『
彼は秘密の女ともだち』
「なりたい自分になる」、よく聞く言葉だが、この映画は少しニュアンスが違うかも。(笑)
フランソワ・オゾン監督作でなかったら、もっと驚いていたかもしれない。
クレールの親友だったローラが亡くなる。
残された夫ダヴィッドと子供が不憫で「面倒は私が見る」と語るクレール。
この予告の展開から予想したことは丸っと外れた。
女装やジェンダーフリー的な要素はオゾン監督なので、意外というよりもむしろ<署名>のようなものだが、それにしても展開が読めない方向に転がる。それも
ナナメ上にだ。(笑)
友情物語でも恋愛物語でもあり得るのだが、着地点はどの時点で考えたのだろうか?
そもそも着地させるつもりだったのかも怪しい気がしてならない。(笑)
ウェルメイドなハッピーエンドを望む観客には唖然とする結末だろうが、オゾン監督のしてやったりという顔が目に浮かぶ。
個人的にはいろいろ詰め過ぎて焦点がボケている気もしなくはないが…。
満足度は“オゾンごっこ”遊びが出来るかどうかにかかっているかもしれない…と書いては少々失礼かな。
ダヴィッド役ロマン・デュリスの女装は努力の跡が感じられるものの、どこかで<作り物>も感じてしまう。
もっともこれは親友の死を受け止めるクレール(アナイス・ドゥムースティエ)の価値観の転換に焦点を当てた作品だから、ことさら問題ではないのかも…。
化粧をするダヴィッドよりもクレールが自分の本心を“化粧”で誤魔化していないかという問いかけは痛烈なものがあるし、これこそ普遍的なテーマではないのか。
アナイス・ドゥムースティエの存在感は良かったと思うが、“夫”の気持ちも少し知りたかった。
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