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2017年04月22日10:28

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世田谷パブリックシアター ポストトーク 野村萬斎×白井晃(4月7日)

https://setagaya-pt.jp/performances/201704sept20th.html
*簡単なメモはとりましたが、全部は書き切れず。
言葉尻などは正確ではありませんがご容赦。
合間合間に個人的感想も書いています。

MCは演劇ライターの大堀久美子さん。(とても的確な進行!)
本日のトークについて説明されたあと、
ボレロを舞い終えて着替えてきた萬斎さんと、
ゲストの白井さんが客席通路側からご登場。

白井さんはいつも通り上下ともに黒の服装。
萬斎さんはと言えば、先ほどの衣装とは一変して、
ロゴ入りの半袖白Tシャツと茶のチノパンという、普段着スタイル。
手にしたタオルでしきりに汗を拭っているせいか、髪型も少年ぽく見える。
「なんというか、可愛らしい…」と大堀さん。
確かにギャップ萌え♪
遠目なのでTシャツ文字まで読み取れなかったけれど、
「熊本の時に買って…」と萬斎さんがおっしゃってたので、
支援グッズなのかな。

萬斎「やってる間は出ないんだけど、
   終わってから汗が吹き出しちゃって。
   閉じてた毛穴が開くのかな」
白井「よく役者は顔には汗はかかないけど、
   身体には汗かいてるって 言いますよね。
  こういう生まれ育ち(狂言師)だと、
   舞台では閉じるようになってる?」

今日の演目を客席でずっとご覧になっていた白井さんの感想を
織り交ぜながらのトーク。

<『唐人相撲』>
白井「こういう狂言は初めて見ました」
萬斎「今回は区民も参加していて、
   80年のキャリアがある玄人(*万作さん)もいれば、
   素人もいる。
   出てくる人数としては狂言最大。
   本来は、お祝いの時にやるもの。
   先生のお祝いの時に、門弟がみんなで出るような。
   まあ今回は20周年記念ということで、
   人間ではなく世田谷パブリックシアターのお祝い」
白井「あの中国語はアドリブなんですか?」
萬斎「決まってるところはあります。
   ”チントンリョウ”とか(*臣下が皇帝に「かしこまりました」
   と言っているんだな、というニュアンスは聞いてるうちに
   何となくわかってきた)とか”シャー”とか、パブケパブケ”とかね。
   でもアドリブもあります。
   今回は”セタ、セタ””ガヤ、ガヤ””パブ、リック”
   なんて入れたりして。
   まあ、全体に創作中国語で、タモリさんみたいなもんですね」
   (*個人的には昔ドン・ガバチョ役をなさった藤村有弘さんを連想)
白井「ずいぶんアヴァンギャルドですね!」
萬斎「まあ、私は以前イギリスに行きましたけど、
   そこでも自分ではまったくわからない言葉でしゃべるわけですからね」
白井「これはどのくらい稽古したんですか」
萬斎「私は他にもいろいろあって忙しかったので、
   あまり一緒にやってませんが、
   10回?だか、7回だか、皆さんは合わせてたみたいですよ」
大堀「お子さんたちが、すごく楽しそうにやってました。
   興奮しちゃって、もう声が雄たけびみたいになってて」
萬斎「まあ、寿ぐ、祝うための狂言ですから、
   20周年を祝うにふさわしいですね」

<『MANSAIボレロ』>
この舞の動きの基となっている『三番叟』も、やはり祝祭的な演目。
演目『翁』の一部。

白井「ここでは今回で四回目とのことですが、初めて拝見しました」
萬斎「東北の大震災の年に作ったんです。20分強くらいの舞。
   これは海外発信を考えていて。
   芝居を海外に持っていくのは大変でしょう。手間もかかるし。
   でも舞は身軽に一人で行って出来ますから。音楽があれば。
   生のオーケストラでもやりました、
   びわ湖ホール(滋賀県立芸術劇場)などでも。
   この曲は指揮者が嫌がるんですよね。ずっと同じリズムで単調だから。
   佐渡裕さんなんか”これ、つまんないんだよねー”って言うんですよ」

<世田谷パブリックシアター>
大堀「白井さんは、1997年、遊◎機械/全自動シアターの公演以来、
   世田谷パブリックシアター、シアタートラムの大小の劇場両方で、
   20数本の作品の創作演出に携わってこられました」
萬斎「最多じゃないですか?」
白井「とてもいいサイズの中劇場で、ここ700人でしたっけ?
  (*施設案内によれば約600席、トラムの方は約200席)
   馬蹄形で、後ろと前が近くて、見やすい。
   97年から3年間、劇団の公演で使わせていただきました。
   この劇場は客席の勾配が変えられるんです。
   私は下げることが多いですが。
   生き物のような劇場。一番愛してる劇場!
   …と、これまでは豪語してたんですが、
   ちょっと”一番”と言えない事情が出来まして。
  (*去年からKAATの芸術監督に就任されたからでしょうね)
   でもここはストレートに伝わる、
   ダイレクトにコミュニケーションできる劇場で、
   やりたい人は多い」

この話の途中あたりから、
ようやく汗が引いてきたらしい萬斎さんは、
手にしていた長袖シャツを羽織った。
柔らかく身に添う、光沢のあるシルバー地に
点々と黒が散るシックなシャツ。

