＜曙橋通りへ＞
靖国通りに下りて、左へ。
成女学園も含め、通り沿いには結構古めかしい建物もあり、なかなか味わい深い。
わずかに下る通りをほんの少し行くと、地下鉄の曙橋駅。
さきほどの抜弁天通りが下ってきて、靖国通りと交わるあたりだが、
舟町から下ってきた新坂や、
住吉町を突っ切る曙橋通りなど細い通りもここに面している。
あちこちの筋から流れてきた水が溜まったような場所。
本当に起伏の多い土地の、ここは谷底の部分。
大きな靖国通りと抜弁天通りに比べると、
曙橋通りはちょっと奥まって狭いけれど、
アーチ型の「あけぼのばし通り」の看板は結構目立つので
それを目指して道を渡る。
ここは昔「フジテレビ下通り」と呼ばれていた、と
耕史くんがぐっさんに説明していたっけ。
この通り付近は住吉町で、左右を市谷台町、市谷仲之町という高台に囲まれ、
もう少し進むとフジTV局のあった河田町の下となる。
今日の歩きの振り出し近くに、ぐるっと回り込んでもどってゆくような道筋。
フジTVがこの地での歴史を閉じてからもう11年になるけれど、
ドラマ『ひとつ屋根の下』の最初のシリーズは1993年放映だから、
TV局がまだここにあった頃。
彼にとってはごく近い仕事場だったんだろうな。
河田町からお台場への移転が完了した1997年に元の社屋は解体され、
現在、高台の跡地にそびえたつのは河田町コンフォガーデンという集合住宅。
洋品店やら飲食店やら、いろんなお店が並ぶ商店街。
和菓子店「玉屋」はいちご大福の元祖とか。市谷柳町にも支店がある。
http://www.wagashi.or.jp/tokyo/shop/0814.htm
ここは谷道だけに、歩きながら道の両脇の路地に目を向けると、
左右いずれも上りの坂道や石段ばかり。
念仏坂など、結構急峻なものが多い。
＜安養寺＞
しばらく進むと左手に「安養寺」の石碑。
そのわきの道を入っていくとすぐ寺が見える。
台町がわの崖から見下ろされるようなごく小さい寺だけれど、歴史あるところ。
浄土宗知恩院末の寺院で、もとは市谷左内町富士見坂のあたりにあったものが、
明暦2年（1656）そのあたりが尾張藩上屋敷となるのに伴って、
現在地に移ったという。
ここには「植木屋平五郎」の名で知られる、柴田平五郎の墓がある。
労咳に倒れた沖田総司をかくまって、亡くなるまで面倒を見たと
言われていることには諸説あるようだけれど、
千駄ヶ谷に居を構えていた実在の庭師であったことは間違いない。
亡くなったのは明治45年。享年77歳。
幕末から明治にかけて生きた人というのは、
手の届かぬほど遠くではなく、今につながる生々しさを感じてしまう。
女優の江波杏子さんはこの平五郎の曾孫とのこと。
朝ドラ『ちりとてちん』にご出演中でおなじみの江波さんも、
新選組の逸話に名を残す方の血筋かと思うと、ますます印象深い。
＜第二旭ラーメン＞
安養寺を過ぎて次の路地が安養寺坂。
ラーメン店福しんの手前で左に折れて進むと、
ややあって右手に小さな住吉公園。
それに沿って右手の坂をのぼると、すぐ右にあらわれるのが「第二旭」。
中学時代から耕史くん行きつけのお店とか。
番組内でもぐっさんがびっくりしていたように、
知らなければ通り過ぎそうな分かりにくさ。
坂道に面した側は、植え込みと自動販売機で、看板すらろくに見えないし、
入り口もわきのほうで目立たない。
「ラーメン専門の店 特製ラーメン」の文字は辛うじて見えるものの、
第二旭という名前は添え物のように小さいのだ。
分かるひとだけ来ればいいということだろうか。
暖簾を分け、ガラスの引き戸を繰ると、
カウンターにも奥のテーブルにもお客さんはいたけれど、
幸い戸口近くの席は空いていたので二人でそこに座る。
耕史くんたちが座ったのはここだから、同じ席で良かった。
丸椅子には迷彩柄のフリースのカバーがかけられ、TVの音が流れ、
まんが雑誌などが置いてある、思い切り庶民的なお店。
よくしゃべるご店主は、久しぶりに来たお客と大きな声でやりとりしてる。
ラーメンは特製（焼豚豊富）・上（焼豚入り）・肉なし（野菜入り）の三種のみ。
上ラーメンの520円も安いけれど、肉なしの野菜ラーメンは350円とお値頃。
rikopinさんを案内する前に下見に来て、
上ラーメンはすでに味見していたので、肉なしを注文。
ちぢれのない素直な麺で、スープもあっさりと飲みやすい。
ご主人おすすめのとんがらしをちょっと振りかけたり、にんにくを入れたり。
このお値段なら学校帰りの学生でも気軽に立ち寄れるだろうし、
実際それらしい子たちも来ていた。
あきのこない味だし、常連客が多いんだろうな。
でもTV放映のあとは、やはり耕史ファンが何人か食べにきたそうだ。
第二というからには当然第一旭もあるのだろうと思っていたけれど、
そちらは京都のお店で、ご主人は以前そちらに勤めたとか。
店内には京都の第一旭の住所が貼られていた。
ここでお店を始めて31年目だと聞いて、
あ、耕史くんの年と同じだなあとすぐに思った。
ファンにとってはそんなことさえ感慨深いものなのです。
なんだかほっとするお店。長く続いて欲しい。
（続く・次は荒木町）
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