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2014年03月06日01:07

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エヴァの告白

3月1日、新宿武蔵野館にて鑑賞。
http://ewa.gaga.ne.jp/
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1921年、戦火のポーランドからアメリカへ、妹と二人で移住してきたエヴァ。
夢を抱いてNYにたどり着くが、病気の妹は入国審査で隔離され、
エヴァ自身も理不尽な理由で入国を拒否される。
強制送還を待つばかりのエヴァを助けたのは、
彼女の美しさにひと目で心を奪われたブルーノだった。
移民の女たちを劇場で踊らせ、売春を斡旋する危険な男だ。
妹を救いだすためエヴァは厳格なカトリック教徒から娼婦に身を落とす。
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(公式サイトあらすじより)

とにもかくにもエヴァを演じるマリオン・コティヤールが素晴らしかった。
彼女には『エディット・ピアフ』で圧倒され、それ以来のファン。
あの映画では老婆のようになったピアフになりきっていたのに、
あとで本来のすらっとした美しさを知って別人のようなギャップに驚いた。
ただの美人ではない、そのこまやかな表情の変化が魅力的な女優。
女性でありながら舞台でヘドウィグを演じたという経歴にも敬意を抱く。
確かにこのひとならそれも可能だろうと納得出来る。

この作品はそんな魅力に惚れ込んだジェームズ・グレイ監督が、
彼女のために書き下ろしたという脚本だけに、
彼女の確かな演技力と深みのある美しさが存分に発揮され、見入ってしまう。
今時珍しいほどのメロドラマで、
ハーディの『テス』や『レ・ミゼラブル』のフォンティーヌなども連想したけれど、
古風なコスチュームも、次々襲いかかる不幸も、彼女をより輝かせている。
『エヴァの告白』という邦題(原題は『The Immigrant』[移民])は、
教会の告解室で神父に自らの罪を告げる場面から来ているけれど、
ただ悲嘆にくれるのではなく、芯の強さをみせているところが新鮮。
彼女の心は最後まで彼女のものだ。

あらすじからはもっと悲惨な物語を想像していたが、
エヴァの転落はごく自然な推移で描かれていて決して品位を落とさない。
いわゆるベッドシーンはなく、その前後でほのめかされるのみ。
エヴァが最初にブルーノに連れていかれた部屋で休むように言われた時、
火箸を握りしめて枕の下に入れる描写だけで、
彼女が移民船のなかでどんな目にあったのか分かる。
総じて説明しすぎず、観客の想像に委ねているところが好もしい。

彼女に一目で惹かれながらも、売春を斡旋してゆくブルーノ。
その行為は悪党と呼ばれても仕方ないはずなのに、
姑息なずる賢さや嫌らしさは感じられない。
むしろなんとも純情で不器用な生き方が哀れに思える。
ある意味彼は決して彼女に触れられず、その足元にひれ伏している。
エスメラルダを崇めるせむし男のように。
演じるホアキン・フェニックスも、監督があて書きをしたというだけに、
この複雑な男を何の矛盾もなく存在感たっぷりに見せてくれた。

エヴァに想いを寄せるマジシャンのオーランド役、
ジェレミー・レナーもふわっとした軽みがとてもよかった。
影をひきずったブルーノと対照的な、羽があって飛ぶような浮遊感。
どこかこの世のひとではないようなあやうさもあり、
この三人のバランスは絶妙だった。

オリジナルの脚本とはいえ、移民たちがエリス島で受ける入国検査などは、
ロシア系ユダヤ人である監督の祖父母の実体験が基となっているそうだし、
売春斡旋の男やマジシャンにも実在のモデルがいて、
この物語を確かな存在感を感じさせるものとなっている。
とても見応えがあった。

話自体には特に関係ないけれど、エヴァの伯父の名にはちょっと驚いた。
彼女がやっとブルックリンの家を探し当てて置いてくれと頼むのに、
保身のため裏切って警察に引き渡す人物だが、
字幕で「ヴォイテク」と出た時、はっと反応してしまった。
エヴァはドイツとポーランドの間のシレジア出身ということだから、
ドイツふうの名前なのはごく当たり前なのだろうけど、
なにしろ『音楽劇ヴォイツェク』メモリアルCDを日々聴いているもので。
エンドロールのキャスト名で確認したところ、スペルは”Vojtek”だった。

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