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2008年09月20日03:29

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「陽炎の辻2」第二回<姉妹>(9月13日)

演出:清水一彦

メインエピソードは原作第十二巻『探梅ノ家』第二章「水仙坂の姉妹」。
今津屋吉右衛門の後添え候補を目利きするため、
由蔵と磐音が鎌倉に出向き、対面した後の一騒動。
後添えに目された姉・お香奈は相愛の相手があって逐電し、
妹のお佐紀の人柄を磐音が認めて、こちらを推挙する。

「町人になったほうが気楽なのに」と長屋で金兵衛に言われた後、
おこんが磐音に「町人になるなら、嫁に行ってあげる」と言うのは
第七巻『狐火ノ杜』第三章「行徳浜雨千鳥」二の最後あたり。
(雰囲気は全然違うけれど)

第一回と違い、レギュラー陣の顔見せ紹介をしなくてよい分、
ひとつのエピソードだけに集中できたのは良かったけれど、
やはり端々に余韻が足りないことを痛感してしまった。
人物の描き方の違和感もあれこれ。
少々辛口なれど、突っ込みどころを列挙。

<違和感の数々>

・「磐音、おこんの言葉に何を思う」

ナレーションで磐音の心情を語るのはやめていただきたい。
そんなものがなくても、磐音の目を見ていれば、ちゃんと分かる。
むしろ邪魔。

・「こんが、坂崎さんのお嫁さんになってあげる」

お父っつぁんの目の前でこんなにあっけらかんと言っちゃうなんて、
なんて無防備な。
そりゃ金兵衛さんの声が裏返っちゃうのも無理はない。
無邪気すぎるというか、これは子どもの言い方ですね。
バックに流れてるのはチャールストンふうの「江戸の町/江戸の人々」だし、
完全にコミカルな描きかた。

原作では金兵衛長屋を辞したあと、今津屋にもどるおこんを
両国橋まで送って行った磐音に対して、別れ際に急に言う台詞。
笑おうとして泣き顔になる彼女の心情が切なくて、とても良い場面なのに。
やっぱりドラマのおこんちゃん、可愛いけれど子どもっぽい。

・磐音の食欲

冒頭の今津屋さんでの、一心不乱の食事はかまいませんが、
目利きを頼まれた大事な席での、あのかきこみ方はあり得ない。
あの間、何も見てないし聞いてないし、相手方に失礼でしょう。
微笑ましいというよりは、分別がないように思えてしまう。
大事な席なのだから、彼にだけ別室で先におなかを満たしてもらうべき。

・「坂崎様がお国に戻られたらよろしいのに」
 「色々と、何ですの?」

子どもっぽいといえば、お佐紀のこの台詞の無頓着さ。
お香奈じゃなくても「失礼ですよ」と口を封じたくなる。
脇本陣を仕切っている人とも思えない言動。
さらに、磐音の片肌脱いでの朝稽古を目の当たりにして
「失礼しました」と恥らうでもなく、

・「滅多に見られないものを見せていただきました」
というのは、いささか慎みに欠けるような。
子どもっぽいミーハーさや好奇心のほうが立ち勝っていて、
磐音が彼女に「感服する」のがなんだか解せない。
こういう脚本のオリジナル部分に矛盾があるせいか、
後に姉をいさめたり、父親に覚悟をうながしたりするのが
とってつけたようで、木に竹を接いだような印象。

・「この海はお江戸の海とは違いますか?」
 「はい、別の海です」
 「私もいつか見てみたい」

これはお佐紀に、江戸に出たいという野心があるってこと?
原作では由蔵と磐音のやりとりのはずが、すりかわっている。
あからさまに合成の海は、キラキラがわざとらしかったような。
ないものねだりだとは思うけれど、時間に余裕があれば
原作通り、由比ガ浜に出て、砂を素足で踏みしめながら
抜き打ちをする磐音が見たかった。
時間短縮の余裕のなさは、こういう風景描写を犠牲にしてしまいがち。

・「磐音さま〜」

動転してるとはいえ、由蔵さんが磐音のことを
「磐音さま」と呼びかけるなんて?!
奈緒さんじゃあるまいし。普通「坂崎さま」でしょう。
さらに言えば原作にある「後見」という素敵な呼び名が
使われていないのも残念。
「老分どの」「後見」というやりとりが、良い感じなのにな。
未だ「元締めどの」にはなじめない。

「原作とは違う」不満をまとめて吐き出してしまった。
短い時間でまとめる苦心は分かるのですが。失礼の段、平にご容赦。

<その他の雑感>

・百合の花が印象的
回想場面の、病身のお艶を背負っての磐音の大山参りの道筋にも
百合がいっぱい咲いていたから、そのイメージ続きか。
真っ白で清楚な鉄砲百合。
今回も山百合がうつくしかった。外ロケの緑はやはり綺麗。

