舞踊家・長嶺ヤス子さん

NHK朝の生活ほっとモーニング（AM8:35〜9：25）の金曜日のコーナー
「この人にトキメキっ！」のラインアップはなかなかに素晴らしい。
佐藤浩市、坂東玉三郎、中村勘三郎、宮本亜門、宮沢りえなど
そうそうたる顔ぶれの演劇人たちが続いて、楽しみに見ている。

今日のゲストは舞踊家の長嶺ヤス子さん。
フラメンコでありながら日本的な要素も組み入れた
オリジナリティあふれる創作舞踊。

このひとの舞台は24年前に一度見に行ったことがある。
「娘道成寺」。歌舞伎の舞踊ではさんざん見てきたものだけれど、
長嶺さんの舞台は様式的なものではなく、
迸る女の激情そのものだった。
それはうつくしいというよりむしろすさまじい印象。
圧倒されたとしか言いようがない。

それから二十数年、このひとの姿勢にはまったくブレがない。
ぴんと伸びた背筋、鍛え抜かれた体。
舞台の上では何もかも忘れてその役になりきって完全燃焼。
普通に話している時はほんとに柔和でやさしいのに。
舞踊というものは、やはり祀りや呪術と密接に結びついているのだろう。
巫女や霊媒のように舞うことでなにかが降りてくる。
そのためのトランス状態をつくることが舞う、ということ。
そんなことを改めて思わせてくれる。

最後スタジオで着物をまとい、
石川さゆりの「飢餓海峡」の曲にあわせて踊る姿を見て
何故か涙が出てきた。
身も心も潔く踊ることに捧げてなんの迷いもない。
私の母の世代だというのに、本当にすごい人だと思う。