前日とほぼ同時間にみらい平着。
昨日から、いつもはまばらな駅と思えないほどの人出の多さに驚いていたのだが、
近場のゴルフ場でレディースカップが行われるため、
ギャラリーが押し寄せてきているらしい。
専用バスに乗り込むゴルフ客の方々を尻目に、
私たちはタクシー相乗りで、開園時間の9時半ちょうどくらいにワープ着。
＜午前中は園内見学＞
時折肌寒く、雷雨にもなった昨日とは打って変わって、爽やかな晴天。
地面はぬかるんでいるけれど、雨のあとの空気は澄んで清々しい。
本日は、午前中は外ロケでここは午後からと聞いていたのに、
何やら扮装したエキストラさんらしき姿を見かけて、
ここでやるのかと一瞬そわついたが、職員の方の話では別番組の撮影らしい。
そう言われれば、目にしたのは農民のような格好をした人たちだったし、
陽炎とは時代も違うように思える。
滝田栄さんの出演するNHK教育の番組とのことだが、タイトルや詳細は不明。
ワープは本当によく使われているんだなあ。
まずはゆるりと園内チェック。
入口からまっすぐ見える町屋の通りの軒先には、干し竿のようなものが出ていて、
色とりどりの暖簾がたくさん干してある。一堂に会しているとなかなか壮観。
昨日の雨でぐしょ濡れになってしまったものを、天日干ししているのだろう。
雨ざらしになることの多い暖簾は、自然に色が抜けていて良い感じ。
「酒」と筆文字で記された提灯看板には見覚えあり。
竹村の旦那がいつも引っかかってしまう居酒屋の看板かな。
小橋のある路地のほうは、昨日はあった柵などが取り外され、暖簾もない。
大店通りを眺めると、地面を守るために中央に敷かれていたむしろが取り外され、
その四角い跡が地面にくっきりと付いていた。整えるのに少々手間がかかりそう。
平行している長屋門沿いの道に、いつもはない塀や棕櫚などが設えられ、
関前藩らしき武家屋敷の通りとなっているのは、昨日見た時と同じ。
目隠し塀は白壁ではなく、ほんのり土色をしている。
江戸城ゾーンからオープンセットゾーンのほうを覗いてみると、
先のエキストラさんたちは、こちらで撮影のようだった。
門前の規制チェーン近くにいるワープ関係者の方が、
「あの鳥、この間出てたでしょう」と裏ワープのほうの高い木を指差す。
そうそう、第一回目で登場したあの大きなサギ！あれはワープのサギなのだ。
「出演料を取らなくちゃね」との冗談に、見学仲間一同笑い。
＜井筒兄弟ご登場＞
いつもだと昼食作りの暖かい匂いが漂ってくる頃だが、
ロケ撮影も終盤のため、片付けなしで手間がかからないためか、
本日はお弁当が積まれているようで、ちょっとさみしい。
お昼には、オープンセットでの撮影を終えた別番組隊が引き上げて来たけれど、
この食堂は陽炎チームの「陽炎亭」なので、別組の方々は入らないようだ。
ともあれ、いつ陽炎組が帰ってきてもさっと動けるように、
早々に持参の昼食を摂り、しばらくおしゃべり。
と、どう見ても役者さんらしい、浴衣姿の若い男性二人連れが、
私たちの居る無料休憩所のほうに入ってきた。
どうも勝手が分からないらしく、こちらにまでお辞儀なさっていたが、
案の定、入り口を勘違いしていたものらしく、教わって事務室のほうへ。
各々の白地の浴衣と紺地の浴衣は自前らしく、扮装前の素顔のようだが、
いきなり見ても、どなただか見当が付かない。
「あの二人は、昨日も食堂に長く居ておしゃべりしてたよ」と見学仲間。
「今日は関前場面の撮影のはずだから、一人は磐音の妹・伊代の旦那の
井筒源太郎じゃないかな。見覚えがある」だの、
「一緒に居るということは、その弟の遼次郎役じゃない？」
「そうか、磐音ゆかりの関前のご兄弟ね」
「あのもう一人、崎本大海(さきもとひろみ）くんかなと思うけど…」などと、侃々諤々。
http://www1.odn.ne.jp/tamura-pro/sakimoto.htm
