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2010年06月08日00:30

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川の底からこんにちは

6月1日、ユーロスペースにて鑑賞。
http://kawasoko.com/

キネマ旬報の満島ひかり特集を読んだ時から観るつもりではいたのだが、
色々タイミングが合わず、公開から一ヶ月もたってしまった。
でも意図的に予告情報はシャットアウトしていたので、
どの映像も先入観なしにまっさら状態で見られて良かった。

正直言って、始まってしばらくは、
職場からも恋人からも故郷の人からもひどい扱いを受けていながら、
「仕方ないですよね」「どうせ私なんか中の下ですから」と
異をとなえず許容してしまうヒロイン・佐和子が自虐的に思え、
彼女を取り巻く俗っ気たっぷりの泥臭い世界にも少々引いてしまって、
いささか居心地が悪かった。
でも倒れた父のために嫌々ながら帰郷し、
どん詰まりの状況に開き直った彼女が、
なりふり構わず父のしじみ工場を立て直すあたりからの勢いはすごかった!
やけくそめいた加速度的なエネルギーに圧倒され、
気付いたら私は泣いていた。自分でもぴっくり。

まあそのちょっと前、故郷へ帰ってからの佐和子を見直してはいたのだ。
ボットン便所からくみ取った糞尿を、淡々と畑に撒いている姿には、
「おっ?!」と思った。
勝手に彼女に付いてきたバツイチこぶ付き自称エコロジー派の彼が、
鼻をつまんで近寄れないのに「エコエコっていうんだったらあんたも撒けば」
と言ってのけるのは小気味よかった。
子どもの頃からやってたから、と気負いもなく言うのに感心。
この子は愚痴を言わず引き受けるんだ。自分でやるんだ。
人のせいにばっかりして自分は動かない人間ではないんだ。
子連れで勝手にやってきたあげく、
我が子を置き去りに他の女と逃げる彼は最低だけど、
置いていかれたその子の面倒もそのまま自然体で引き受ける。
そんな彼女だからこそ一番追い込まれた時に、
あの起死回生の頑張りが出てくるのだろう。

社歌のくだりはずいぶんコミカルにつくってあるから、
予告編でこれだけ見たら、印象はちょっと違うかもしれないけれど、
私は存外この作品を真面目にストレートに受け止めてしまった。
何よりもそれは、私が田舎の子だったからだと思う。
くみ取りがいかに大変かとか(と言っても私はそれこそ母がやるのを見てただけ)、
田舎のどこにも行けないような閉塞感だとか、回りの目だとか、
そういうものを肌で知っているから、彼女への思い入れが強まってゆく。
お父さんはもう亡くなることが分っている末期状態だし、
ひとりで奮闘する姿に、ついつい自分の体験を重ねてしまう。
親子の情愛に、思わずほろり。
健気に喪主をつとめながらも、舞い戻ってきた彼に
骨壷の骨をばんばんぶつけるところではもう泣き笑い。
よく頑張った。もっともっとやっつけちゃっていいよ。
それにつけても満島ひかり、素晴らしい!

最初は憎々しかった工場のおばちゃんたちが、最後にはほんとに良い味わい。
「抱いてみろ」が後の「抱いてやろうか」に効いてくるし、
「私は違う。○○さんも違う。でもあとはそうだ」という台詞も、
最後に繰り返されることでおかしみが増す。
人間、捨てたもんじゃないという気分にさせてくれる作品だった。
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