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2014年03月13日01:21

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もっと泣いてよフラッパー(シアターコクーン)

3月1日、ソワレ公演観劇。
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/14_flapper.html

<フラッパー(英: Flapper)>
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1920年代に欧米で流行したファッション、生活スタイルを好んだ
「新しい」若い女性を指すスラング。
それまで女性らしいとされてきた装いや行動様式ではなく、
膝丈の短いスカート、ショートヘアのボブカット、
ジャズ音楽などを好んで、濃いメイクアップで強い酒を飲み、
性交渉、喫煙、ドライブを積極的に楽しむという、
以前までの女性に求められてきた社会的、性的規範を
軽視した女性たちを意味する。
フラッパーは「狂騒の20年代」を背景として登場した。
アメリカの1920年代初頭は、第一次世界大戦終結直後で
社会、政治ともに未だ混乱していた時代だった。
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 (Wikipediaより)

フラッパーといえば、『グレード・ギャツビー』の著者フィッツジェラルドの
ファム・ファタル(運命の女)であるゼルダの姿を思い浮かべてしまう。
吉田日出子さんが踊り子ジルを演じた初演(1977年)は未見。
どういう展開になるのか何も知らないまま、
1920年代のアメリカ、シカゴを舞台にしたさまざまな男女の恋愛模様を、
ジャズの生演奏とともに新鮮に楽しんだ。
絵空事のようなギャング団の闘争や踊り子たちの姿は、
三谷さんがシカゴをパロディ化した映画『マジックアワー』にも通ずる。

宣伝で一人前面に出ていたこともあって、
松たか子さん演じる踊り子ジルがヒロインかと思っていたのだが、
確かに最初のあたりは、用心のために男装してシカゴにやってきた彼女が、
この世界への水先案内人のようなイメージはあるものの、
ジル中心と言うわけでもなく、いたって多面的な群像劇。
速いテンポでいろんな人物たちのいろんな場面に移り変わる。

踊り子たちのショーがあり、その舞台裏があり、
いきなりねずみの世界になり、禁酒法時代ならではのもぐり酒場もあり、
唐突に亡くなった人物のたどり着く冥界もあり、
おもちゃ箱をひっくりかえしたような目まぐるしさ。
役者たちは衣装をとっかえひっかえ何役もこなして歌い踊る。
かなり戯画化され、混沌としながら活力にあふれている感じ。
同じこの劇場で観た『日本人のへそ』や『ボクの四谷怪談』をも連想したのは、
戯曲が書かれた70年代に共通する猥雑なパワーなのかもしれない。

劇中、何組かのカップルのやりとりが描かれる。
ジルはボクサーのチャーリーと口喧嘩しながらも惹かれあう。
松たか子さんはとにかくチャーミング。
男装も無理なく少年っぽい可愛らしさ。
歌声も素直で爽やかで、見ていて気持ちがいい。

大東駿介くんは、ボクサー役のためにだいぶ身体をつくったようで、
こんなに大きなひとだったっけ?とちょっとびっくり。
ボクシングの試合や、ジルとのベッドシーンでは、
そのきたえた肉体を堂々と披露していた。
それでもマッチョというよりどこかとぼけた可愛らしさがある。
ちょっと無作法な、でも根は気のいい男ぶりに好感を持てた。

黒手組のボス・アスピリンは令嬢フラボーに一目惚れして以来純情一途。
彼女を思ういじらしさはキュートそのもので、松尾スズキさんの真骨頂。
なんでこんなに可愛いんだろう。ずるい。おじさんなのに。
アスピリンの場面では客席もずいぶん沸いていた。

どのカップルもそれなりに心を通わせながら、その結末は皆ほろ苦い。
なかでも一番哀れを誘うのは、異国の皇太子の踊り子サラへの恋。
世間知らずの皇太子の純粋な思い。
皇位継承権も何もいらない、あなたのそばにいたい、と
身分を振り捨ててまでサラのもとに来て、
金目のものがなくなると食い扶持くらい稼げと言われ、
道化師の姿で舞台に立たされ、かなしい片思いのパントマイムをさせられる。
白塗りの顔と衣装は『天井桟敷の人々』でジャン・ルイ・バローが演じた
バチストそのもののように見えて、胸がしめつけられる。

演じたのは歌舞伎役者の片岡亀蔵さん。
身についた品の良さ、折り目正しさがにじみ出ていて、
世離れした王子のかなしさが切々と伝わってきた。
いらだったサラの言葉に絶望した果ての痛ましい最期。
持てる限りのものをすべて施してまる裸になった『幸福の王子』のよう。

彼を翻弄した格好のサラもまた、取り返しのつかぬ結末に深く傷つく。
ちょっとあばずれた女の色香とやりきれなさを演じて、
秋山菜津子さんはいつもながらお見事。何を見てもハズレなし。

皇太子のサラへの恋文を楽屋に運んでくる
執事イワン・イワノヴィッチ・ウルゲーネフ役は松之木天辺さん。
恭しく恋文を代読するなど、台詞も結構たくさんあって、
独特の身体感覚とたくまざるユーモアが素敵。
アンサンブルとしても大活躍だったけれど、お声も聴けて満足だった。
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