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2017年04月11日23:48

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狂言『唐人相撲』/『MANSAIボレロ』 (世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演)

4月7日19時〜観劇。
https://setagaya-pt.jp/performances/201704sept20th.html

萬斎さんがラヴェルの「ボレロ」のメロディーにのって
一人舞う『MANSAIボレロ』。
2011年の初演時から話題となり、
Eテレでの放映も観てはいるけれど、
残念ながらこれまで直に見る機会を逸していた。
この記念公演の機会に是非!と駆けつけた次第。
当日券に並び、ようやく三階立見で観ることが出来た。
狂言『唐人相撲』との二本立て上演のあと、
この日は演出家・俳優の白井晃さんと萬斎さんとのトークもあり。

<唐人相撲>
この演目は初見。
唐に滞在していた相撲取りが皇帝に帰国を願い出たところ、
名残にもう一度相撲を見せてほしいと所望され、
皇帝の臣下たちが次から次へと挑んでくる。
しかし段違いの強さを見せる日本の相撲取りの敵ではない。
自分の臣下が軒並み敗れてゆくのを見て、
ついに皇帝が自ら相撲取りに挑む、という筋立て。

奥の深い舞台には、一番奥と舞台手前の中ほどに、
仕切りのスクリーンが置かれているのだが、
皇帝たちが出てくる前、まず奥からの照明で
その姿がスクリーンの向こうから影として映る。
高い冠や唐の衣服姿、御付きの者たちの珍しい服装も、
障子の影絵のようにずらりと並ぶのが印象的で面白い。
『六歌仙』の時もこういう演出があったけれど、
この劇場ならではの面白い趣向だと思う。

独り勝ちする日本の相撲取りを萬斎さん、
見ていられなくなっておん自ら戦いを挑む老皇帝を万作さん、
あやしげな通辞を石田幸雄さんが演じる。
高い玉座にある皇帝の足元に仕える臣下たちは、
武官、文官、側近、楽人、唐子たちなど何十人もいるのだが、
単独で挑むばかりではなく、2人組になったり、
組体操のように何人もでピラミッド状になったりして、
アクロバティックにかかってくる。
それを相撲取りがただ一人でばったばったとなぎ倒してゆく痛快。
唐人たちがしゃべる言葉は唐音(とういん)という架空の中国語。
大真面目に出鱈目言葉をしゃべるのがおかしい。

相撲取りとは言っても、
衣装は通常の太郎冠者などとたいして変わらない。
動きやすいよう裁着袴(たっつけばかま)を穿いているくらい。
対して他の演者たちは全員中国風の帽子を被り、
鮮やかな光沢のある服装で、舞台上は華やか。
見ている間は知らなかったが、臣下役のうち15名ほどは、
この公演のために一般公募して選ばれた人たちだったとか。
賑やか華やか。他愛無く笑えて楽しかった。

<MANSAIボレロ>
大震災の年に初演された、萬斎さんならではの独創的「ボレロ」。
ベジャール振付の『ボレロ』は、ジョルグ・ドンで見たことがあり、
その時も本当に感動したけれど、これはまた別種の味わい。

照明が細くひとすじの道をつくる。
奥の暗闇からその道をやってくる萬斎さんは、
すでにしてこの世のものとは思えない特別な存在に見える。

ちらしのボレロ写真が白の衣に緋の袴だったから、
何となくそれをイメージしていたら、
金の立烏帽子に白の狩衣、白の大口袴という、
いかにも神事を司るような清らかで神々しい姿。
衣の背からひらめく裾には、金の鳳凰が描かれている。

三階からは、照明の切り替わりがとても良く見えた。
最初は一筋のひかりの道以外、闇に沈んでいた世界に、
ひかりがくうっと広がって、正方形の能舞台となる。
やがてひかりは木漏れ日のようなやわらない緑の影を伴ったり、
海のような青にもなり、炎のような赤ともなる。
そのなかを舞い続ける姿から目が離せない。

さまざまなひかりに彩られながら、ぴんと張り詰め、
生きる鼓動を感じさせるようなその舞姿。
半ばを過ぎた頃、初めてどんっ、と足拍子の音が響いた。
五穀豊穣を祈る儀礼曲『三番叟』を基にしているというだけに、
地固めを思わせるこの跳躍は力強い。

身体を傾ぐようにして細やかに廻る動き。
ボレロの曲は、ずっと同じリズムを刻むようでありながら、
わずかずつ高まってゆく高揚感に、いつもどきどきする。
袖を頭上に翳し、両袖を掲げる動きにもはっとする。
そして曲の最後の最後、観客に背を向けてだだっと奥に向かい、
ぱっと飛び上ると同時に照明は落ち、闇となる。
最後の後姿の跳躍だけが目に焼き付き、
天に向かって飛翔し続けるが如き強烈な印象。

やはりこれは、直にこの場に居合わせてこその感動。
素晴らしかった。見られたことに感謝。

*白井晃さんと萬斎さんとのトークは別項にて。
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