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2010年08月04日00:54

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借りぐらしのアリエッティ

8月1日、池袋HUMAXにて鑑賞。
http://www.karigurashi.jp/index.html

<小人たちの世界>
今回の作品は楽しみにしていた。
原作の『床下の小人たち』(ノートン著)は昔読んだことがあるし、
日本の小人ファンタジー『誰も知らない小さな国』(佐藤さとる著)も
小さい頃から大好きで、シリーズはみんな持っている。
少し前に映画館で観た予告編では、
緑の葉の中を移動するアリエッティの動きが素晴らしくシャープで、
これは良さそうだなあ、と期待がふくらんだ。
ジブリ作品といえども、宮崎駿さんの企画・脚本といえども、
映画はやはり監督の演出で決まるのだから、
今回の米林監督は期待できそうだと思ったのだ。
(『ゲド戦記』なんか予告見ただけで見る気をなくしたものね)
期待を越えて気持ち良く心を揺さぶられる作品だった。

<美術の魅力>
なんといってもジブリ作品の独壇場と言える
背景美術の描き込みがすごい!
説明なんかされなくても、あれは赤紫蘇だ、これは露草だと分る。
アリエッティがのぼってゆく、瓦にびっしりとついた緑の葉は、
夏蔦ではなくキヅタ(冬蔦)だと思う。
彼女がきびきびとそれらをかきわけ、
波間を縫うようにすすんでゆくのを見るのは、胸がすくようだ。

アリエッティの家もなんと魅力的なんだろう!
こまごまと飾られた部屋の愛らしさといったらない。
ポットやコップにいたるまで、すべて行き届いている細やかさ。
母親のホミリーの作る料理はさぞ美味しいだろうと思わせる料理道具。
海の写真が貼られた窓。飾られた小さな花。素敵な暮らしだ。

人間たちの住居へ「借り(狩り)」に行く時の通路、
ねじくぎやホッチキスの針などで作られた階段や、
上にのぼるための鉤付きのロープ、テープなどが確かな実感を持っていて、
本当にはらはらどきどきの大冒険に、手に汗にぎってしまう。

翔がベッドの上からアリエッティを見るところで、
ティッシュペーパー越しの彼女のシルエットがすうっと動いたり、
窓越しに見る時も、ツタ越しにシルエットが見えているような、
影絵のイメージがとても良かった。
こういうディティールを見ているだけで飽きない。

<違う世界の少年と少女>
アリエッティは少々向こうみずだけれど、度胸の良い清々しい少女。
行くなと警告されながらも、外に出ることをやめない彼女の雄姿は、
腐海に入っては何かしら持ってくるナウシカの姿を思い出させた。
拾ったまち針を剣のようにしゃっと腰に刺す凛々しさ。
でも女の子らしく服にも髪にも気を配る彼女はとてもチャーミング。

一方、ほんのひとときこの家にやってきて、
アリエッティを見つける少年・翔の人物像には、ぐっとひきこまれた。
生まれつき心臓が弱く、その手術を控えて静かにしているしかない少年。
いつもほとんど横たわって本を繙き、回りをみつめている、
ある種の諦観を秘めたその瞳だからこそ、彼女の姿を捉えたのかもしれない。

基本的に、かなり原作に忠実な人物設定のなかで、
翔だけはもっと大人びたイメージに変わっている。
12歳とは思えないような思慮深い聡明さ(原作の少年は9歳でまだガキっぽい)。
14歳のアリエッティも太刀打ちできないような知識の深さ。
「君たちは滅びゆく種族なんだ」という台詞にはっとする。
命のはかなさに敏感な彼だからこその言葉のような気がする。

はっきり言って、翔くんにはときめいてしまった。
おとなしくて賢くて、おまけに両親の愛情にも薄い薄倖の少年。
まるで昔の、肺結核か何かで転地療養中の貴公子のよう。
その彼がアリエッティのために走ったりするところなぞ、はらはらした。
声を演った神木降之介くんの透明感がすばらしい。
キャラクターデザインは、神木くんの顔もモデルにしているそうだ。

アリエッティに名前を尋ねて、
「アリエッティ…。いい名前だね」というところや、
初めて全身を翔の前にさらしたアリエッティを見て
「綺麗だね」というところなど、アリエッティがぱっと赤らむのも分る。
素直な台詞だけに、かえって殺し文句になっているなあ、と微笑ましい。

最初は警戒していたアリエッティも、次第に信頼し、心を寄せ、
そんな中で別れなければならないのは切ない。
違う種族同士。恋と言うには淡い思いだけれど、この場面には心震えた。
それでも何か爽やかな、これからそれぞれに生きてゆくであろう二人の、
希望を感じさせるラストだったのが嬉しい。

<回りの人々>
いつもながらきっちりと描かれた回りの人たちの動きも声も素晴らしい。
・竹下景子さんのお祖母さんは品があって、
『魔女の宅急便』の老婦人を演じた加藤治子さんを彷彿とさせた。

・お手伝いのハルさんは、雰囲気自体が樹木希林さんそのもの。
彼女がホミリーを捕まえるところでは、抵抗できない者に対しての、
絶対的な暴力を感じてぞっとした。

・そのホミリー役の大竹しのぶさんの声、可愛い可愛い♪
心配性ではあるけれど、そんなにめそめそしてないのが良かった。

・お父さんのポッドは三浦友和さん。
寡黙な父だけに台詞はそう多くないけれど、とても落ち着いていて
頼もしい父親の存在感はゆるぎなかった。

・野生児のようなスピラーは藤原竜也くん。
原作だと『川を下る小人たち』に出てくるキャラだけれど、
あまりに口数が少ないこの役が竜也くんとは贅沢な。
見た目インディアンのようなこの少年は、
宮崎アニメ『未来少年コナン』におけるジムシィですね。
もともとのイメージは『トム・ソーヤの冒険』のハックルベリー・フィン。
女の子に慣れていなくて、怒ったような顔で物を突き出すのは
『トトロ』のカンタくん並み。
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