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2024年04月27日07:46

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弁士による無声映画上映会

 昨日、早稲田大学大隈講堂で開催された「The Art of the Benshi 2024 World Tour at 早稲田大学」に参加してきた。映画がまだサイレントだった時代、スクリーンの傍にはナレーター的な役割として弁士がおられ、伴奏があった。それを今の時代に味わう上映会である。プログラムは以下のとおり。
・『生さぬ仲』(3名の弁士による声色掛合)
・『刀の誓い』(弁士:片岡一郎)
・『Sweetie』(弁士:片岡一郎)
・『血煙高田馬場』(大河内傳次郎主演作品、弁士:山城秀之)
・『突貫小僧』(小津安二郎監督作品、弁士:片岡一郎)
・『豪傑児雷也』(3名の弁士による声色掛合)
 すべて100年ほど前のフィルムゆえ一部が消滅してしまっている事情もあり、どれも10分から20分程度の作品だし、当然ながら画質も褒められたもんじゃない。しかし日本が誇る文化の一つに触れられて大満足。伴奏の楽士もピアノだけでなくヴァイオリン、フルート、ギター、そして鳴物まで入るという豪華版だった。大満足なのは1200席を満席で埋め尽くした観客たち全員にとって同じだったようだ。熱気と割れんばかりの大きな拍手がそのことを証明していた。
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 上映会の前には小講堂で本番前トークショーがあった。題して「弁士、アメリカを行く! 〜3週間にわたる米国公演を終えて〜」。
 アメリカ巡業の裏話はとても興味深かった。ニューヨーク、ワシントンD.C.、シカゴ、ロサンゼルスの4都市を巡業したらしいが、どこの会場でも大盛況だったとか、ピアノを持ち込むのがとても大変な会場があったとか、上映中に手元のライトの電池が切れて慌てた話などを片岡一郎さんが中心になって語っていた。片岡さんは落語家を目指したこともあるのではないかと思わせるほどユーモラスに語るので、楽しいトークショーとなった。片岡さんが印象深かったのは、どの都市でも会場セッティングのときは現地スタッフたちは(どんな上映会なのか不明なので)あからさまに面倒くさそうにしていたこと、そして上映後は誰もが大喜びしていたことだそうだ。

 早稲田大学に来ておいて村上春樹ライブラリーをスルーするわけにはいかない。通算12回目の訪問となった。
 ちょうど昨日から「カフカ没後100年記念 『変身』するカフカ展」が開催されていた。以下のような趣旨の展示会である。
「主人公ザムザが変身した『ウンゲツィーファー( Ungeziefer )』のイメージを探るため、訳者ごとに異なる訳文や装丁画に注目します。また、村上春樹はもちろん、近現代の作家たちや漫画家たちがカフカをどのように作品に取り入れた(=“変身”させた)のか、日本におけるカフカ受容について考えます」
 毒虫のウンゲツィーファーはカフカの指示で本の表紙や挿絵に描かれていない。そのため読者それぞれが想像することになる。じつはぼくも一つのイメージを持っている。もしかしたらぼくと同じイメージの絵と出会えるかもしれないと期待して臨んだ。
 各国に翻訳された本の表紙のいくつかにはウンゲツィーファーが描かれていた。しかしどれもぼくのイメージとは違っていた。それらはコオロギっぽかったりゴキブリっぽかったりしていた。ぼくのイメージは芋虫に近かった。
 ぼくのイメージはちょっとズレているのかなと思いながら進んで行くと(ズレていてもぜんぜん構わないのだが)、まさに芋虫っぽい絵があった。描いたのは手塚治虫さん。やはり日本人の感覚なのだろうか。
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(ディスプレイの仕方も秀逸。カフカが描いたイラストまで展示されていた。)

 ライブラリーではいつものようにオーディオ・ルームにも寄り、素晴らしいスピーカーでチャーリー・パーカーの『South of the Border』、ビリー・ホリデイの『At Jazz at the Phillharmonic』を堪能した。むろんオレンジキャットでドーナツも美味しく食べた。
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(デヴィッド・ストーン・マーティンが描いたレコード・ジャケットがずらり)

 早稲田大学訪問に先立ち、せっかくこの界隈まで来たのだからと漱石山房記念館にも寄った。池袋駅から50分ほど歩いて少々疲れたので、まずは併設されている「CAFE SOSEKI」でゆっくりアイス・カフェオレを飲んでから館内を巡った。
『吾輩は猫である』や『門』の直筆原稿(複製)などの貴重な資料の数々は見ごたえ充分だった。驚いたのは原稿に書き直しがほとんどないこと。『門』の原稿にはあちこち直しが入っていたが、知人に宛てた巻物ほどの長い書簡などに訂正箇所がまったくない。信じがたいことだが、どれも一筆で書いたのである。
 また、無知なぼくは漱石が書画も描ける方だとは知らなかったので、それも驚きだった。
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(順路は猫が案内してくれた)
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