この時は確信が持てなかったのだが、後で崎本くんのブログを見てみると、
二人一緒の楽屋写真が載っていた。
http://ameblo.jp/sakimoto-hiromi/entry-10257986539.html
兄の源太郎役は朽木正伸（くちきまさのぶ）さん。
http://www.iijimaroom.co.jp/profile/kuchiki_masanobu.html
崎本くんはその弟の遼次郎役。二人は実際にとても仲が良さそう。
あとで扮装して出てきた時も、ずっと側にいて睦まじかった。
月代がよく似合い、袴姿も凛々しくていかにも若侍らしい。楽しみ楽しみ。
＜主役達の昼食時間＞
食事もとうに終え、今や遅しと待ち構えているものの、
外ロケはかなり長引いたらしく、撮影隊はなかなか姿を見せず。
昼も過ぎ、13時も回った頃、ようやくワープに車が帰ってきた！
機材を降ろすスタッフたちに混じり、最初に姿を見せたのは霧子役の佃井さん。
以前の見学時にはリハーサルだったので扮装していなかったのだが、
この度はなんと若侍のような男装。
磐音とお揃いのように高く結い上げたポニーテールは自毛。元結は紫か。
袴を付けた姿は少年剣士のようでとても可愛い。
満面の笑みで、あたりのひとみんなにあいさつをする。ほんとに感じが良い。
彼女はきっと誰にでも好かれるだろうな。
磐音も定番の黒着流し姿で現れた。
楽屋口のほうを気にしていたのに、大きい車が出入りするほうから
まっすぐ歩いて来たので、皆ちょっとどぎまぎ。
そのまま食堂「陽炎亭」に入ろうとする。
たちまち集まってきたファンたちにプレゼント攻めにあったが、
礼を言いながら気持ちよく受け取っていた。ご機嫌は良さそう。
一仕事終えてきたあとなのに、表情にそう疲れは見えず、すっきりと綺麗。
持って出て楽屋で食べるのかと思いきや、テーブルについてお弁当を食べ始めた。
彼が扮装姿で中でそのまま食べるのは大変珍しいので、見学者一同そわそわ。
同じテーブルには霧子ちゃんも居て、何かお話している様子。
お昼が遅くなってお腹もだいぶ空いていただろうし、食事はあっという間。
＜出演者続々登場＞
表でもざわざわと人の動きが出てきて、
すいっと楽屋に入る浴衣姿のおこんさんの後ろ姿を目にした。
浴衣は紺地に白の大きな花模様に扱き帯。
少したってから、別の女優さんの浴衣姿も見えた。
あ、これは磐音の妹・伊代役の尾高杏奈（おだかあんな）さん。
http://www.hirata-office.jp/talent_profile/entertainment/jpg/profile_anna_odaka.jpg
ここでお会いするのは初めて。小柄で可愛いひとだなあ。
伊代も源太郎も遼次郎も居るのだから、
これから関前場面の撮影が始まるのは間違いない。
磐音も関前で着流し姿のはずはない。どんな姿が拝めるのか楽しみ。
殺陣師の竹田先生があらわれると、何か始まるのかなとわくわくする。
白いTシャツに長い髪をふわっとまとめた、シャープな感じの女性も顔を見せた。
女忍びおてん役の蒲生麻由（がもうまゆ）さん。
http://www.stardust.co.jp/section3/profile/gamomayu.html
お目にかかるのはお初。やっぱり綺麗なひとだ。
他にも忍者役らしきひとたちが来ていて、先生はそこらの通りで殺陣の指導。
皆、扮装はしていないので、夜撮影の段取りなのだろう。
スタッフが妙に目立つ黄色い半円形の道具を手にしていた。
これはどうも雑賀泰造の武器である、鎌ブーメランの練習用らしい。
素材はダンボール紙か何か？あんまり学芸会的なので、笑ってしまう。
扮装した井筒兄弟が現れる。
二人してしばらく座り、崎本くんは目を閉じて集中している様子。
と、何か冗談でも言われたのか、急に立ち上がって朽木さんに向かって行き、
