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2014年04月18日23:58

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『血の婚礼』の江波杏子さん(2008年3月のスタパ映像より)

『ちりとてちん』恋しさに見返した2008年の録画番組中、
江波杏子さんゲストの『スタジオパークからこんにちは』では、
2007年の舞台『血の婚礼』の映像も流れて、
ああ、これもあったんだ、と改めて惹きつけられた。

この舞台は題材と白井さんの演出に興味があって初日に観ているが、
江波さんの存在感に圧倒され、江波さんが主役だとさえ思ったから、
ほんの少しの場面でも、こうして記録されているのは嬉しかった。
http://www.duncan.co.jp/web/stage/bloodwedding/story.html

当時書いた舞台感想から、一部抜粋して再掲する。
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スペインの詩人・劇作家ロルカのこの作品は、
アントニオ・ガデス舞踊団によるフラメンコ舞踊としても
舞台化されていて印象深い。
アンダルシアの焼け付くような大地。
婚礼の日に花嫁とかつての恋人・レオナルドは手に手をとって逃げ出す。
レオナルドの身重の妻は花嫁のいとこ。
花婿の兄と父はかつてレオナルドの一族に殺されている。
狭い共同体でのこの因果なめぐり合わせに、
さしもおだやかな花婿もナイフを手にして追う。
そしてまた繰り返される悲劇…

ぎりぎりまでそぎおとされたようなシンプルな舞台装置と演出。
一瞬も息を抜けない緊迫の舞台。
演じ手も観客も、大変なエネルギーを要する。
登場人物たちの造形がくっきりとして、
逃れようもない悲劇につきすすんでゆくさまはギリシャ悲劇のよう。

私の興味は役者でもある白井晃さんの演出法と、
Kさんが「スウィーニー・トッド」で絶賛していたソニンの演技にあったのだが、
何より圧倒されたのは江波杏子演ずる花婿の母だった。
夫と長男を殺され、その血を吸い込んでゆく地に伏して嘆く冒頭のマイムから、
残されたたったひとりの息子まで殺されてしまう最後まで、
涙を見せない、背筋のぴんと伸びた、鼻っ柱の強い気丈さ。
きわだった造形。見事のひとことに尽きる。

全体に台詞は少なめで、象徴的、舞踊的な雰囲気。
登場人物として、あるいは単に脇として、
ギタリスト渡辺香津美が生でギターを奏でるのも、
リアルなライヴ感を高めてとても良い。
亡くなった花婿の父や、いろんなイメージを象徴する、
新納慎也演ずる「黒い男」と尾上紫演ずる「少女」のからみは
舞踊そのもので興味深かった。

男は揺れ動いて通り過ぎるだけ。女は大地として動かずそこに残る。
白井さんの視線は透徹していて、とてもシビアだと思った。
(2007年5月6日記事)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=425015658&owner_id=949383&org_id=424963405
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スタパで流れたのは、花嫁とレオナルドの失踪が知れたあと、
花婿の母が怒りをあらわにする場面だが、
怒り狂うというよりも、覚悟を決めたような胆力を感じさせる。

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そんな立派なことするもんか!そんな女じゃないよ!
やっぱり二つに分かれるんだ。敵と味方。
もうここにいるのは敵か味方だよ。
また血が流れる。
敵か味方。人間にはこの二つしかないんだ。
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くわっと大きく印象的な目。エキゾチックな風貌も相俟って、
その迫力はすさまじいほどだった。
女性ながらきっぱりと”男前”な印象。
それに続く江波さんの談話も興味深い。

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『血の婚礼』ね、あれはまあ、
スペインのロルカっていう人の作品なんですけれども、
その演出をなさった白井晃さんって方、とってもね、素晴らしいお稽古、
まあ、何ですか、もちろん演出もなさるんですけれども、
そのお稽古の間は白井学校の生徒として、怒られて、泣きました。
でもほんとにね、叱られたわけじゃないんですけれども、
あたしたちがほんとにありがたいと思うのは、各いろんな現場で、
いろんなことを教わりますよね。
まあ、あたしみたいに…そんなこと言うのも何ですけれども、
年寄(としより)として、ほんとにまだ教えていただくことがいっぱいある。
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”白井学校の生徒として”という謙虚なお言葉が素晴らしいなあ。
その後、白井演出の『天守物語』などにも出演なさっているけれど、
8月の『Lost Memory Theatre』にも出演されるのは、
白井さんとの信頼関係あってこそだと思う。
どんな舞台になるのか、本当に楽しみ。
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