昭和27年（1952年）
*東大ポポロ事件（私服警官を学生が摘発）
もく星号墜落事故
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・波子、家族に阿野を紹介する
画面真ん中に机
画面左手前に阿野（グレーのボタンシャツ、ベージュのズボン、茶ベルト）
隣に波子（ピンクのブラウス、茶系のチェックスカート）
机をはさんで右手に時次郎が対峙 隣はマキ
囲むように控える八女家の面々
俯瞰気味のカメラ、少し下がってくる
時次郎「阿野さんは、作家ば、なさっとられるとですか」（緊張気味）
阿野「そうですよ」（真正面から見ている 悪びれない）
時次郎「ああ…小説ば、お書きになるとですか」
阿野「ええ、これまで短いものから長いものまでざっと百五十」
波子、ちらっと阿野を見て、落ち着いた様子で湯呑を手に取る
時次郎「はあーそげん書かれたとですか」
阿野「書いたとは言ってません。考えただけです」
時次郎「ああー」
波子（皆を見渡して）「他に質問は？」
阿野、ちょっとうつむく
マリア（手を挙げ）「あのー、どんな本を書くとですか」
阿野（遠目のマリアをまっすぐ見て）
「どんな本…？もちろん四角い本だよ！」（ふっと髪を振る）
噴き出しかける宗男
房子（ちょっと手を挙げ）「…あ、書く時はどこで書くんですか」
阿野「いい質問だ。だいたい指の先で書く」
（いったん顔を正面に戻し、くいっと房子を見て答える）
一同「……」
宗男「この人は面白か〜！」
マキ（政子に耳打ちして）「波子は昔から変わり者やったけども、
選んだ男もやーっぱり変わっとるねー」
頷く政子
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昭和28年（1953年）吉田内閣「バカヤロー解散」
・一之瀬ゆかり、八女家へ
時次郎にネクタイのプレゼントを渡す
皆（10人）で食事
和気あいあいとした中、阿野一人黙々と食べている
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・大晦日の八女家
N （ナレーション）
「その年の暮れ、初めて紅白歌合戦がテレビで中継された」
註）「紅白歌合戦」の第一回目〜二回目はラジオ放送、
第三回目は1953年の正月に行われ、
同じ年の大晦日に行われた第四回目が、
初めてTV中継された紅白となった
大晦日に初めてテレビ中継された紅白歌合戦（1953年12月）を見ながら、
年越しそばをすする八女家一同（阿野を含め9人）
阿野「大晦日に撞く除夜の鐘は、
あれはいくつ叩くか知っていますか、お母さん」
マキ「百八つじゃないとですか？」
はたと見る阿野（赤半纏、下ラクダシャツ、かなり乱れ髪）
阿野（箸にそばをはさんだまま）
「普通はそう考えますよね。しかし実際は百七つなんですよ」（そばをすする）
波子「本当に？」
阿野「最後の一つは、年が明けてから撞く」
一同「……」
阿野「だから言ったじゃないですか。”大晦日”に叩くのはいくつか？って。
まあ、軽いひっかけですけどね」
マキ「……」（憮然とした顔）
マリア「なんか、ええもんですね。
こげん家族そろって年を越すって」（一所懸命フォロー）
…（中略）…
政子「来年はゆかりさんも呼んであげたいな」
義男「あ、その話だけど、彼女とは別れたよ」
一同箸が止まる
阿野だけは食べ続けている
房子「別れたの？」
政子「どういうこと？」
義男「ふられたんだよ」
宗男「兄貴、ふられたとか」
波子「…まあ、いいじゃない。ねぇ」（房子に）
房子「うん、私、あのひとあまり好きじゃなかったし」
義男（無理に笑いながら）「まあ、この話はよそう」
時次郎「なんや残念やなー。せっかく良かご縁やと思っとったのに」
黙々と食べていた阿野、突然口を開く
阿野「ひょっとして、向こうの両親と何かあったのかもしれないな」
波子「蒸し返さないの」
宗男「そうなん？」
房子「ねぇねぇ、何て言われたの？」
阿野「ひょっとすると、家族のことを言われたのかもしれないな」
義男「……」（図星）
政子「そうなの？」
義男「なんだか色々調べたらしいんだよ。
向こうは由緒あるご家系だから、つりあいがとれるかどうか」
騒然となる家族たちを尻目に、一人どんぶりのお汁を綺麗に飲み干し、
手を合せて箸を置き、みかんを手に取る阿野
…（中略）…
義男（気を変えようとして）「テレビを見よう」
波子「…うん、そうね。（マリアに）音量あげてもらえますか」
マリア「はい」
義男、立ち上がってみかんを取りに行く
テレビの音量があげられ、皆、紅白歌合戦の画面を見る
画面にはディックミネの歌う姿
時次郎「ああ、やー、ディックミネはやっぱ歌が上手かー」
阿野「ディックミネは、あそこがでかくて
”でっかいミネ”から来ているらしいですね、お父さん」
時次郎「…ああ、そうなんですか」
阿野「三木のり平が見て、びっくりしたっていう話ですよ」
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