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2014年11月26日01:37

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備忘録、第27回東京国際映画祭(10月30日)

備忘録、第27回東京国際映画祭(10月30日)

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『草原の実験』(コンペティション)

 多くの観客が宮崎駿作品との共通性を感じるのではないだろうか?
タイトルにある<実験>とは何を指すのかは時代・場所などを考えれば想像に難くない。
もっともセリフを一切排除した作りこそがすでに<実験>でもある。
しかし、何より本作は美少女ヒロインと独特の映像美で語られることだろう。揺れるハート

 カザフスタンの大草原に、父と暮らす少女の話で、彼女を巡って三角関係が繰り広げられる。
小さなドキドキはあっても、ほのぼのした暖かな時代が描き出される。
歴史的な事実を基に映画化されたものだが、ファンタジーとも取れそうな趣がある。
翼のないプロペラ機や父に代わっておんぼろトラックを運転する少女のシーンなど、実に宮崎アニメに通じるものがある。(笑)
あっと驚く大どんでん返しとも思えるオチをどう受け止めるかだが、「大きな問題の前では、小さなイザコザは取るに足らないモノ」だと言うことらしい。

 これそ映画的。意図的に言葉をなくし、技術的に高度な映像美を見せつける。
今の時代は機材が優秀で、とりあえずスイッチさえ押せば素人でも<映画監督>になることはそれほど難しいことではない。(評価は別にして)
だからこそ映像のプロの絵作りが印象に残る。
上映作品にはDVDなどで見ても良い作品があるが、これは大画面でこそ見るべき作品。

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 上映後には初来日となったアレクサンドル・コット監督が登壇。
当初は別の少女を予定していたが、撮影の段になって大人になりすぎていたために探し直したという。大人と子供の中間の表情が欲しかったとも。
実は宮崎アニメは2年前に初めて知ったという話で、すでに映画はスタートしていたという話。
他にもメル・ギブソンの『アポカリプト』などに影響を受けたとか興味深い話もチラホラ…。

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 結果、見事に初代WOWOW賞と最優秀芸術貢献賞を受賞。
(22日にはWOWOWで記念放送もあったようです)TV


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『白夜と配達人』(ワールド・フォーカス)

 日本でも似たような問題があるかもしれない…、とまずは感じた。
ロシアは宇宙ロケットを打ち上げるほどの国力がありながら、辺鄙な地方の人々は中央から切り離され、過疎と貧困にあえぐ。
その現状を実際に暮らす人々をキャスティングして描き出す。

 スカンジナビア半島に近い北西のケノゼロ湖。
そこでは世界と隔絶されたような生活ぶりで、物資は日々ボートで届けられる。
外界との接点となる<配達人>と島民との交流を通して貧しいながらも愛すべき地が語られる。

 寂れた田舎に見切りをつけて都会へ出てゆくのはどこも同じだろう。
しかし、物質的に不便がなくなったからといって、それで人生が豊かになるわけではない。

 自分の居場所を探し求め放浪する人々に監督の暖かなまなざしを感じる。
テーマは目新しいものではないが、北ロシアの美しい自然と、現地の人をキャスティングしているのが特色。

ヴェネチア映画祭監督賞(銀獅子賞)受賞


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『ザ・レッスン/授業の代償』(コンペティション)

 『紙の月』も金にまつわる話だったが、これも金が原因で人生が大きく狂う話。
たかがお金、…されどお金。泣き顔

 舞台はブルガリアの、とある小学校。
ある生徒の財布から誰かが金を盗んだ。
担任の女教師は「正直に名乗りなさい」と厳しく問いただす。
間違った行いを正すのは先生ならば当然のこと。

 しかし、こと自分のことになると雲行きが怪しくなる。
最初のボタンの掛け違いは些細なモノだったが、次第に取り返しがつかなくなる。
嘘をつくつもりでも騙すつもりでもなかったことは信じるが、結果は違うところに向かっていく。
我々の生活は何かとお金に支配されている。
悲しいかな“たかが金”ごときに…である。泣き顔

 実際にあった事件にインスピレーションを得て創作されたというが、他人を教える立場のものが<自分が教えた言葉>に打ちのめされて行く脚本が良くかけている。
伏線の張り方や小道具の扱いも良い。
ヒロインの芝居に集中させるために音楽をなくしたというのも納得できよう。
ブルガリア作品は本数は少ないが、レベルは確か!
普遍性あるテーマの映画を通してブルガリア社会の状況もさりげなく知らされる。泣き顔

 ここまで見た中で、最優秀女優賞に近いのはこれかもしれないという思いを抱く。
(作品賞もここまで見たコンペ作品では一番かも…と思った。)
その勘はあながち間違いでもなく、審査結果で受賞した『紙の月』(宮沢りえ)と本作の一騎打ちだったそう。
女優賞は逃したが、審査員特別賞を受賞。

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 Q&Aにはペタル・ヴァルチャノフ(監督/脚本/プロデューサー/編集)、マルギタ・ゴシェヴァ(女優)が登壇。
質問の最後にマルギタさんが「是非とも皆さんの前で一曲歌いたい」とのことで始まったアカペラ独唱が、なんと「手のひらを太陽に」(日本語)だったのは仰天。

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こんなのTIFFで初めての体験!
コンペ上映最後に素晴らしい課外授業(?)になりました。(^o^)

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