銚子の友人からの依頼で、23日の朝、急にまた撮影に行って来た。
私に劣らず古い建造物に愛着を持っている彼女は、
今次第に失われ行く故郷の風景のあれこれを記録しようとしていて、
これはその仕事の一環。
私の撮る写真は、彼女の理想とするビジュアルにぴったりだと言われ、
今年は請われてもう3回足を運んだ。
前回訪れた際はあいにく二日目が大雨になり、まったく動けなかったので、
その時に目星をつけていたあたりを精力的に回った。
ここのところの冷え込みで、初日はダウンを羽織っても手がこごえたが、
翌24日は穏やかな小春日和。
ここも港町だから、昔は水運でもっと羽振りが良かった時代があって、
遊郭なども栄えていたとか。
もはやその建物はとうに壊されてしまったそうだが、
その周辺だった旧道と呼ばれる道には、
こころ震えるような古めかしい建物がいくつも残っている。
ことに、納屋などに使われているトタンの外壁の色の移り変わりが、
まるでキャンバスに気ままに筆を重ねた油絵のタッチのよう。
薄れた青磁いろにグレーがまじり、茶の錆色も浮き出し、
なんともいえないグラデーションになった波打つ金属板の上に、
つるを伸ばしている蔦が、黄色から鮮やかな紅色に変化してゆく最中。
時を経てゆっくりとくすみ崩れてゆく人工物と、
季節に添って歩みをすすめる自然の営みが、融合して溶け合う。
しんとした空気の中で、そんな魔法を目の当たりにする。
傾きかけたような軒先やバス停前で、何度も立ち止まって見とれてしまう。
緑と坂と流れと小さな橋。神社にまつられた碇。
どこまでもそんな風景が続く、夕暮れ時のトタンロード。
翌日の外川(とかわ)港付近の坂道と合わせ、
36枚入りのフィルムをあっという間に6本使いきった。
切り取った風景のコマを、どう組み立てるか、
それはこのあとのお楽しみ。
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