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2010年03月28日19:39

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染模様恩愛御書[そめもようちゅうぎのごしゅいん](日生劇場)

http://www.somemoyo.com/
3月19日、18:30〜 日生劇場にて観劇。

上演が長らく途絶えていたこの演目を、三年半前に復活上演した時は、
気になりながらも大阪まで行く余裕がなかったので、
今回の東京公演はありがたかった。
歌舞伎座や浅草公会堂などに早くから置かれていた
宣伝ちらしの写真もとても綺麗で耽美的で、気をそそられるに十分。

見目麗しい御小姓・印南数馬を見染め、足軽になってまでその家に入り、
彼と結ばれた大川友右衛門が、数馬の仇打ちを助けたのち、
細川家の家宝の御朱印状を守って壮絶な死を遂げるという筋立て。
第一幕)悪役・横山図書の非道による数馬の運命の暗転、
お小姓となってからの友右衛門との出会いと二人の契りまで。
第二幕)義兄弟となった二人が力を尽くして仇討を成功させた後、
敵のせいで燃え広がった火から、友右衛門が身を持って家宝を守り果てる。

つまり前半が見初めと契りという、いわゆる衆道としての見せ場。
後半が大火に包まれた宝蔵で、自らの腹をかっさばき、
ご朱印状をそこに押し込めて守り抜くという火事場の見せ場。
(具体的に想像するとかなりグロテスク)
それぞれに狙いがくっきりしていて分りやすかった。

ただ、普段ふつうに歌舞伎を見ているファンとしてはあれこれ戸惑いも。
ひとことで言えば、歌舞伎ではないという感じ。
弁士の語りや琴の音で進み、義太夫の床ではないことに違和感を感じてしまう。
流れる歌はちょっと歌謡曲めいているし。
人物にピンスポットがあたるのも、ピンクや紫の照明が縦縞模様をつくるのも、
思い切り盛大に金色の粉がぶわっと降り注ぐのも、ショーアップされた派手派手しさ。

二人の濡れ場を影絵のシルエットで見せるのは悪くないはずなのに、
そこがあからさまにピンクの照明だと、客席から笑いが漏れるのも道理。
意図的にコミカルに見せているのかもしれないけれど、
個人的にはあまりに笑われることがいたたまれない。
もっと普通にしっとり見せてくれても良いのに。
だいたい見初めからして、場内が笑うのにも納得がいかない。

だって衆道ってそんなに特別なことじゃないでしょう?
今回の芝居の売りは「ボーイズラブ」だとさかんに言われていたけれど、
昔からずっとあったことで、常識だったはずなのに。
あんまり際物めいて見られるのはどうも。
男女だと良くて男同士だと笑われるのだとしたら差別だ。
綺麗な二人の恋。それで良いじゃないか。

派手な演出は、染五郎さんもこれまで参加されてきた
劇団☆新感線などの影響もあるのかしら。
友右衛門亡きあと、彼を偲んでひとり涙する数馬のもとへ、
天井から二人の思い出の杜若がすうっと下りてくるのはちょっとベタだし、
上段にうつくしい姿の友右衛門が再登場して見つめ合うラストに至っては、
タカラヅカ?と思ってしまった。

他に細かいことで言えば、お腰元衆や家来衆が少ないので、
大家だということが視覚的に実感できず、少々物足りない。
普通の歌舞伎でそういう面々がずらりと居並んでいるのは、
格を感じさせるという点でちゃんと意味があるんだなあと痛感する。
歌舞伎役者たちが歌舞伎の演技をしているというのに、
歌舞伎とは違うものを見せられたという不満。
個人的には演出に気持ちがそぐわなかったということに尽きる。
こういうのは好みの問題なので、辛口ですみません。

役者評)
・愛之助さんの数馬、十五〜六のお小姓としてはちょっと厳しい年齢だけれど、
さすがの技量で愛らしく演じていた。声のトーンがうんと若い。
とてもたおやかで、でも芯はつよくてけなげ。
友右衛門が一目惚れしちゃうのも納得の綺麗さだけれど、
清らかで淫靡な感じはなかった。

・染五郎さんの友右衛門は、肩書きにこだわらず、
身分も捨てて恋に一直線の男を、ちょっとコミカルに演じていたけれど、
後半の火事場の火達磨はさすが思い切りの良い動きで見せる。
ここは大きく見えた。一番の見せ場。

・春猿さんの腰元あざみ、文句なしに綺麗だし、
喜劇的な味わいもあって達者なもの。
数馬を思っているのに「男に寝取られた!」と口惜しがるのも、
陰湿な感じにならず、華があった。

・芝のぶさん、一幕と二幕で別の人物ながら、
どちらも横山図書の妻役(最初の妻と後添え)で台詞も多く、重要な役どころ。
綺麗でつつましくて、とても良かったと思うのに、
パンフレットに扮装写真もないし、せっかくのカーテンコールにも出がない。
やっぱり役者の身分的に格下ってことなんでしょうか。
贔屓としては非常に口惜しい。

・猿弥さんの横山図書、複雑で屈折した性格の悪役。
したたかな存在感でなかなか良かった。
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