mixiユーザー(id:949383)

2007年09月15日03:39

92 view

「陽炎の辻」第七回<指切り>(9月13日)

メインエピソードは原作の第二巻第二章「東広小路賭矢」。
矢場荒らしとのいざこざから命を落とすおきねの哀しい話。

原作ではおきねは金兵衛長屋の住人ではなく、家族設定も違うし、
磐音が矢場荒らし対策の用心棒として「金的銀的」に雇われるまでは
接点もなかったけれど、ドラマではこの役をふくらませ、
レギュラーの長屋の住人にして、
おこんと張り合う磐音恋慕の娘にしてあった。

家族思いで、よく働いて、磐音に対しては恋する乙女の
喜びや悋気や哀しみをストレートにあらわし、純情そのもの。
いささか奥手で気後れ気味なのが、微笑ましくもいじらしい。
ここに至るまでに、ちょっと頼りない父親や、弟の幸吉に対する情、
磐音への過敏なまでの反応振りを丁寧に描いてきただけに、
白昼いきなり通り魔にあったような無惨な殺され方をするのは、
展開を知っていてもかなりショック。
なんだか現実の、つい最近の場当たり的な犯行の犠牲になった
若い女性の悲劇を連想してしまった。
何にも悪いことなどしていないのに…。
「夢なの。いいひと見つけて、そのひとの赤ん坊生むのが。
 ちっちゃな夢」
果敢なく消えた夢。いきなり断ち切られた人生。

「ほんとに帰ってくる?じゃあ約束して。
 指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲ます…」
子どもみたいな指切りの約束。ちいさな約束。
それが呼び覚ます奈緒との指切りの記憶。
ここの磐音の佇まい、表情から、彼の心中が痛いほど分かる。
おきねと指は触れあっているけれど、それは受身の「絡まれている」指。
回想の奈緒との海辺では、奈緒の指に自ら「絡める」のだ。
こういうどうしようもない時には、感情を閉じているような
何も映さない瞳になる。いつもながら素晴らしい。そして切ない。

おきねの亡骸を前に「まかせろって言ったじゃねえか!」と、
胸倉をつかんでがくがくとゆさぶる磯次にまったく逆らわず、
じっと耐えている顔の悲痛さに息が詰まる。
「鬼」になり、居眠り剣法を捨てた時の壮絶さ。
相手を討ち果たした直後の哀しさ。
その表情を見ているだけで、胸いっぱいになってしまう。
それにしても、今回はアップがきわだって多かったような。
片思いの末の、あんまりな結末に吼える柳次郎も哀れ。

いよいよ国許へ帰って国家老の宍戸一派と戦うことを決意し、
旅立つ姿が、今回の幕切れ。
「あきらめたらそこで終いとなります。
 どんな相手だろうと、己の力をすべてぶつければ活路はひらけます。
 逃げてはいけない」
賭矢の勝負を受けてくじけそうになるおきねを励ました言葉は、
彼自身、自らを鼓舞する言葉でもあったろう。

次回も息詰まる展開になりそう。
演出はどなたかな。今回は西谷真一さんで、
前回、前々回の富沢正幸さんとはやはり肌合いが違う。
骨太の話とか人情味の勝った話とか、流れによって変るのだろうか。

余談だけれど、都合4回通った茨城のワープステーションでのロケ見学
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=435230769&owner_id=949383
で目にした場面があちこち出てきた。
由蔵さんの「いずれ帰参なさる方だと思っています」というのは
5月12日の撮影で、おきねちゃんの殺し場も同日。
その他、今まで見た回のあれこれが飛び飛びに撮影されていて、
本当にどの回のどの話か混乱するほど大変だったことがよく分かる。

<役者陣寸評>
・見学当時、矢場荒らし三人組も見ているけれど、
仇っぽいおかるが金八先生のドラマで有名になった
小嶺麗奈(こみねれな)だというのは、
一緒に見に行ったKさんに教わって初めて知った。
矢場でこれ見よがしに赤い蹴出しを出して見せても、
原作に言う妖艶な凄みのある美人というには
ちょっと物足りなかったのだけれど。
わざわざ水垢離場面まで見せてがんばってはいたが。

・見学時は若衆の数馬が誰だかよく分かっていなかった。
宮崎あおいちゃんのお兄ちゃん、将くんだったのか。
映画『EUREKA(ユリイカ)』(2001年)でも
『初恋』(2006年)でも、実際と同じくあおいちゃんの兄役で、
私には「あおい兄ちゃん」のイメージが強いのだけれど、
いつも、ひょろっと優男ふうながら虚無的で、
なにかコトを起こしたりまきこまれたりする役が多いような。
原作通り、居合い抜きの形だった。

・隠居は不破万作さん。元・状況劇場の看板役者。
相変わらず味わいのある面構え。

・金的銀的の主の朝次さんは尾藤イサオさん。
ぴったりはまってて、すごく安心して見られた。

・大の字になり、腹掛けまでまくれあがって、
おへそ丸出しで寝ている幸吉くんはすごく可愛い。
ほんとに元気な子どもの寝姿。

・笹塚さまのことは、原作でよく承知してるからまあ良いんですが、
「それはともかく、千両を」と駆け出してゆくあの描き方だけだと、
まるで私利私欲だけで金に汚い与力のように
誤解されてしまうかも、とちょっと心配。

・今回のおこんちゃんはかなりいろいろ飲み込んで耐えていた。
奈緒さんを気にするおこんを、そっとなぐさめるお艶さんの
おっとりとした優しさ。
初めのあたりで、かまどの前で火吹き棒を吹きながら、
磐音にぽんぽん言ってるのは、食べてる時の磐音が
何も聞いていないのを知ってる上での憂さ晴らしですね。
0 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2007年09月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      

最近の日記

もっと見る