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2017年04月09日14:36

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IHIステージアラウンド東京初体験(『髑髏城の七人・花』)

4月3日ソワレ公演(18:30〜22:00)観劇。
http://www.tbs.co.jp/stagearound/hanadokuro/cast/

<劇場までの道>
何しろ出来たばかりの劇場。こちらも勝手がしれない。
一番の最寄り駅はゆりかもめ「市場前」駅だが、
有楽町線「豊洲」駅から徒歩15分ほどだというし、歩いてみた。
しかし地上に出てみるといきなりの雨。
折り畳み傘は用意していたが風雨ともに結構強い。やれやれ。
ゆりかもめの高架線に沿い、
右手にガスの科学館を見ながらてくてく歩く。
豊洲から次の駅「新豊洲」までが10分ほど、
そこから「市場前」まで5分程度で、劇場の灯が見えてきた。

それにしても噂通り劇場の周りには何もない。
フェンスに囲われた空地の向こうに
忽然と現れるまばゆいネオンサイン。
なんだか荒れ果てた荒野にでっち上げられたマハゴニーみたいだな。
向こう岸に見える高層ビルも虚構の書割めいている。
風雨に加え雷まで鳴って、初っ端から劇的な芝居の中にいるみたい。
辿り着いた観客の多くはかなり濡れてしまっていた。

<座席トラブル>
鳴り物入りの”回る観客席”。
おそるおそる上がってみて、
ぎっしり詰まった観客数に圧倒された。
案内員の方にチケットを見せて、座席に案内してもらう。
「この列の真ん中あたりです」と通路から示されたが、
列はとても長く、おまけに幅はとても狭く、
たくさんの人の足元を無理やり横切らなければならない。
生憎開演時間が迫っていたので、
ほとんどの人がすでに着席している。

まいったな、どちらから行ったほうがましだろうか、と、
少し後方からその列を眺めてみると、
なんと全部埋まっていて空きがない!
あわててチケットの座席番号を確認する。
日付は今日のこの公演に違いない。
でも再度右から見ても左から見ても、
やはりその列に空きはない。

血の気が引いて、劇場スタッフに問いただしたが、
スタッフが狭い列の間を掻い潜って確認したところ、
着席していた人のチケットも私のチケットも
同日同公演の同じ番号だった。
どういうことなのか、調べを待っている間にも開幕は迫る。
動く客席だけに、このまま列車に置いていかれるような気分。
本当に焦ってパニック‌状態になりかけた時、
代わりの席に誘導され、座った途端に客電が落ちた。

当初の席よりずっと前列の良席(関係者席なのだろうか)だったのは
結果的に幸いだったけれど、
無事座れるまで生きた心地がしなかった。
その後幕間にスタッフが詫びにこられた。
私の購入していた座席券が、謝って当日券でも売られたことによる
ダブルブッキングとのこと。
初めての体験だったが、本当にショックなものですね。
始まる前に冷や汗をかいてしまった。

<回転と映像>
開幕前から音楽・音響は場内にがんがん響いていた。
舞台面を隠している幕、というか、
スライドするスクリーン(巨大な襖のようなイメージ)に、
水墨画のようなモノトーンの風景が投影され、
薄野がざわざわと揺れている。
円形とは言っても後ろまでは見えないから、
半円状にぐるり囲まれている感じ。
通常まっすぐか、こちらに突き出ている舞台しか見たことないので、
向こうが窪んでいる状態は初めての眺め。
最初はやはりちょっと違和感があった。

やがてスクリーンの一角が、まさに襖のようにすっと開き、
高笑いとともに成河さん演じる天魔王の姿が見えて、
一気に劇世界に突入。
その髑髏城内の場面から、他の場面に変わるたびに、
今までの部分は閉じられ、客席が回って、別場面のセット部分が開く。
その部分に向き合うように客席の角度が変わるのだ。
人物たちの移動場面では、幕手前の花道部分を走るキャストと共に、
客席も一緒について回っている感覚。
体験型のアトラクションゲームのような感じ。

回り始める時、地震の最初のように、左右に振られる感覚があった。
それほど速い速度ではないけれど、個人的にはちょっと気持ち悪い。
後半、クライマックスに近づいたあたりではやや速まり、
目に映る映像がズームアップするのと相俟って、
ジェットコースター的な感覚に陥る。

実を申せば、遊園地の速度のある乗り物は大の苦手。
そういうものには最初から絶対近づかない。
しかしここで途中退場という選択肢はないから、なんとか堪えた。
でも同じような体質のひとが、体調不良の状態で体験するには、
いささか酷なのではないかと思う。

