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2010年11月04日00:17

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喫茶古城(『Mother』第4話ロケ地)

<第4話の喫茶店場面>
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カメラ、喫茶店の左側から右へパンして仕切りをくぐる。
仕切り脇の席に向かい合わせで座っている駿輔と奈緒。
(奈緒は後姿、駿輔は正面向き、背後の壁にステンドグラス)

駿輔「そんな顔で見ないでくださいよ。
これじゃどっちが犯罪者だか分らないな」
奈緒「…何が目的なんですか」(右横顔アップ。反対側の左目に眼帯)
駿輔(両手を組む)「俺ね、あなたのこと尊敬してるんですよ」
張りつめた奈緒の横顔。駿輔の声がかぶる。
「室蘭のあの家を取材してすぐに分りました。
(駿輔左横顔アップ)
虐待の現場や親の顔を何度も見たことがありますからね。
…もうひどいもんだ」

緊張したまま聞いている奈緒(右横顔アップ)
駿輔の声「警察や児童相談所が書類を回してるうちに
   子どもが死んだケースなんてそこらじゅうにある」
奈緒「…何が言いたいんですか」
駿輔「俺も想像したことがあるんですよ。
こんな絶望的な状況で子どもを救えるとしたら、
それは親元から逃がしてやることだ、って。

小学校の校庭で継美の相手をしている葉菜のインサート

だけど、そんなこと誰にも出来ない。
まあ、せいぜい頭の中の想像でとどめておくんです。
(聞いている奈緒の横顔にかぶせて)
ところが鈴原さん、あなたはそれを実行してしまった。

(駿輔、斜め正面からのバストショット)
まあ、今はまだ片田舎で起こった小さな事故に過ぎない。
しかし、あなたがしたことが明るみに出ればマスコミは一斉に食いつく。
道木怜南の写真が出回る。
(奈緒の斜め正面からのバストショットにかぶせて)
まああなたは刑務所に入ればそれで済むかもしれない。
(駿輔、斜め正面からのバストショット。奈緒を指さし)
だけどあの子は違うよ。
(動揺している奈緒に少しずつ寄るカメラ、その顔にかぶせて)
好奇の目に晒されて、まあいずれあの家に帰らされるか、
あるいは施設に入れられて、生涯… 」
奈緒(さえぎるように)「私にどうしろって言うんですか」
俊輔「……」
(ややあってにっと笑い、バッグから雑誌を取り出し、ページをめくる)
この人にちょっとお願いすればいいんだ。
(奈緒の顔、ズームアップ。そこにかぶる俊輔の声)
お母さん、一千万円用意して、って」

息を呑む奈緒。にっと笑っている俊輔。
俊輔が開いたページには、鈴原藤子の大きな写真と紹介記事が載っている。
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採録するために久しぶりに見返してみたけれど、
ここでの駿輔は本当につかみどころがなくて、笑顔が怖い。
やわらかい物言いで、ちょっと間を空けるのも絶妙のタイミング。
奈緒は警戒し、緊張してほとんど口を開かず、
彼が一方的にしゃべり続けているのだが、
カメラワークがまた実に細かいカットバックの畳みかけで、
追い詰めてゆく俊輔と、追い詰められる奈緒の表情に寄って行くものだから、
見ている方もだんだん息苦しくなってくるような。
しゃべっている俊輔の顔よりも、聴いている奈緒のリアクションを見せながら、
声だけを先に聞かせていくのも芸が細かい。
この回では、その前にレストランで継美のことも問い詰めているし、
藤吉駿輔の悪役度がピークの回だったなあ、とつくづく思う。
時間としてはそう長くないのに、緊迫感に満ちて強く印象付けられる場面。

<喫茶古城>
ロケ地ガイドによれば、この場面のロケ地は東上野の喫茶店「古城」。
http://loca.ash.jp/info/2010/d201004_mother.htm
→ロケ地049
・藤吉駿輔が鈴原奈緒に現金を要求した喫茶店
→喫茶古城(東京都台東区東上野3-39-10)
http://r.tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13016742/dtlmap/

一応場所は調べていて、上野駅にほど近いのは分っていたのだが、
この店にだけはすぐ行ってみたという知り合いたちを尻目に、
私のほうは苦労しながら、坂道を登ったり線路沿いを歩いたりばかりしていた。
大磯やら三浦半島まで歩き倒した後、一段落した気持ちになり、
まあ楽なところへも行っておくか、と友人を誘って足を運んだのは9月25日。
日曜日はお休みのようだから、ゆっくり行くには土曜日が良いと思って。

上野駅の中央改札から浅草口を出て、昭和通りを横切り浅草通りへ。
道の右側を行き、二つ目の路地となる上野警察署前の信号の角を右へ入ると、
すぐ右手に「古城」の看板が見える。お店は階段を下りた地下一階。
降りるところですでに頭上のシャンデリアと、
行く手に見える白馬の騎士のステンドグラスに目を奪われるが、
降り切った右手に広がるお店は、それは見事なものだった。

