『テンペスト』東京公演終了。
http://www.tempest2011.jp/index.html
率直に言って、私には響いてこない作品だったけれど、
礼儀として初日(6日)と千秋楽(28日)は見届けた。
文句なしに面白かったのは生瀬さんの聞得大君(きこえおおきみ)。
迫力満点のうえユーモアセンスも抜群。
説得力もただならず、最後の見せ場なんてついつい泣かされてしまった。
主役はほとんどこのひとと言ってもいい。生瀬さんの力に脱帽。
まあ、初日感想を読み返してみると、
すでに言うべきことはすべて言っているので、
これ以上屋上屋を重ねることもあるまい。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1669954806&owner_id=949383
でもせっかくなので、沖縄の風物にまつわることについて少しばかり。
【南風(はえ)】
劇中、浅倉雅博が唄う場面は三回あるけれど、
その最初の唄のなかに出てくる言葉。
「はえ」とは南風のことで、主に西日本に伝わる言葉。
沖縄や長崎の地名にもこの名が見える。
*ちなみに東風は「こち」、西風は「ならい」、北風は「あなじ」。
白波の行く手 ふさぐ桜島
嗚呼 我独り 国を憂う
大海に浮かぶ 小舟のごとし
南風(はえ)に願う 馳せる 薩摩隼人
聞きとりはKさんによるもの。いつもながら感謝感謝。
初日に初めて聞いた時でも、白波、桜島、薩摩隼人(さつまはやと)は
十分わかったけれど、「はえ」が「南風」というのは、
なじんでいないと字が浮かばないないだろう。
蠅(ハエ)などと思い込んだらわけが分らないもの。
彼女は高橋健司『空の名前』(角川書店)で確認したとのこと。(p.142)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=199999883600
私もこの本は持っていて、愛読書のひとつ。
【鳳凰木(ほうおうぼく)】
浅倉が水をやり続け、ついに一面の緋色の花をつけた大きな樹。
ラストシーン、その樹下での抱擁は美しく絵になっていた。
現実にはあの黒のフロックコートと白マフラーの洋装は、
全然南の島にそぐわぬ格好だから、さぞ暑いだろうけど。
鳳凰木はマメ目ジャケツイバラ科ホウオウボク属の熱帯性落葉高木。
初夏から秋にかけて、鮮やかな朱赤色の五弁花を咲かせ続け、
シダに似た細かな緑の葉との色の対比が美しい。
笠形の自然樹形でたいへん大きくなる樹だし、
大きな葉が多数出るので、樹下は夏でも涼しく憩の場になるという。
マメ科なので、花のあとに大きな莢がぶらさがり、
ねじくれるのはちょっと不気味だそうだけれど…
(多分サイカチみたいな莢なんだろうな)
http://www.kagiken.co.jp/new/kojimachi/hana-royal_poinciana_large.html
この花弁のあでやかさが、古代中国で、麟(りん)・亀・竜とともに
四瑞として尊ばれた想像上の霊鳥にたとえられたのだろうか。
この花弁がいっせいに降り注いだら、
地面は真っ赤なカーペットを敷きつめたようになるだろうな、と想像した。
【八重山ミンサー】
この場面で真鶴が締めているミンサー織りの帯は、
沖縄県八重山諸島の竹富島発祥で、
藍色の地に五つの升と四つの升で構成された絣(かすり)模様。
ミンサーとは「綿(ミン)で織られた幅の狭(サー)い帯」の意。
かつて通い婚の風習があった時代に、
女性から男性に対して贈ったのがこのミンサーだとか。
五つの升が「いつの」、四つの升が「世」を表わし、
「いつの世までも、あなたを愛します」との思いが込められている。
藍を何度も重ねて染めることから
「愛を重ねて」という意味も含まれるとも言われ、
まさにこのラブシーンにふさわしい。
写真は私の手持ちのミンサー帯。
可愛らしくて締めやすく、重宝している一本です。
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