カーテンコールの時、
まず主要キャストがそれぞれの場に一人ずつ佇み、
ひとつずつそこを開いて、絵のように見せてゆくのは、
この劇場ならではの活人画的趣向で面白い。
最後まで孤高の天魔王や、
白い曼珠沙華の中の白蘭兵衛に見惚れた。

<感想>
劇団☆新感線の舞台は、以前『蛮幽記』を見て以来。
映像の多用と派手な立ち回り、私の肌には合わないと分かってはいる。
今回観に来たのは、ともに大好きな耕史くんと成河さんの共演、
これまた好感を持っている青木崇高くんの初舞台を見届けたかったから。
あらすじも人物関係もほとんど未知のままだったけれど、
雑誌インタビューや対談などで、うっすら知っていたこともある。

信長亡き後の世界の、かつて信長に仕えた三人の男たち。
それが天魔王、捨之介、蘭兵衛。
その関係性が絡み合って、物語がころがってゆく。
これまでの上演では、演者の格の大きさ、年齢などもあり、
三人が三兄弟だとすると、天魔王が長男で蘭兵衛が三男だったのを、
今回は各々の柄に合わせ、耕史蘭兵衛が落ち着きのある長男、
成河天魔王がやんちゃな三男、というイメージらしい。

・成河@天魔王
痛烈に感じたのは天魔王の突き抜け感!
最初から高テンション。随所の高笑いの声が耳について離れない。
小柄なんだけどぐわっと大きい存在感。
醜い片端者の拵えは、リチャード三世を思わせる。
これだけ振り切った演技は小気味よい。お見事!
『エリザベート』ルキーニ役の時のように、この世界を司っている。

攻めの芝居ではあるけれど、
髑髏城を訪れた蘭兵衛にすがり、
後ろから抱くようにして仲間へと口説くあたりなど、
口跡の良さもあり、自在な緩急に酔いしれた。
ここは口説かれ、揺らぐ蘭兵衛の受けの芝居も矯めがあって良く、
二人を見ているだけでぞくぞくする。

・山本耕史@蘭兵衛
長く垂らした黒髪の美しさ。品のある佇まい。愁いを含んだ表情。
色里のどんな女より麗しく色気を感じるが、堂々たる重みもある。
淡い浅葱色の衣装も白の衣装も、綸子のような柔らかもの。
こういう衣装での立ち回りは初めて見るので新鮮だったけれど、
個人的には足元で目がつまずいた。
着物って、素足こそが色っぽいものなのだ。
白足袋は妙に足が大きく見えてしまう。

耕史くんはもちろん綺麗なのだが、
全体にシルエットがやや茫洋としていて、
もう少しきりっと締まって見える方が嬉しい。
そういう点では、闇落ちして髪型も変化する
黒蘭兵衛の方が好みだった。

ぐいぐい攻める天魔王に対し、蘭兵衛は受けに徹している。
受けの芝居は発散出来ず、辛抱立役というところだけれど、
それが良いからこそ攻め手も引き立つというもの。
それは分かるのだが、最後に死を選ぶ彼の心の動きの流れが、
今一つ良く呑み込めず、感情移入するまでには至らなかった。
美しい姿や見事な殺陣は当然のことで予想の範囲内。
ファンとしてはより多くを求めてしまう。

・小栗旬@捨之介
舞台の小栗くんを見るのは『カリギュラ』以来かな、
(と思ったのだが、調べたらそのあと『ムサシ』小次郎役があった)。
新感線の髑髏城でこの役をやるのは二度目だということで、
思った以上に堂々として気持ちいい。
彼に似合っていたし、骨太な大らかさもあって好印象。

・青木崇高@兵庫
まだまだ動きやリアクションに固さはあるものの、
無邪気で気の良い、一本気な愛されキャラは、
『ちかえもん』の不孝糖売り万吉を彷彿とさせ、
微笑ましく応援せずにはいられない存在。
人柄の魅力がにじみ出ていて、観ていて楽しい。
カーテンコールでのはしゃぎっぷりは
ことに可愛くチャーミングだった。

・古田新太@贋鉄斎
もう何も言えないほど面白い変態刀鍛冶。
台詞も動きも間合いが絶妙。
出番はそれほど多くないのに、出るたびに場をひっさらう。
スパイス的な役割として完璧。改めて感嘆。

・りょう@極楽太夫
台詞はよく通るし、舞台映えもして素敵。
ただ、歌舞伎ファンとしては太夫というには
衣装が安っぽくてちょっと残念。
いや、本物の歌舞伎と比べるなんて無理だとはわかってるけど…
最後にきりっと戦う時の格好の方が似合ってる気が。
『八重の桜』の時の黒木メイサを思い出した。

・清野菜名@沙霧
少年のように爽やかなイメージで、躍動感あふれた好演。
大変な役ながら、キレの良いきびきびした動きで頑張っていたと思う。
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