涙なしには見られなかった『Mother』第9話。
脚本の台詞にも、周到な伏線にも、
びしっと気合いの入った演出にも改めてうなるばかり。
「ああ天気雨、きつねの嫁入り」
「お日様が照ってるのに雨降ってる時は、
狐が結婚式してるの」
昔話をきかせるような、うっかりさんのおだやかな声と
愛らしい継美ちゃんの声で歌われる「あめふりくまのこ」が、
奈緒の必死の逃走場面にかぶさるのは、なんとも言えない効果。
見返して、冒頭に近い場面で、
継美ちゃんがうっかりさんと嬉しげに手をつないで
橋(ゆずり橋またも登場!)を渡る場面で、
すでに歌われていることに改めて気付いた。
♪ おやまに あめがふりました
あとから あとから ふってきて
ちょろちょろ おがわができました
という「あめふりくまのこ」はなじみ深い童謡。
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/00_songs.html
→あめふりくまのこ
詞はすべてひらがな。
1961年(昭和36年)に作詞され、
1962年(昭和37年)、NHK『おかあさんといっしょ』の
前身番組である『うたのえほん』で放送されたとのこと。
光村図書の小学校国語教科書に掲載されたりして、
広く親しまれてきたらしい。
私自身も小さい頃から聴き覚えていて、とてもなつかしい。
作曲者の湯山昭さんは、
合唱曲(『コタンの歌』など)もいろいろ手掛けられていて、
もと合唱部員としてお名前はよく知っていたのだが、
作詞の鶴見正夫さんのことは存じ上げず、
今回ちょっと調べてみてびっくりしてしまった。
旧村上藩の士族のお生まれで、生まれてすぐお父様とは死別。
そしてお母様は彼を置いて再婚なさったため、
幼い頃に生き別れとなってしまったという経歴は、
否応なしに『Mother』を連想させられてしまう。
「母よ わかれたひとよ」と呼びかけている
『母に』という詩は切ない。
その一部の引用。
------------------------------
なにしろ ぼくはおさなくて
おぼえているのはたったひとつ
わけもわからず 悲しくなって
あたりいちめん そらおそろしくて
小さな心はふるえていた
あなたは 何もいわなかった
足ばやに ぼくから去った
------------------------------
幼いこころに焼きついた思いは、生涯忘れられないだろう。
母に置き去りにされた奈緒。
そして今また継美も。
本当に細かい細部までこころに響いて、
いまだ震えやまない。
ログインしてコメントを確認・投稿する