柳田国男氏の著作の中でも最も影響を受けた作品と言えます。特に「山神」や「山人」に関する記述が心に深く残りました。昔の人たちは山から様々な恵みを受けていたので山を神聖なものとして強く捉えていたのだろうと思います。一種の「異界」としてあの黒々とした深い緑に包まれた山々を見つめていたのだろうと思います。
だから不思議なことがあってもそれは「山だから」ですべて納得していたのかもしれません。自然という人が決して抗えないものの象徴が山だったのだろうと思います。
私も山が好きで若いころはしょっちゅう訪れていました。一人で深い山の中に入ると山の神氣のようなものが全身を包み込んできます。それは強い畏敬の念を人に呼び起こします。周囲に人の為したものが一切ない空間というのはどちらかと言えば神仏や野生動物の領域になるのでしょう。人とは関係ない営みが繰り返されてきた空間というのは無秩序な秩序に満たされています。それを人は「異界」として感じていたのだろうと思います。
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