかはあんこを中に入れてまとめたあん餅にする。
あんを真ん中に置き、周辺から中心にむかって生地を引っ張って、中央でまとめる。
ちいさいころはついそのまま食べてしまったりしていたなあ。
大きくなってからは、さっと湯に通して、大根おろしと醤油で食べる
からみ餅が一番好きになった。
次々と米を蒸しては、三臼は搗く。
最後の一臼はかき餅にするので、途中で黒砂糖などを加えていた。
ある程度よく搗いて、弾力のあるお餅も、砂糖を加えたとたんにだらっとだらけて、
どうにもまとまりにくくなったものだっけ。
すぐ近所の子達も来てくれたりして、本当に楽しいイベントだった。
そういえば、「下の家」と言っていた隣家には、いかにも農家らしい
広い土間に、足踏み式の餅つき機「だいがら」があった。
こちらで踏み板を踏むと、首の長い馬のように、向こう側の杵が
とーんと上り、そのまま首を落として臼を搗く。
力の弱い女子どもでも大丈夫。
やらせてもらった記憶はないけれど、そのかたちは覚えている。
「だいがら」って何だったんだろうなあと思って検索してみたら、
やはり山口県の周辺地域というか、中国地方の記事にいくつか出てきた。
松蔭神社にもおかれているらしい。
http://www.city.hagi.yamaguchi.jp/hagihaku/hikidashi/mingu/html/010.htm
これは「台」のついた「唐臼（からうす＝大陸からきた臼）の意味だとか。
全国的には「からうす」のほうが一般的らしい。
http://www.forest.minokamo.gifu.jp/data_box/dougu/4_07.html
http://meta.affrc.go.jp/afftool/sachi.html
小さい頃にはよく知らなかったことが、調べて分かるのは嬉しい。
私の中には、たくさんの記憶が詰まっているんだなあ。
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