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2009年12月23日12:06

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映画『彼岸島』の雅(みやび)

試写会に当選したので、12月21日と22日の連日、中野サンプラザにて鑑賞。
http://ch.yahoo.co.jp/higanjima/index.php?blogid=5
昨年6月21日のヘドウィグ打ち上げライヴ以来のサンプラザなので感慨深いものが。
21日は講談社合同試写会とのことで、結構男性客が多かったよう。
舞台挨拶は主役の明役・石黒英雄くんと友人・加藤役の半田晶也さん。
22日は一般試写会で、前日は解放されていた二階席は締め切り。舞台挨拶なし。

この作品については、最初は不安のほうが大きかった。
原作は青年漫画でエログロシーンが多いようだし(Webで見られる第一話のみ見た)、
怪奇スプラッターものは得手ではない。もっと繊細な耽美幻想のほうが好み。
キム・テギュン監督の作品も観ていないし、作風は未知。
物語の重要な存在である吸血鬼の総統・雅(みやび)を、
山本耕史くんがどのように演じているのか、興味はただただそこに尽きる。
試写会直前にようやく公開された雅画像と動画は、期待をはるかに上回ったし、
http://www.sanspo.com/geino/news/091218/gnj0912180513020-n1.htm
http://tv.oricon.co.jp/interview/091217_01.html
ファンとしては垂涎の思いで会場に赴いた。
そしてみごとにやられた!

作品の尺から言えば彼の登場場面はわずかと言えるけれど、
そのインパクトの強さは圧巻!
白塗りに白髪(プラチナブロンドのようにも見える)の鬘、紅い唇。
そしていまだかつて見たことのない表情。
まばたきもせずくぅっと見開かれた瞳。
ほんの少し左に頭を傾ける仕草。にやりと笑う顔。
そう、よく小説の美女の怒りなどで「片眉を引き上げる」という表現があるけれど、
本当に片方の眉だけすっとあがったり、片目だけ大きく見開いたり、
片方(多分左だったと思う)の口角だけくっと上げたり、
その表情の動きのひとつひとつが迫ってきて、目に焼き付いてしまう。
人間ではないもの(とはいえ姿は異様なまでにうつくしい!)なのにリアル。

絶海の孤島に巣食う吸血鬼の一族と人間との戦いという荒唐無稽なお話は、
一歩間違うととんでもない茶番劇になるだろうけれど、
彼がその要として、圧倒的な存在感で君臨しているからこそ成り立つ世界。
またしてもヘドウィグを連想してしまった。
「あたしが真ん中に立たなけりゃ、あんたらだって何の意味もない!」
("Without me right in the middle,babe you would be nothing at all")
こんな存在をリアリティを持って見せられるひとなど、彼以外にいないだろう。

<台詞>
他の場面が、ずっと大音量で疾走し続けているのに、
雅の周りだけは別次元のしーんとした静けさを感じてぞくぞくする。
その圧倒的なオーラ。そして耳にやさしく響くやわらかい声。
残虐非道を尽くしているにも関わらず、心地よく響いてくるのだ。

「憎しみと絶望に染まった血は極上の味だと聞く。
ほんとかうそか試してみよう」

「お前の眼は憎しみであふれてる。それはいい事だ。
憎しみは人を生かし、力を与える。
そろそろ私の元へこないか。悪い心地はしないぞ」

「そんな顔をするな。本当の地獄はまだこれからだ。
私が究極の力を手にした時、人間どもは知ることになる。
本当の絶望とはどんなものかを。
奴らの泣き叫ぶ顔を眺めながら命を吸い尽くす。
これ以上の楽しみがあるか?」

「私を生み出したものは人間のエゴと狂気だ。
人間も吸血鬼も本性は同じだ。
強いものが弱いものを支配する。それがすべてだ。
お前は私の右腕にふさわしい男だ。
こっちの世界に来い」

「そうだ、抗え、私を憎め!
その憎しみが深まれば深まるほど、貴様らの地獄も深まるのだ」

どれもこれも上から目線の高慢な台詞のはずなのに、
彼の声で聞くとうっとりする。
雅に命がけで立ち向かう丸眼鏡こと篤に向かっての、
「私の首が欲しいんだろう」
「やっと二人きりになれた」
「悪あがきも愛おしい」
なとど囁く、あからさまに迫るような台詞もたまらない。

<衣装・背景>
一番多く登場するのは、英国紳士的な洋装。
紺色の燕尾服だろうか、後ろがながく、前丈が短い上着は、
その下のすらりと長い脚をいやが上にも引き立たせる。
白のズボン。黒のブーツ。乗馬姿はことに麗しい。

館でくつろいでいる場面では、白の和装。
薄ねず色のぼかしで浮き上がるような葉は笹のようにも見える。
裏がついているかどうかまで確認できなかった。
(続くエロティック場面に目が釘付けでそれどころでは…)
公開写真の画像には裏に色が見えているようだけれど、
襦袢や下穿きの色とも思えるので確定は出来ず。
ともあれ私の目には夏お召のような織に見えた。
細かな障子格子の窓辺に立つ、後ろ姿もうつくしい。
帯もお対の布のようで、全体に同じ色のトーン。

背景の襖から浮き出すような白彼岸花の群生も素敵。
島に咲く紅い彼岸花は血のイメージでいかにも毒々しく作ってあるが、
彼の背景や鉄扇の柄が白彼岸花なのは、その白のイメージを強調するためか。
男性ながら白薔薇や白百合に譬えられる耕史くんによく似合う。
バックに花を背負った、正当派の少女漫画キャラみたい。
ただし襖絵の花の下のほうに葉っぱまで描いてあった。
(リコリス系の彼岸花は花と葉っぱは別の時期で、絶対一緒には出てこない)

祠から出てくる場面の長髪全裸も、彼の肉体でしか表現し得ない、
素晴らしい衣装だと思う。
彼の白い体とその表情に目を奪われて、
申し訳ないけれど女優さんが目に入ってこない。

<画面>
あ、この渋い色合いは「銀残し」みたいだな、と感じて、
あとで調べたら、キム・テギュン監督作品『火山高』(2001)は、
銀残しを使用した映画として挙げられていたので、やはり、と思った。
本来の銀を取り除く処理をあえて省く事によりフィルムに銀を残す手法で、
これにより映像の暗部が非常に暗くなり、彩度の低い渋い色となる。
邦画では故・市川昆監督の『おとうと』などが有名。
原色ではなく古い写真のような不思議な色合いで、この作品には効果的。
その中で流される血の紅が、さらに印象的になる。

ただ、全体的には冒頭からジェットコースターのような疾走感が続き、
音量も大きく画面も揺れるので、私にはかなりきつかった。
初日に前のめりで見ていた時には、映像酔いをおこしてしまったほど。
血や死体などはいかにも作り物だから怖くて気持ち悪いというのではないが、
荒海に放り出されているような感覚。
二日目は展開も分ったし、一番後ろの席で引いて見たのでようやく落ち着いたが、
普段は静かに息を詰めて見るような作品をみることが殆どなので、
やはりこれを見るには覚悟が必要。
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