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2010年10月10日12:02

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瞳の奥の秘密

9月22日、TOHOシネマズ シャンテにて鑑賞。
(この日はレディースデイなので休みを取って3本見た。その2本目)
http://www.hitomi-himitsu.jp/

沢木耕太郎さんによる月一度の映画評(朝日新聞火曜日朝刊)・
『銀の森へ』は、映画選びの指標として常に信頼していて、
8月にこの作品が取り上げられた時から、見るのを楽しみにしていた。
本年度のアカデミー賞で最優秀外国語映画賞を受賞しているし、
これも好きなエッセイスト中野翠さんが”南北みたいに面白い”と
月刊『演劇界』に書いてらっしゃるのだから、
間違いないだろうと思った通り、期待を裏切らない作品。
すでに言われているように、久々に映画らしい映画を見た気がする。

重要な核となっているのは25年前の残酷な犯罪。
新婚まもない美しい若妻が、暴行されたうえに惨殺される。
それを追う刑事ベンハミンと相棒のパブロ、
二人の上司のイレーネ、新妻を殺された悲劇のモラレス、
殺人者と腐敗した警部などが交錯する人間ドラマ。
現在と過去の時間が、行きつ戻りつして進行する。

暴行殺人と犯人への怨讐は重要なテーマなだけに、
面白いという感想は不謹慎にも思えるけれど、不思議と後味は悪くない。
もちろん犯罪に対する怒りや、登場人物たちの抱える痛みを感じながらも、
人間が、人間らしい感情で動き、泣き、叫び、笑っている充実感。
発端となる事件の、被害者女性の遺体は、いたましくも美しくて、
どこか受難者を描いた宗教画を思わせる。
たまたま現場確認に派遣されたベンハミンの脳裏に、
彼女の姿が焼き付いてしまうのもよく分る。
西洋名画には、宗教画の名のもとに、
傷つけられた裸体の絵が多い気がする。

事件への義憤・正義感とともに、
美しい女性上司・イレーネへの思いの純情さを見せる、
主人公のベンハミンの人柄にとても好感を持った。
イレーネもただ美しいというのではなく、人間的に幅のある素敵な女性。
この作品の後味の良さは、
彼らの秘めたる恋のほうが主眼になっているからこそ。

ベンハミン役のリカルド・ダリンもイレーネ役のソレダ・ビジャミルも、
本国アルゼンチンでは有名な俳優のようだが、
こちらとしては未知なだけに新鮮。
(二人とも過去の若い時代より壮年期のほうがしっくりしているけれど)
アル中気味で、かかってくる電話は皆断ってしまう同僚のパブロ役・
ギレルモ・フランチェラの、ウッディ・アレンみたいなとぼけた味わい。
妻を殺され、犯人への執念を見せるモラレス役のパブロ・ラゴも良かった。
彼の行為には説得力があり、納得させられてしまう。

大観衆で湧くサッカー競技場で犯人を探していくところもどきどきしたし、
あの"A"の打てないタイプライターが、こういうオチにつながるとは!
思わぬ展開にはらはらどきどきしながら、
どうなるどうなる?と物語のゆくえに身を委ねるという映画の醍醐味。
スペイン語の響き、異国の匂い、物語の落とし所などをたっぷり堪能した。
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