＜前書き＞
1月19日土曜日、マイミクのrikopinさんをご案内しての新宿歩き。
新宿と言っても、JRの新宿駅近辺からはちょっとはずれて、
若松町を皮切りに、余丁町、富久町、住吉町、荒木町と、
大江戸線の若松河田駅から新宿線の曙橋周辺あたり。
このあたりは昨年12月23日放映のTV番組の
『トーキョーほッ！』というコーナーで、
山本耕史くんがぐっさん（山口智充）を案内して歩いたところ。
彼が生まれ育ち、現在も暮らしている地元エリア。
小中学校の通学路沿いにある商店だとか、
中学校時代から通っているというラーメン屋さんだとか。
狭い路地、こちゃこちゃと並ぶ小さなお店など、まさに普段着の、古くからの町。
まったく気取らず、素のままで歩いている姿も微笑ましく、
思わず顔がほころんでしまった。
もともとこういう路地歩きは大好きだし、このあたりは土地勘もあるので、
そのあとすぐに一人で辿ってみた。
この狭い路地、この小さい店、ちいさかった頃の彼が駆けて行くのが
見えるような気がする。なんだか懐かしい。
大ファンである彼女にも、この気分を味わってもらいたくてお誘いした次第。
下調べの際、やはり彼が数年前のTV番組で訪れていた素敵な洋館の
レストランもそう遠くないことに気付き、そこも加えることにした。
あとのコースとは毛色が違うけれど、こちらもまた好きな世界。
＜過去の新宿歩き〜牛込・淀橋・四谷〜＞
個人的には、集中して新宿付近の歴史を調べ、
昔の記録と照らし合わせながら歩いたことは、過去三度ある。
最初は今から十年以上前に、仕事で定期的に市谷柳町に通った頃。
坂道だらけの起伏の多い街並み、江戸切絵図にそのまま重なる
昔ながらの地名（払方町だの鷹匠町だの）に興味を引かれ、
あの道この道めぐって探検してみた。
光照寺のある場所には、昔牛込城があったのだとか、
敷地のひろい矢来町は若狭小浜藩の酒井様のお屋敷跡だとか、
それよりもっと広大な市谷本村町（自衛隊敷地）は尾張徳川氏の屋敷跡だとか。
歴史を知ったうえで歩くと、断然楽しい。
次は加賀乙彦さんの自伝的大作『永遠の都』に夢中になった六年前。
戦前の淀橋区大久保に生まれ育った少年・裕太は加賀さんご自身がモデル。
冒頭、まだ幼い彼が幼稚園帰りに迷子になるエピソードがあり、
捜し歩く母・初江の足取りに沿って、新田裏から前田公爵邸、抜弁天、
西向神社など、現在の明治通り、職安通り、文化センター通りなどに
囲まれた三角地帯をぐるぐる歩いたものだった。
作中の地名のメモを取り、図書館で昭和十年代の淀橋区の地図をコピーし、
現在の地図と見比べながら現地を歩くのはわくわくする体験だった。
三番目は、大河ドラマ『新選組！』放映直後の2005年。
幕末熱が一気に高まり、ちょうど前年が江戸開府400年の記念年だったこともあって、
五街道の初宿である江戸四宿（品川宿、千住宿、板橋宿、内藤新宿）
近辺を歩き込み、新宿歴史博物館にも足しげく通った。
内藤新宿の宿場の名残はあまり残っていないものの、
車道から一歩はずれると山あり谷ありの起伏。
迷路のような道筋をたどり、すり鉢の底のような場所にある
昔ながらの池に出会う驚き。これは奥が深い、と興奮した。
現在の新宿区は、その昔東京が35区だった時代の
「牛込区」「淀橋区」「四谷区」の三つが合わさったもの。
偶然ながら、私は少し間をおきながら、
順番にそれぞれの区域に熱中したことになる。
＜小笠原伯爵邸＞
待ち合わせたのは都営大江戸線の若松河田駅。
まあ私は自宅から歩いてここまで行ったのだけど。
河田町口を出ると、そこがもう伯爵邸。
こんな立派な館が、塀もなく道から素通しに建っていることにまず驚く。
http://www.ogasawaratei.com/html/index.html
近代建築には興味があるから、この館が保存されるか否かという時期から、
新聞記事など切り抜いて、どうか壊されたりしませんようにと願っていた。
修復されてレストランとして蘇ったのは2002年。
もとは旧小倉藩の藩主であった、小笠原伯爵の邸宅として
昭和2年に建てられた、スパニッシュ様式の館だという。
この洋館の素敵さ、瀟洒なセンスの良さはなんと言ったら良いのだろう。
見事でありながら、ひとを寄せ付けないような威圧感はなく、
有機的、人間的な温かみにあふれる。
やさしいクリーム色の壁。丸みを帯びたやわらかなフォルム。
正面玄関の洒落た葡萄文様のひさし。床の綺麗なモザイク。
青いスペイン瓦。大きな楠の木。ほっそりと立つオリーブの木。
ほんとに素敵で見惚れてしまう。
玄関脇の壁に烏帽子のようなものをかぶった
猿のレリーフがあるのもエキゾチック。
豆柿もたくさんの実をつけていた。
あれ、しかし、玄関前になにやら飾ってある…
しまった！もしやウェディグパーティーで貸切？！
奥まった庭のほうをのぞいてみると、白いヴェールのような布飾りやお花。
うつくしいコーラスも響いている。間違いない。
これは入れないかとあきらめかけたが、rikopinさんが玄関を開けて
スタッフのかたに確認してくださったところ、
わきのカフェ部分は通常営業とのこと。良かった！
レストランは予約制だし手の出ないようなお値段だし、
もともとカフェ利用だけのつもりだったのだ。
ガラスののぞき窓がついた、こじんまりした木のドアから入ると、
焦茶色の板張りの床、落ち着いた木のテーブル。
ドアも窓も上部に丸みがあるデザインで可愛い。
背の高い布張りのスタンド。カウンターにならぶガラス瓶には
オリーブの実が漬けられていたり。
二人して優雅なお茶を楽しみながらも、席をたつごとに、
丸い鏡やキャンドルが置かれた小部屋だの、
白いクロスのかけられたテーブルが並ぶ中庭だの、
あちこちの眺めに感心することしきり。
実は一番見たかったのは、奥の庭の部分だった。
2005年11月3日が初日だったミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』
宣伝のための特別番組（TBS 2005年10月30日）で、
耕史くんが共演者の上原多香子ちゃん、小堺さんと共に食事をとっていたのは、
ガーデンの常設テントのような場所だったから。
http://www.ogasawaratei.com/html/ogasawara/reguide/1stfloor.html
http://www.ogasawaratei.com/html/ogasawara/reguide/1st_gtent.html
可愛らしい花一杯の唐草文様を付け、円筒状にせり出した
部屋の外壁をみながら風の通るオープンテラスで談笑している画面は
それはそれはうつくしかった。
ひとくちサイズのお料理を楊枝にさした「ピンチョス」を口にしたり、
http://www.ogasawaratei.com/html/wedding/pintxos/index.html
最後は花に食べられてしまうというリトショの物語にちなんで、
お花を使ったデザートを楽しんだり。
でもまさにその場所でウェディングパーティが行われているのだから
あきらめるしかない。
いつかそちら側も眺めてみたいものだと思う。
（続く・次は抜弁天から富久町へ）
ログインしてコメントを確認・投稿する