＜ひょうたん島遊覧船＞
http://www.fanfan-tokushima.jp/burari/03yuran/default.php
いったん宿に落ち着いてから、日が落ちるちょっと前に両国橋の袂へ。
両国橋通り沿いの宿からは近い。
橋の北詰から「ひょうたん島一周遊覧船」が出ている。
最初にガイドブックを眺めたときは、ひょうたん島っていったいどこなんだろう？
と思ったが、説明をよく読むと、それはまさに徳島市の中心部分。
南側を新町川、北側を助任川に囲まれた中州なので、上空からみると、
その形が真ん中にくびれのある、瓢箪のように見えるからとのこと。
水の都を船で巡るのは大好きだ。
大阪でも伏見でも船で川巡りした私が乗らない手はない。
びっくりするのは、この遊覧船が無料だということ
（ただし保険料として100円だけは出す）。
船の運航は「新町川を守る会」が、
川に親しみ、川を大事にするきっかけにして欲しいという目的から
運営されているらしい。ありがたいことです。
秋から春までの運行は夕方で終わりのようだけれど、8月は夜7時40分が最終便。
40分置きに出航し、約25分かけて2つの川をめぐって同じ場所に帰ってくる。
西の地はやはり日の入りが少し遅くて、7時近いというのに空はうっすら明るい。
屋根のない船なので、陽射しが残っている間は少し暑かったかも。
7時ちょうどにいよいよ出航。夕焼けが今まさに消えてゆく最中。
あたりの店にも灯が入り出し、提灯が水面に影を落とす。良い感じ。
この短い周遊だけで22もの橋をくぐる。大きな橋や小さな橋、さまざま。
添乗員の方がひとつひとつ橋の説明をしてくださる。
ちょうど「橋の下美術館」という催しをやっていて
（会期は過ぎたけれど好評なので延長して続けているとのこと）、
その都度橋の下で船を止め、ライトで橋の裏側を照らす。
普段目を向けないようなその場所に、
徳島にちなんだいろんな絵や写真が飾られていた。
残念ながらライトは一部分しか照らせないので、
全体像は分かりにくかったけれど、面白い企画。
作る作業は大変だっただろうな。
ふれあい橋を過ぎ、広く大きな新町橋、春日橋あたりの川沿いに、
書割のような蔵のオブジェが見えた。
説明の方によれば、このあたりは藍商の蔵が立ち並んでいたので、
その昔の風景を再現しているとのこと。その名も藍場町という。
本当に立ち並んでいた頃は、威風堂々たるものだったろう。
それだけの蔵が跡形もなく無くなっているのも時代の流れ。
あいせん橋、仁心橋と来て、
「あそこに水門が見えるでしょう。ちょうどあの水門の向こう側が、
映画の『眉山』では夢幸（ゆめこ）橋として撮影された橋ですよ。
本当は船場橋と言います」と言われ、
進行方向左手の水門とその向こう側を透かして見る。
いかにも昭和のものらしい、古い小橋。
明日にでも、明るいうちに見てみよう。
佐古新橋、三方から真ん中に向けて合わさったような、
ちょっと珍しい橋の名は、見た目通りの三ツ合橋、
いつの間にか助任川の方に入り、前川橋、西の丸橋、
右手に見えてきたのは徳島城跡の城山。
訪れたのは今朝のことなのに、もう遠いことに思える。
ところどころ釣り糸を垂れている人も見かけ、
「今、豆鯵が入っとうらしいですよ」と説明の方が言う。
たぷたぷと押し寄せる波には潮の香りがして、ぴしゃっと魚のはねる音も。
潮の干満の影響を受けるので、橋の下すれすれのところもあり、
「ここは低いですよ」の声で、皆一斉に頭を下げ、体を伏せる。
船体と橋が触れるかと思えるようなところもあって、ちょっと本気でこわい。
「でもまだ良いほうですよ。この前の6時20分はちょうど満潮の頃だから、
これよりもっとぎりぎりだったはずです」と言われた。
アトラクションよりもスリリング。
福島橋の説明。
「ここは河口で流されやすかったので、人柱を立てたと言われています。
通りがかりの山伏とか。
橋は新しくなってますが、一部分古い石積みの部分が残ってるんですよ」
ぞくりとする。
人柱の話は昔話にたくさん出てくるけれど、
そんな犠牲を払ってまで、昔は橋を架けるのが大変で、命綱だったのだろう。
でも人柱にされたほうの無念の行き場は？
それが橋を破壊してしまうような恨みではなく、
守る念になるというのはどうしてなのだろう。
確かに中ほどに古い橋の一部が見え、なんとも言えない気持ちで眺めた。
中州町にかかる中州みなと橋、
川幅が突然広がって、再び新町川に流れ込む。
県庁の建物が見え、風景も感じが変ってきた。
その近くの橋はかちどき橋。おや、ここにもお江戸と同名の橋が。
この橋も大きい。
牟岐線の下をくぐり、冨田橋を過ぎると振り出しの両国橋。
ゆらゆらと揺れる船からあがると、別世界から戻ったような気分。
街はすっかり夜の顔に様変わり。
＜新町温泉＞
宿はできるだけ安めのビジネスホテルにして宿泊費を切り詰め、
風呂の方は近くの銭湯を探して入るというのが、私の旅スタイル。
全国さまざまな場所の、ごく普通の銭湯に入って楽しんだ体験記
『入浴の女王』（杉浦日向子著・講談社）が大好きなので、
その影響も多分にあるけれど、あたりを歩いて湯に浸かると、
ほんとにその土地のおなじみさんになったような気がして嬉しい。
今回も来る前に、市内の銭湯はあらかじめ調べたけれど、
さきほどいのたにラーメンから歩いて帰る途中、
紺屋町に折れる手前の東大工町の道沿いに「新町温泉」
（徳島市東大工町2−28−2）
http://www.tcn.ne.jp/~nankai/sentou.htmが見えたので、
あ、わりと近いからここで良いかな、と決めていた。
持ちなれた銭湯道具を手に、また先ほどの道を引き返す。
場所は東横インの斜め前くらい。
一軒屋のスタイルではなく、小さなビルの一階に入っているけれど、
入ってしまえば居心地は良い。
料金は330円。サウナはあったけれど、別料金。
打たせ湯や薬湯もある。まずはなじみやすい銭湯。
ただ、夜10時閉店ですと言われてびっくり。
普通は0時くらいまで営業する東京と比べ、ずいぶん早い店じまいだこと。
近くには繁華街もあるのにな。
ともあれ、さっぱりとして出る。
途中の飲み屋街はまだまだ宵の口で、そこかしこ人がたむろしているけれど、
なんだかすっかりリラックスして来た道を宿へと。
濡れた髪に川風が吹くのが心地よい。
宿近くのコンビニで明日の朝食用のパンや野菜ジュースなどを買い、
友人達に何本かメールを送って就寝。
(翌日に続く）
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