ドラマは終わりを迎えたけれど、気持ちはまだあの世界を漂っている。
行けるところには行っておこう、と第10話に登場した法廷ロケ地へ（7月3日）。
http://loca.ash.jp/info/2010/d201004_mother.htm
→ロケ地091
奈緒が被告人として中央の証言台に立ち、
傍聴席最前列で藤子と藤吉駿輔が見守るあの法廷は、
桐蔭学園メモリアルアカデミウム
（横浜市青葉区鉄町[くろがねちょう]1614）内の、
旧横浜地方裁判所陪審法廷を移設復元したもの。
http://www.cc.toin.ac.jp/MA/main/tenji/jury/tenji.htm
（見学時間 月〜土、10：30〜17：30 入館料￥500）
もともとは昭和5年に横浜の日本大通りに建てられ、
日本初の陪審法廷として使われたという（昭和5年〜18年）。
戦後はBC級戦犯を裁く軍事法廷（昭和20年〜24年）として、
さらに通常の民事・刑事裁判を行う特号法廷（昭和25年〜平成10年）として
使用されたのち解体され、ここに移築復元されたとのこと。
横浜とはいっても、港とは遠く離れた緑濃い丘陵地帯。
最寄駅は東急田園都市線の市が尾駅か青葉台駅。
もしくは小田急線の柿生駅。
いずれも「桐蔭学園前」行きのバスが出ている。
私は渋谷から田園都市線で市が尾に向かったが、
バス乗車時間も含め学園着までかれこれ1時間かかった。
バス停を下りると、敷地は広いがメモリアルアカデミウムはすぐそば。
少し小高いあたりには、鉄町の鎮守さまである鐵（くろがね）神社も見える。
建物に入って受付で入館料を払い、入口の地下一階へ。
知らなかったのだが、たまたまオープンキャンパスの日なので、
その催しの一環でお芝居仕立ての模擬裁判がここで行われるという。
http://www.cc.toin.ac.jp/sc/mogisaiban/
順路表示にしたがって奥へと進む。
途中、右手に展示などに使われるソフォスホール、
左手にドイツの法学者サヴィニーについて学べるサヴィニー文庫などもあり。
やがて扉の上に半円形のステンドグラスが見え、
立派な白い石の階段が左右対称に曲線を描いている吹き抜けに出る。
これも法廷と共に移設された正面階段だそうだ。
昔の建物のデザインは優美な丸みがあって美しい。
上がって正面に見える重厚な扉は、裁判官席に通ずる入口。
見学者は、ぐるっと右側に回りこんで、後ろ側の扉から入る。
中ではすでに法廷劇が始まっていて、滔々と説明する声も聞える。
入りやすいよう扉は開け放たれていたけれど、
お邪魔にならぬようそおっと入室すると、見覚えのある長椅子。
落ち着いた茶色の革張り。
現代では傍聴席に長椅子型はあまり見られないとか。
ここに藤吉と藤子も座ったんだなあ、とちょっと革を撫でてみたり。
床は当時流行ったという深緑色のリノリュウム張り。
色味があるのはこの緑だけで、あとは白と焦茶だけのモノトーン。
漆喰の白、黒光りするような木製の柵、窓の木枠や柱の茶など、
どれも端正で品が良い。
画面では天井部分まで写らなかったが、
上から吊るされた照明も、シンプルながら趣があって素敵だった。
広さ約200m2、天井約5.4mのこの法廷は、当時東洋随一と言われたとか。
やはり風格があって絵になるなあ。
現代風の法廷でこの雰囲気を出すのは無理だろう。
係のかたが、今行われている模擬裁判の簡単なシナリオを渡してくれた。
「賃金請求事件 放火被告事件�◆廚函�
もうひとつ「セレン殺人等被告事件」という脚本。
開廷表に裁判長、裁判官、被告人の名前なども書いてある。
セレンて何なんだろう、とあらすじを読んでみたら、
これを車内にばら撒いて無差別に殺害した教団の信者の裁判とのことで、
オウム真理教の地下鉄サリン事件を模しているらしい。
うーん、またしてもか…
それはともかく、残念なことにこの室内は撮影禁止となっている。
お芝居のひとたちが記録のためか、
フラッシュを焚いてぱしゃぱしゃ撮りまくっているのがうらやましい。
仕方ないのでメモリアルアカデミウムの小さなパンフレットに載っている
法廷の写真を、帰宅してから携帯カメラで撮ってみた。
ドラマ画面では裁判官席側からの視点で撮られているので、
本当はそこから写した写真も欲しいところだけれど、
パンフレットの写真は逆の傍聴席側から写されたこの一枚のみ。
模擬裁判はまだ続いているが、入ってきた扉から出て、
順路通り、法廷をかこむ廊下をぐるりと一巡してみた。
内部は茶色の窓の木枠は、外側は白く塗りなおされている。
当時の陪審員が被告と顔を合わさないでここにくるための、
小さな別階段も足元に展示されていた。
出入り口の扉は裁判員席側と傍聴席側だけではなく、
左右の壁にそれぞれいくつも付けられていて、
廊下側から見てもその焦茶色の重厚な扉は存在感があった。
それにしてもロケ地を選ぶスタッフの選択眼は見事だと思う。
どのようにして決定するのか、インタビューしたいくらいだ。
ログインしてコメントを確認・投稿する