「サマー・オブ・ソウル (あるいは、革命がテレビ放送されなかった時)」〜1969年の奇蹟

1969年夏、ブラック・ミュージックを代表するスターが多数出演、ニューヨーク市内に30万人を集めた野外フェス「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」を追ったドキュメンタリー。同時期かつわずか160キロの距離で行われたウッドストックとは真逆に、商業的価値がないという理由で半世紀のあいだ眠っていた記録映像を編集。

ドキュメンタリーの王道、年輪を重ねた当時の観客・スタッフ・出演者にインタビュー。ただその声が各楽曲の間奏に挟まるので、最初のうちはライブだけをじっくりと観せてくれよと思うも、やがて話者の言葉やフィルムが映し出す当時の世相と、流れる歌詞の内容が実にうまくリンクしていると気がつき、この職人技にはしみじみ。

すべてのパフォーマーが魅力的ながら、もっとも印象的だったのは、この時代を象徴する名曲を歌う男女混声グループ、過去TV出演時の映像は何度か観たけど、おそらくライブ映像は初めて。現在ご夫婦となるメンバーがインタビューに登場、まあこれは「翼をください」の思い出を語る紙ふうせんのおふたりみたいなもんですね。

あとモータウンを代表するグループのシンガーがひとり超名曲を歌う場面はカッコ良すぎ。そして口を顔より大きく開けて歌うゴスペルの女王は大迫力。ほとんど切れ目なく音楽は続き、思わず前のめりのまま身体を揺らし足でリズムを取っておりました。やっぱりフェスは素晴らしい。思いきり楽しめる日が早く来ることを祈る次第です。