奈緒は駿輔に継美のノートの説明をしている途中で、
それが以前見たような「好きなものノート」ではなく、
かえりみちの目印を記したものだと思い至る。
「継美は家に帰る時の風景や道を思い出してた。
迷わないように目印を思い出してたの。
継美は今、室蘭に帰ろうとしてる。
あの子が心配してたのは自分のことじゃなかった。
私のことだった」
「おかあさん、つぐみはれなにもどるよ」
この言葉のあと挿入されるのは、
たくさんの高層ビルが見える階段をあがってゆく継美の姿。
ここは説明なしでも一目でわかった。新宿都心部の高層ビル街だ。
何よりの目印になっているのは、階段を上る彼女の行く手にそびえたつ、
楕円形で、白い網目模様にくるまれたようなひときわ目立つビル。
＜東京モード学園＞
これは「東京モード学園」（新宿区西新宿1-7-3）の建物。
http://www.mode.ac.jp/tokyo/facilities/index.html
2008年11月に完成し、本格始動したのは2009年というから、
まだ新しいランドマークだけれど、建設途中からこの姿は際立っていた。
正式名称は繭をイメージしたデザインから「コクーンタワー」とのこと。
このビルは新宿西口を出ると、びっくりするほど目の前にあるが、
画面に映っているのは、都庁に近いあたりから捉えた姿。
＜新宿住友ビル＞
ロケ地ガイドによれば、彼女の歩く階段は新宿住友ビルの脇。
http://loca.ash.jp/info/2010/d201004_mother.htm
→ロケ地060
この西新宿の高層ビル街の道は二層構造になっていて、
西口真ん前の広い中央通りをまっすぐ行くと、
途中から、ビルに入るには一段下の通りに下りなければならないことに気付く。
中央通りと交差する議事堂通りから、階段を下りて下の層へ。
（最初から西口地下の道を行けばそのまま行けるけれど）
住友ビルは多角形型の52階建てのビル（西新宿2-6-1）。
http://www.gnavi.co.jp/sumitomobldg/access.html
継美のかえりみち目印のひとつ「52かいだてのビル」とはまさにここ。
ビル前にはちょうど地下鉄大江戸線「都庁前駅」への入口があり、
そこに通じる階段からあおるように撮ったのが画面のアングル。
継美がのぼったその階段を、後に奈緒さんも彼女を探して駆け上がる。
ほぼ同じような場所から、私も撮影してみた。
＜28番バス停＞
「28ばん」という目印は、駅西口近くの京王高速バスの降車専用のバス停。
（ロケ地061）
中央通りに面した三菱東京UFJ銀行の前に位置する。
http://www.mapion.co.jp/c/f?uc=4&ino=BA592421&pg=1&grp=bk_mufg
地図をご覧になればお分かりのように、中央通りをはさんで向かい側には
あの東京モード学園コクーンタワーがあるので、
継美がバス停を見上げる場面にも、あのビルの模様が見える。
少し遅れて、駿輔の車で奈緒がこのバス停に駆けつける時には、
駅側の小田急や京王デパートも背景に映っている。
＜歩道橋＞
続いて、一人で歩いていた継美が婦人警官に保護され、
必死で探していた奈緒が、それを目にとめて駆け上がる歩道橋は、
「ハイアットエージェンシー東京」前の歩道橋。（ロケ地062）
http://www.hyattregencytokyo.com/access/index.html
（西新宿2-7-2）
この歩道橋は北歩道橋と呼ばれていて、公園通りを跨ぎ、
ハイアット側と向かいの「新宿中央公園」（西新宿2-11）を結んでいる。
http://parkandcats.hp.infoseek.co.jp/sinzyukutyuoukouen.html
橋幅は広々ゆったり。よく登場する世田谷区のゆるぎ橋の二倍はありそう。
「継美！」と呼びかけた奈緒に、とっさに返事が出来ないで、
ややあってから、「おかあ…さん……。…おかあさぁぁぁん！！」
と駆け寄る継美の場面はここで撮影された。
画面を見ると、切り返しの奈緒の顔の背後に、
ハイアットホテルのHYATTのロゴの、TTの部分だけが見てとれる。
そしてしっかり抱き合う二人の姿を、植え込みの陰から撮影する駿輔。
彼の撮影場所も、この歩道橋につづく、ハイアットホテル寄りの場所だ。
画面手前に見えているのは、歩道橋の手すりの一部。
このあたりは昔と一変して、ビルばかりにょきにょき林立する
架空都市のようになってしまった。
そんななかを一人歩んでゆくおさない継美ちゃんが、
いかにも小さくいとけなく、見ていて本当にはらはらする。
この新宿場面は、サスペンス調の追跡のハイライトだったと思う。
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