まず目に付くのは奥に広がっているステンドグラス。
宮殿の舞踏会を描いたと言うそのバルコニーや階段や窓の絵が、
内側からの照明に照らされて明るく輝き、まるで外光が降り注いでいるよう。
そのすぐ前にはエレクトーンが置かれ、柱のそばには女性の白い彫像もある。
天井には何基ものシャンデリア。
壁につけられたランプもデザインが古風でゆかしい感じ。
床には「KOJYO」という文字の入ったアールデコ調の模様あり。
低めの仕切り壁(かたちの違う大きな平たい石を並べたもの)があって、
テーブル席は大きく左手と右手に分かれている。
左手のほうは二つ並んだ椅子が多く、席数も多くスペースが広い。
右手のほうは、壁際に大きめのテーブルで四人掛けの席があり、
仕切り壁の石の傍に、奈緒と俊輔の腰掛けていた二人で向き合うかたちの席。
彼らの座っていたのは、奥のステンドグラスのほうから数えると3つめの卓。
厨房カウンターからは2つ目である。

そこはさすがに荷物を置いてゆっくり座るには狭いので、
そちらが見える大きい壁際のほうの席に座って、じっくり眺めてみた。
椅子の背もたれの上に白いレースがかかっているのが、
いかにも古風で昔の客車を思い出させる。
手すりと足の部分は籐椅子のようで、ゆったりした雰囲気。
すぐ脇の仕切り壁の石は、高さもまちまちでユニーク。
駿輔の側の石は縦線の刻み、奈緒の側は横線の刻みが入っていて、
二人の横顔のアップのたびに、そのタテとヨコの線が背景いっぱいに映り、
絵面的にも対照的。面白い使い方をしたものだと思う。

メニューを見ると、これがまたスパゲティナポリタンだの、
ホットケーキセットだの、ミルクセーキだのなつかしいものがいっぱい。
あ、クリームソーダがある!と思わず注文してしまった(ミーハー)。
ここでの場面には出てこなかったけれど、
ちいさな継美ちゃんを思い出しながら飲む。
逆に、彼女がそれを頼んでいたレストラン場面のロケにつかわれた、
「マルデナポリ」はイタリアンレストランだからクリームソーダなどない。
こういう虚実の違いも分ってしまうと不思議な気分。

<さまざまなドラマロケ>
メニューの後ろのほうのページには、
「古城」を紹介した新聞記事コピーがファイルしてあった。
一部引用させていただく。
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[枝川公一の東京ストーリー]

先日、女優の吉永小百合さんが、店に来た。映画の撮影のためである。
亡くなった父親が、大のファン。さっそくお墓参りに行き、報告した。
JR上野駅前の脇道にある喫茶店「古城」。
金メッキの取っ手を押してドアを入り、地下に下りる。
一基を職人6人で組みたてたというシャンデリア、
宮廷の舞踏会を描いたステンドグラス。床のガラス絵。
さらに大理石の板が、荒削りのままで店内の造作にふんだんに使われている。
すべて、父、松井省三のアイデアである。
世界美術全集を繰り、発想が気に入るとすぐ取り入れ、
地下宮殿のように豪華な「純喫茶」に仕立て上げた。
「1万円札を惜しげもなく張り付けているようだと、父は笑われた。
でも、その気概がやっと報われた。吉永さん、ありがとう」と、
娘で二代目の金村京子さん。
開店は東京五輪の前の年1963年。金村さんは、当初から店を手伝った。
当時は、若い男女の語らいの場。
とりわけ、店の中央にある、横並びふたりがけの8席は、
人気の特別席「ロマンスシート」。
カップルはお互いの手元をコートで隠したり、
ウエートレスが通りかかると握った手をスッと離したり。
昔の恋人たちは、芸が細かい。いま、そこはもっぱら一人客用。
本を読んだり、考え込んだり。
… (後略) …

読売新聞 2008年7月17日(木)34面
”上野駅前の「純喫茶」娘は二代目〜父の地下宮殿 大きさ実感”

*余談だが、コピーに新聞名も日付もはいってなかったので、
縮刷版を繰って年月日を確認するまで、ちょっと手間取ってしまった。
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この、吉永小百合さんの映画の撮影というのは、
2008年の映画『まぼろしの邪馬台国』だそうな。
店内の、入口付近には松雪泰子さんのサイン色紙の他にも、
『特上カバチ!!』の堀北真希ちゃんの色紙も並んでいたし、
『特命係長 只野仁』で高橋克典さんが来訪したという記事も提示してある。
雰囲気のあるレトロなお店だからか、撮影は結構多いんだなあ。

松雪さんの色紙には「mother」と書いてあるけれど、
サインの日付けは放映後の6月27日。
お店のかたに伺ったところ、やはり撮影時ではなく、
あとで書いて下さったものだとか。

ともあれ、この店のなつかしい雰囲気と、
ゆったりした居心地の良さにすっかりファンになり、
その後10月16日に再訪してみたら、今度は店内の柱にドラマポスター出現!
鈴木京香さん主演のNHK火曜ドラマ『セカンドバージン』だった。
お店の方の手になる御案内も。
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営業の御案内

NHK(総合)毎週火曜午後10:00から 連続10回
BS hi 毎週金曜日6:00から

鈴木京香主演のセカンドバージンが古城で撮影され(10月13日)
11月23日に放映が予定していますのでご案内申し上げます。
 敬白     喫茶古城
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ということで、撮影は私が再訪した3日前で、
放映は11月23日(祝日)の予定。
このドラマは蜷川芝居で活躍中の若手・長谷川博己くんが、
京香さんの若い恋人役で出ていて、
ちょっと気にはなっているけど、結局見ていない。
古城の場面はそう長くはないのだろうけど、
この日は場面確認をしてみようかな。
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