＜新坂（しんざか）＞
車力門通りから合間の路地を伝い、
柳新道通り、杉大門通りと抜けて行って、再び外苑東通りへ。
横断歩道で道の向かい側へ渡ると、
先ほどの曙橋駅のほうへまっすぐ下る坂がある。これが新坂。
明治30年に全勝寺というお寺の地所を削って新しく開かれたので、
こう名づけられたのだとか。
もちろんその明治時代には新しかったはずだけれど、
その時代も遠くなり、それなりに年月を経てきているのだ。
たしかに人工的に作られたと見える一直線の坂は、
下る右手が荒木町、左手が舟町と、ちょうど町の境目。
全勝寺は今も舟町にあるが、杉大門通りはこのお寺の参道で、
両側に杉並木が続いていたのが名の由来。
四谷あたりは杉の産地として名を成し、
造船に使う杉材を切り出していたことから、舟町の名も生まれたのだとか。
杉の大木がそびえ立っている景色を思い浮かべながら歩くと趣深い。
往時の面影からは遠いのだろうが、
よく見れば古びた家屋や張り出した木の緑などもあり、なんとなく心和む。
この坂道は結構好きだ。
＜坂道沿いのお店＞
下りの左手、舟町側には結構お店が並んでいる。
でもごちゃごちゃした感じではなく、
木陰もある道はのんびりしてやさしい。
あ、この「大草原」というカウンター席だけの小さな北海道ラーメンのお店は、
以前一度だけ入ったなあ。
よく見ると看板やドアなど、なかなか洒落たものが多い。
ドアもひさしも薔薇模様の飾りも緑で統一したステーキハウス「EINｓ ZWEi DREi」だの、
落ち着いた佇まいで、唐草もようの飾りも素敵な「ありす と てれす」だとか。
なかでも、あ、良い感じ、と足をとめてしまったのは
べんがら色の壁にクリーム色の窓枠の色合いが素敵なお店。
店前に置かれた椅子や丸テーブルも、
ドアのガラスに張られた写真なども絵になっている。
「『RENT』みたいね」とrikopinさんが言ったけれど、まさしく。
耕史くんがずっと、「転機になった作品」と言い続けている
ジョナサン・ラーソンの代表作であるミュージカルの
ポスターを思わせる音楽的、演劇的な雰囲気があった。
「bar461」という店名を覚えておいて、
あとで調べてみたのだが、ここは70年代のアメリカ音楽を中心に
ブルースやソウルなどが流れている洋風酒場だとのこと。
ミュージシャンのライヴも行われるそうだから、
最初に感じた印象は正しかったらしい。
おまけにもっとびっくりしたのは、ここのHPを見てみたら、
リンクされている出演順のLive Artistのなかに、
ソムン・タクさんがいたこと！
http://www2.odn.ne.jp/bar461/link/index.htm
彼女は日本でも活躍中の、韓国人ロックシンガーで、
この4月から、山本耕史くん主演の
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のイツァーク役をつとめる。
http://hedwig.jp/
すでに韓国でのヘドウィグ公演でも数回イツァークを演じていて、
抜群の歌唱力との評判。
またあたらしい舞台になる、と期待しているところ。
偶然通りかかったお店に、彼女が関わっていたなんて
これも縁なのかなあと、感激してしまった。
HPを見る限り、このお店は夕方6時半からのオープンなのに、
この日はまだ2時間以上前からシャッターがあがっていたのも偶然。
これも不思議な出会いでした。
＜てんぐや＞
坂を降り切ると、再び靖国通り。
ついさきほど通ったばかりのあけぼのばし通りの看板が
道路向かいに見える。靖国通り沿いに左手にちょっと行くと、
すぐに「てんぐや」さん。
http://gourmet.yahoo.co.jp/0006714073/P016888/
入ったら午後3時半過ぎという狭間の時間のせいか、
お客は誰もいなくて、私たちだけ。
こじんまりした店の奥のほうに座って、おすすめの坦々風つけ麺を注文。
辛さは何段階もあるようだが、二人とも一番辛くないのを選ぶ。
さっき食べてからまだ一時間とたっていないし、
大丈夫かなあと思ったけれど、運ばれてきたら、
つけ汁がたいへん美味しい。
縮れのある細麺は汁によくからみ、するするといただいてしまった。
ご馳走さまでした。さすがに満腹です。
座った席の、調理場に近い壁には、来店の著名人の色紙も
何枚か飾ってあって、耕史くんのものは2001.8.28の日付だった。
それにしても彼はラーメン大使と言えるくらい、
この業界に貢献してるんじゃないでしょうか。
＜まとめ＞
これにて本日のコース終了。
二人して曙橋駅から地下鉄に乗り、帰途についた。
彼のファンとして、彼の育った地元でもあるゆかりの地域をめぐるのは、
色々と思い入れもあるけれど、江戸時代からの史跡への思いもあり、
それらが絡み合って、短いながら濃厚な時間を過ごせた。
新宿はとても興味深い、面白い街だ。
また機会あるごとに歩こうと思う。
（*写真のてんぐやさんは、休日のシャッターの絵を写してみた）
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