mixiユーザー(id:949383)

2010年06月10日01:13

111 view

パーマネント野ばら

6月1日、シネセゾン渋谷にて鑑賞。
http://www.nobara.jp/

観る前から、これは多分好きな世界だと思っていた通り、
いろんなところが心の琴線に触れて、愛おしい作品。
西原理恵子の原作は未読。他の作品も読んではいないのだが、
映画化された『ぼくんち』だけは観たことがある。

高知の海辺の小さな町。
主人公は、離婚して小さい娘を連れて出戻ってきたなおこ。
彼女の母・まさ子は小さなパーマ屋「野ばら」を営んでいて、
そこに集まる女たちは皆あけっぴろげに男と女のあれこれを語る。
まさ子も含め、あまりにあけすけな常連客のオバチャンたちに囲まれ、
控え目に店を手伝うなおこは、おとなしくて未だ少女っぽい。
なおこ役の菅野美穂がインタビューで語っていた通り、
からっとしたラテン気質の女たちの町のなかで、
彼女だけ東北人のような屈託と湿り気のある感じ。

なおこの秘めたる恋を軸に、回りのひとたちが織りなす人間模様。
なりふりかまわずひたむきな女たちや、
なんとなくさびれた田舎町の風情など(「野ばら」もいかにも垢ぬけない)、
それだけでも好感が持てる素材なのだけれど、
リアルなようでこの町は、ふっと別の世界に通じているような寓話的場所。
最後ぐうっと思わぬ方向へ導かれ、目からうろこが落ちるような思いをして、
恥ずかしいほどぽろぽろ涙がこぼれた。
健気で儚げな主人公のこころのうちが切なすぎて。
ひとは皆不完全で、それでも生きていかねばならないことが胸にこたえて。

菅野美穂は好きな女優さん。
私は基本的にTVドラマは見ないほうなので、
彼女のことはスクリーン映えのするひとだという印象が強い。
『落下する夕方』(1998)『化粧師』(2002)『Dolls』(2002)など、
いずれも大好きだった。
この作品でも、彼女の清潔感と一途な雰囲気が遺憾なく発揮されていて、
心打たれた。華奢で、ナイーブで、健気で。
波立つこころを抑えきれず、揺れ動いている瞳の哀しさといったらなかった。

姐御肌のみっちゃん役・小池栄子。
いじめられっ子タイプのともちゃん役・池脇千鶴。
対照的な幼馴染を演じた二人がこれまた惚れ惚れするほど素晴らしい。

みっちゃんはスナックのママとして派手な格好をしているけれど、
ちょっとイイ男の亭主は金ばかりせぴって
他の女をくどいているヒモみたいな奴。(加藤虎ノ介好演。似合い過ぎ!)
惚れた男の浮気に大声で泣き、とっくみあいの喧嘩をしても、
結局はぞっこんの可愛い女。しかし哀しい女。
綺麗な縦ロールふうに仕上がった髪に「さすが野ばらさんやー」と満足し、
「釣りはいらんき!」と札をぱーんと置くのは滅法かっこよかった。
その正直ぶりと派手な化粧や衣装に、ちょっとヘドウィグを思い出してみたり。

やさしいともちゃんのほうは、不幸の神が取りついているのかというくらい、
出あう男という男から暴力をふるわれ、悲惨きわまりない。
童顔で可愛らしい彼女は、相変わらず思い切りのよい演技で、
なぐられたり倒れたりするアクションも半端ではない。
そうだそうだ、体当たりでリアルなひとだったようなあ、と
『ジョゼと虎と魚たち』の名演技を思い出した。

なおこの恋人・カシマを演ずる江口洋介の清潔感、やさしさも尋常ではない。
彼女の胸のどきどきが伝わってくるほどの、素敵で理想的な彼。
その意味が、最後で明らかになるのは衝撃だった。

”「ずっと好き」はどこにもないから 私は毎日、小さな嘘をつく”
これがこの映画のキャッチコピー。
思えば元々「パーマネント」とは永遠のこと。
その永遠はない、ということが分っていながら、
「パーマネント野ばら」と題されているのは、逆説的と言えるかもしれない。

「ねえ、愛って永遠?」
「永遠じゃないわ、でも…」(by ヘドウィグ)
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2010年06月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930   

最近の日記

もっと見る