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2019年06月07日22:39

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《2019瀬戸内9》非日常、60分

引っ張ってきた瀬戸芸2019春日記、まじ最終回。
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(承前)
フォト
9時50分。
眼前に現れた瀬戸内の海は黄砂が支配して、遠くの島々を確認することはできなかったが、西沢立衛が創り上げたエッグ型ドームは、確実に我々を迎えてくれる。
行列のできるエントランス。さらには入場整理券を求める人々。
ベネッセガールのガイダンスに耳をそばだてると、この時間で配布中の時間予約券は12時45分。つまり、2時間45分待ち。
そんな人々を尻目に、行列のない受付へ招かれ3番手の入場権利を得た。

10時。
開館とともに美術館へのスロープを辿り、初心者に必須のベネッセおねえさんガイダンスはお断りして、そして靴を脱ぐ。
蟹座(ようやく来られた。或いは、3年振り。)
声に出ない喜び。静寂、陽の光り、白の世界。
緑の借景。空中に浮かぶテグスもこれまで通り、何も変わらない。
足元に注意して、まずは第1のサークル。
洞内は10人、いや15人ぐらいになっていただろうか。
立ち尽くす人々、耳を澄ます人々。

床に座る。
小さな穴からあふれ出る湧き水を目に停めて、水が醸し出すアートに神経を注ぐ。
しばらくすれば、そのアートは命が吹き込まれ、やがて水琴窟へと取り込まれていく。
音。
非日常の時間が始まった。可能であれば、腕時計を捨ててしまいたい。
東洋人のカップルと目があった。
湧き出た水がアートを形成し、やがて命が吹き込まれ、音。
彼の顔が上がり、ふと目が合った。
うなづき合う。言葉はいらない。多くの外国人さんたちが、非国境・非言語の世界に笑顔で応じている。

ふと日常に引き戻される時間があった。
夫婦連れで洞内に入ってきたおっさん側。
ブタ「なんやねん、何もないやんけ」
すぐにベネッセおねえちゃんが駆け寄り、鑑賞マナーを告げる。
わかったのか、わかってないのか、声は出さなくなったが、彼はわからないまま数分もすれば去っていくはずだ。
感性次第で、ただの徒労として去っていく観覧者がいるはずだ。
どのぐらいの比率なのかは知らないが、彼らは二度とここに来ることはないだろう。
それで良い。そういうものなのだ。

しばらくして、第2のサークルへと身体を移す。
これまでよりも少しだけ激しく頻繁に湧出される水は、勢いをつけて蟻の巣をめざして駆け下りていく。
鑑賞していた女子のひとりが床に寝そべった。
つられて寝そべってみよう。湧き出る水の息吹きが伝わってくるようだ。

ふたたび、非日常が破られた。
家族連れ、仮称Rくん、Tくんが洞内を走り回り始めた。
自分もかつて子供だったのだから、これには笑顔で歓迎する。
ベネッセねえちゃんが追いかけて、2人にルールを教え込む。
さすがはアートの島へやってくる両親の子供である。
素直に注意に従い、2人はおいらの近くに座り、水の流れを追いかけることにコンセントレーションを整えた。
しばらくすると、弟であろうかTくんが触るべきではない流れ出る水に触れようと試みる。最初のころは触れるか触れないか、人差し指をウロウロさせながら。
兄であろうかRくんも弟のマネをし始めた。いつかは、この水に触れて流れを人工的に変えてしまうのだろう。それが子どもの仕業というものだ。
ひと言だけ、彼らに言葉を添えてみよう。
蟹座「この水に触れると3時間後に、指が溶けるよ」
この言葉ひとつだけで、二人の指はヒザの上に戻り、金輪際、アートの源泉に触れることはしなかった。おそらく、今後、生涯にかけて。

気がつけば腕時計は11時を指している。非日常でも時間は進む。
時計など見たくはないが、現実的に港へ行く時間は迫っている。
また来ればいい。
名残惜しく洞内を静かに歩いていたら、天井中央から垂れているテグスを1本見つけることができた。3回目にして初めての発見。内藤礼とは、このような作家である。
いろいろな意味で国内で一番好きな美術館。
これまで、感性が合うと思った知人たち4人ほどに薦め、そしてやってきた知人たち全てが「豊島美術館」の素晴らしさに感動してくれた。
誰にでも薦められるようなものではない。それでも、薦められる人に出会ったら、これからも全力でお薦めしたい。豊島美術館が大好きなことは、自慢でさえある。

豊島を離れ、小豆島経由で高松へ戻る。
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土庄港には、小豆島マラソンを終えたランナーたちがフェリー乗り場に集っていた。
そういえば、昼飯を喰っていない。
名物であるそうめん屋は、生意気にも定休日。
仕方なく入った港前食堂は「焼きそば、お好み焼き」指でOK
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おばあちゃん一人で焼きそばを焼き、お好み焼きを作っている。
玄関にやってきた中国人家族を「日本語出来ない人はお断り」と追い払い、「言葉通じないから面倒くさい」と、言葉の通じるおいらにぶっちゃける。
世間話をしながら、おばあちゃん手作りの味を堪能した。
意外と美味しかったお好み焼き500円。安いと思う。
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余裕ある高松港到着で、昭和モードの喫茶店で時間をつぶす余裕もあった。
来島前に予想された混雑を感じることもなく、わずか2泊3日の瀬戸内が幕を閉じる。
日記を書き終えて振り返ると、もう2週間も経っていた。

瀬戸芸2019秋に続くのか(←続く)



指でOK女子高生撮影“いいね雲”にいいね殺到
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