白井「最初の頃はね、まだよく知られてなくて。
  三軒茶屋?それどこですか?って言われたりして、
  なんかイケてない感じを持たれて。
  でも今は世田谷で、トラムでやりたいって人は多い。
  中小ともにサイズ感がいいんです」
大堀「初代芸術監督は佐藤信さん。
   萬斎さんは二代目監督として、
   もう15年勤められています」
萬斎「こけら落しの時に『三番叟』を舞っています。
   これはよくこけら落しでやる舞なので、
   親父も三戸芸術館のこけら落しで舞っていますね」
大堀「しかも劇場とお誕生日がご一緒で(*4月5日)」
萬斎「劇場と自分の変遷が重なりますね。  
   シェークスピアなどもやっていますが、狂言をどうするか。
   この劇場の馬蹄形は、能舞台には合わない。
   それでちょっと特別に三本(*左右と奥)橋掛かりをつけてます」
白井「やっててどんな感じ?」
萬斎「まあ、やってる分には変わらないです。
   普通は橋掛かりは一つだけれど、
   役によっては右向きにしてみたり、最奥から出て来たり。
   張り出し舞台に似てる。
   元々能舞台はあの世とこの世の交差点みたいなもので、
   最奥から出て来ると、あの世からやって来る感じがすごく出る。
   能楽堂にはない”闇”がある。
   で、能楽堂にある”屋根”がない。
   降ってるベクトルが違う。
   天を仰ぐのにも実感がある」
大堀「この劇場には青空があるんですよね。
   3階席の方はご覧になりやすいと思いますが」

そうそう、ここの天井には青空が描いてあるのです。
この劇場での初観劇はやはり3階だったので、
近々と見える青空にはっとして、心躍りました。

白井「普通の劇場は横長だけど、ここは筒状の空間で客席が近い。
  仮設をなくしたら、おお、奥行きが深いなーと。
  中サイズだけどダイナミズムを仕掛けることが出来る。
  たとえば紀伊國屋だとこんな感じ、
  と固定したイメージがあるけれど、
  世田谷は空間感覚が全然違う。
  劇作家が変換出来る、クリエイティブな、スタジアム型の劇場。
  『偶然の音楽』(*白井さんの演出で2005年と2008年に上演)
  の時は、ルールを破り、機構を有効利用しました。
  ここはスタッフがアーティストと一緒にものを作る。
  色々育成する力がある劇場です。
  新国立もあるけど、ここがやはり強い」

白井さんの演出は、新国立での『天守物語』や『テンペスト』、
KAATでの『Lost Memory Theater』,『夢の劇 Dream Play』,
『マハゴニー市の興亡』などで拝見して来ているけれど、
確かに通常の横長舞台じゃなく、色々取っ払ったり仮設したりして、
奥の深い、異質な空間を創るのがお好きだなあと感じる。
この劇場は奥行きが深く、自由が利くのでお好みなんですね。

白井「僕はフィリップ・リドリーが大好きで、
  ここ(トラム)で5本やってます。
  *参照) ・ピッチフォーク・ディズニー(2002年)
       ・宇宙でいちばん速い時計(2003年)
       ・ガラスの葉(2010年)
       ・マーキュリー・ファー(2015年)
       ・レディエント・バーミン Radiant Vermin(2016年)
  劇場と人とが育て合う環境で、出会いをやらせてもらった。
  私事ですが、2016年春からKAAT(神奈川芸術劇場)の
  芸術監督に就任しました。
  根本原理というか、ここで見聞きし、身体に染み付いたことを、
  KAATでも生かして、アーティストを刺激し、後押ししたい。
  若手によりよい仕事をしてもらうようにしてゆくのが目標。
  実感的に海外を見るようになった。
  劇場の色を大事にしながら、この劇場を中心に、
  同心円状に文化を広げ、世界、東京、日本とつながりたい」

<地域と公立劇場>
萬斎「KAATは県立だから対象が広域ですね。
   世田谷は地域だけど、人口は80万人くらい」
白井「松本より多いですね!山陰の方の県より多いかも。
   まあ神奈川も人口は多いし、横浜の特殊性を生かしたい」
萬斎「ここの認知度をもっと上げたい。
   未だにキャロットタワーにそんなのあったんだ、
   という人もいるし、
   エスカレーターも途中から細くなっちゃうし…(笑)
   (*確かにTSUTAYAなどが入っている2階までは広いけれど、
   劇場のある3階に向かうところから狭いですね)
   この建物のいち店子に過ぎない悲哀も感じますが、
   事あるごとに吹聴して。
   おらが街にはサッカーも野球もないけどシアターはある!」
白井「世田谷は地の利には恵まれている。集まりやすいですよね。
  こちらは役者に『KAATですか〜 稽古はどこでするんですか』
  と言われてしまう。通うには時間がかかる」
萬斎「まあ、三軒茶屋とは東横線でつながっているから、
   わりと近いほうだけど」
白井「私も世田谷区民ですけどね。
  まあ、横浜は文化の香りのする面白い地域」
萬斎「今は演劇が変わりつつある時代。
  これまで演劇を見るにはその時間にその場所へ来なくちゃならなかった。
  今、YouTubeもあるし、ネットで色々見られちゃう。
  劇場がハードとして有効な場所であるために、
  他の劇場とも一緒にやれることをやっていかなくちゃ。
  北九州とも連携してるし、松本とも提携してますが、
  近隣とももっとネットワークを増やして、巻き込んで。
  観客も共犯者になって欲しい」
  
お二人の息がぴったり合った充実トーク。
どちらも劇場に対する自負心と熱い思いは共通している芸術監督ですね。
メモが走り書きすぎて、どちらの発言だったか、
あとで分からなくなってしまったけれど(やっぱり萬斎さんかな)、
こういうフレーズも印象的だったので、挙げておきます。

「(文化は)渋谷や日比谷だけではない、
もっといろいろなものがあることを知らしめる」

「目指すのはとんがった劇場。
 予定調和ではなく、コアな、刺激を受ける劇場」

「民間はどうしても売れるものをやるけれど、
 こちらは守りに入るのではなく、あばれなくては意味がない」

これからのさらなる攻め方も楽しみ!

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