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2010年11月28日01:02

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「心の糸」NHKドラマスペシャル

11月27日21:00〜22:13
http://www.nhk.or.jp/nagoya/ito/index.html

聾者の母と、健常者で彼女の通訳係の役割を担う息子の、
親子の絆と葛藤を描いたドラマ。
NHK名古屋制作。舞台となるのは北陸の地方都市。

水産加工会社で働き、息子を女手ひとつで育てて来た気丈な母親・
永倉玲子を松雪泰子さん。
彼女を支え、彼女の望みであるピアニストになるべく芸大をめざしながらも、
そのプレッシャーと、逃れられない役割の重さを感じている高校生の息子・
明人を神木隆之介くん。
音楽を通じて明人と出合い、心を通わせる聾の娘・いずみを谷村美月さん。
重い問題を含んだ物語だけれど、彼らの演技の確かさと透明感によって、
なにか清々しい、澄んだ印象が残った。

この作品はいつごろ企画され、いつキャスティングされたのだろうか。
松雪さんの健気で哀愁を帯びた母親像を見ていると、
どうしても『Mother』が思い出されてならない。
ひたすらにひたむきに息子のために生きる芯の強さと儚げな風情。
一言もしゃべらないまま、その手は雄弁に物語る。
手話のしぐさは流れるように綺麗で、分らないながら目が離せなかった。
あの細くて綺麗な手が、あふれるような思いを伝えている。
そしてまたその表情の素晴らしさ。瞠った瞳のうつくしさ。
『Mother』を境に、彼女のイメージはずいぶん変わったと思う。

神木くんは全編通して白いシャツと黒いズボンの学生服姿。
繊細で純粋な、絵に描いたような清潔な美少年がピアノを奏でるのだ。
こちらにも目が釘付け。なんて素敵。なんて健気。
完璧な”郷愁男子”という気がする。
真面目でやさしいけれど、あれこれ揺れ動く思春期の男の子を、
自然体で見せていて素晴らしかった。
ピアノと少年と地方都市というモチーフは、
ちょっと大林宣彦監督作品をも彷彿とさせる(テイストは違うけど)。

それにしてもこのドラマの音響効果は大変だったと思う。
手話の場面には字幕が出るのだが、それに集中させるためか音は抑制され、
手話だけの会話部分では、ぴんと張り詰めた緊張感があった。
聾者同士の玲子といずみが思いをぶつけあう場面などは圧巻。
字幕を読んでいると、洋画を見ているような気にもなってくる。
そこが終わるとざわざわと外界の音が聞えて来て、ほっと息をつき、
自分が息を詰めて見ていたことに気付くのだ。
音のない世界。このひとたちには世界はこうなのだ、ということを改めて思う。

母の愛は子どもを守り、またある意味で縛る。
これも『Mother』の仁美さんに通じるなあと思ったりした。
抜き差しならぬ一対一の生活に明人が重さを感じるのも分るけれど、
正直なだけに、子どもの発言はストレートすぎて、
玲子の胸中を思うとやるせない。それは残酷だよ。
覚えていないだけだ。ピアノを好きで、やりたいと言ったのは自分自身なのに。

北陸ロケだけに、都会とは違う空気感が画面に漂い、
海のうえの空や波などの挿入は印象的。
言葉は地方色を出さずほぼ標準語だったと思うけれど、
もともとリアリズムを追求したものではないだろう。
架空の街のファンタジーとして心に響く佳品だった。
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