・磐音は目で語る
磐音は言葉少なだけれど、心情のゆらぎや気遣い、懸念など
すべてを表情と目線で表現するのが毎回見事!
おこんの大胆な告白への戸惑いやら、
お香奈の屈託を見て取っての懸念など、実に細かい。完璧。
あの綺麗な目で見つめながら「ゆるりと」と由蔵の足をいたわるところも
本当にやさしげ。アップのたびに見惚れる。

・背負った十字架
「あなたがたのためにご家族が嘆き悲しんでおられること、
 ゆめゆめ忘れてはなりませぬ」
家を捨て、脱藩して落ちてゆくお香奈と左門に対し、
しみじみと語りかける磐音の台詞に情がこもる。
自分自身の身の上と重ね合わせているのは明らか。
彼のせいではないのに、一生負わねばならない罪の意識。
切ない。

・美人姉妹の艶姿
いずれが菖蒲か杜若などと言うけれど、
落ち着いた美貌の姉と初々しい妹の対比はくっきりしていて良かった。
着物も帯も青系統でまとめた姉のしっとりした色香と、
白地に赤の帯の妹の瑞々しさ。手絡の紅がいかにも娘。
季節の設定は夏だから単衣だけれど、
ちょっと秋めいたような吹き寄せ柄の小紋が素敵。
(それにしても磐音は夏でも袷でお気の毒)
お香奈さんの濃紺亀甲柄の帯、良いなあ。
武家奉公で立ち居振る舞いも洗練されたお香奈と、
脇本陣を仕切るお佐紀の、格の高さをかんじさせるような装い。
今津屋の奉公人であるおこんの絣柄と対照的。
* おこんちゃんは琉球絣をよく着てますね。
 今回の青地にカマ・シキー(釜の敷き)とトウィグァー(鳥)柄も、
 可愛くて似合っていた。

お香奈役の森ほさちさんは、元宝塚の娘役トップで、
真矢みきさんと名コンビだったとか。
http://www.spacecraft.co.jp/mori_hosachi/
「お艶さまに似ておられる」と由蔵さんが喜ぶ通り、
やはり宝塚出身の檀れい@お艶に共通するような正統派の美貌で、
この役にぴったり。逐電後も登場する予定なので楽しみです。

対する北川弘美@お佐紀さんは、今後もキーパーソンとなる大役。
http://www.oscarpro.co.jp/profile/kitagawa/
ちょっと台詞に力が入りすぎてる気もしますが、清潔な美貌は清々しい。
芯の強さは充分うかがえるので、がんばっていただきたい。

・地蔵湯の弓
短い場面だけれど、地蔵湯の女房おしまが二階の休憩場にあがってゆくところで、
カメラが一瞬、外に飾られた弓矢をなめて、おお!と興奮。
「かはらずにどこも矢を出す湯屋の軒」と川柳にもあるように、
矢をつがえた弓は、「湯入る」と「弓射る」をかけた、湯屋の印なのだ。
http://www5.ocn.ne.jp/~ukiyo26/yuya1.html
銭湯ファンとしては、こういうちらりとした見せ方も心憎い。

・殺陣のスピード感
お堂のまえでの立ち回り。今回はなんといっても相手の木刀を奪い取り、
腰の大刀をぐいっと後ろに回しての動きがかっこよかった!
段取りとか見せ場とかいうのではなく、実に自然に磐音になりきっている躍動感。
あまりにもスムーズなので、そのすごさに気付けないような。
繰り返し回して回して掏り合わせる、流れるような一連の刀さばき。
磐音も見事だし、相手も見事。

ここでの敵役・吉村作太郎を演じるのは市瀬秀和(いちのせ ひでかず)さん。
http://www.cma-co.jp/profile/ichinose.html
市川雷蔵に憧れて俳優を志したというかただけに、
時代劇や殺陣に力を入れているとか。
原作での吉村は嗄れ声の巨漢となっていたけれど、
敵役とは思えないほどすっきりした好青年。
ゲスト男優はいつも素敵で楽しみです。

・その他ゲスト俳優
お香奈と相愛の大塚左門役は、河野安郎(こうの やすろう)さん。
http://a-selection.ftw.jp/picm/000000818.jpg
http://a-selection.ftw.jp/picm/000000816.jpg
『篤姫』では、篤姫の実家の長男役だったのですね。
気付きませんでした。
ひとが良さそうであまり強くない感じが、この役には似合っているけれど、
お香奈さんに位負けしてる気がして、先々ちょっと心配。

姉妹の父親、小清水屋右七役は田山涼成さん。
http://www.siscompany.com/02manage/09tayama/
本当にいろんな役をやってらしゃる、名脇役。
耕史くんとは、『華麗なる一族』でも共演していますね。
私にとっては夢の遊眠社時代から見ている、おなじみの方。
見ているとほっと安心します。

安心するといえば、お艶の兄、赤木儀左衛門役は、
前回と同じく小林隆さん。
http://www.kobasan.jp/profile/
『組!』ファンとしては、コバさんは永遠に源さん。
この役も見るからに誠実で実直そうで、
耕史くんとの対面場面は、嬉しい限り。
でももちろん歳三と磐音はまったくの別人。
役者って本当に不思議だなあ。
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