なんだか二人して笑っていた。本当の兄弟みたい。
扮装した伊代が楽屋のほうから姿を見せた。
淡いピンク地に小花模様の着物、紫の文庫帯。
嫁いだとはいえ、まだまだ夢みる少女のような色合い。
扮装写真は、あとでご自分のブログに載せられていた。
http://blog.oricon.co.jp/odakaanna/archive/377/0
自前らしき黒い日傘をさして、
夫、義弟とともに町屋通りを歩いて長屋門に面した通りへ。
関前はすぐそこにある。
＜磐音とおこんの道中姿＞
黒っぽい三角型の網代笠と丸い笠を、小道具さんが運んでいった。
これは磐音とおこんの旅姿のためか。
そのお二人は道中着に着替えてご登場。
おこんの着物は、以前にも見た緑地の絣模様。
綺麗な朱色に白抜きの薄模様の帯を、角出しのようなお太鼓結び。
この組み合わせはお正月スペシャル『夢の通い路』の
熱海への道中の時と同じスタイル。
でもさすがに背負った包みが行李のようで、大きい！
熱海と関前では比べ物にならないほど長道中だもの。納得。
白い脚絆に草鞋掛け、白い手甲をした手に竹の杖。
磐音のほうは、今までの回で見てきた、黒の着物に黒の袴ではなく、
本格的な道中姿として、濃紺の裁着け（たっつけ）袴なのが新鮮。
道中羽織も着物も、鉄紺のような色から灰青のような色まで、
紺色ベースになっていて素敵。足元は紺足袋に草鞋掛け。
羽織は燕尾服のように裾が割れているかたち。
分かれ目の背の部分に黒い当て布。
背中に背負った道中嚢は、お正月スペシャルでも見たもののよう。
黒に十字の交差が入っている。
撮影場所は昨日からもう作りこんでいた、
長屋門沿いの武家屋敷を思わせる通り。
しょっちゅう使われる大店通りと平行した隣の道だが、雰囲気はがらりと違う。
磐音たちは町屋側（町屋は見えぬよう塀の目隠しが出来ている）から、
お堀のあるほうへ歩みを進める。
少々遠いけれど、見学者は商家や自身番屋ゾーンと江戸城ゾーンを結ぶ
小さい橋の付近に集まり、歩んでくる磐音たちを正面に見る。
この橋は昨日、おこんと速水さまの出会いとやりとりが撮影された場所だ。
陽射しがまぶしいが、それをものともせず皆いっせいに双眼鏡を覗く。
私はいっさい持たず肉眼で見るのがポリシーだけれど、
優れものを持つKさんが「ちょっとのぞいてごらん」と少し見せて呉れた。
磐音の顔の凛々しさ、端麗さにはため息が出てしまう。
大小の刀の柄を覆う布袋は紅色で鮮やか。
＜関前での会話＞
堀のほうに向かって歩いている磐音たちに、後ろから「兄上！」と声がかかる。
振り向くと、そこには妹の伊代、夫の井筒源太郎、その弟の遼次郎。
「伊代」と言葉を返す磐音。
その視線の先に、棕櫚や蘇鉄が覗く塀が見えている。
ああ、なんだかシリーズ1の第一話で、江戸勤番から関前に帰って来て、
やはり伊代が出迎えた若き磐音の場面と重ね合わせて、じーんとしてしまう。
原作第二十一巻『鯖雲ノ城』での関前行きは船の旅で、
港に父の正睦、母の照埜まで揃って迎えに出ていたものだが、
この様子だとドラマではやはり陸路を取り、静かに関前入りしたものか。
「ちょうど良うございました。
そろそろ戻られる頃かと、坂崎の家に向かうところでした」と伊代。
「義兄上、よう関前に戻られました」と源太郎。
「源太郎殿。伊代が世話になっておる。元気そうで何より」と
挨拶を交わし、傍らのおこんを「おこんさんじゃ」と引き合わせる。
「こんでございます」とおこんが腰を折り、伊代たちも礼を返して、
「父上がおっしゃっていた通りのお方です」とにっこり。
「父上が何と？」「それは美しいお方だと」と源太郎ともども讃える。
「まあ。そのようなことを言われては困ります」と、
おこんは身の置き所に困った様子。
ややあって、源太郎が後ろに隠れるように控えていた弟を、
「弟の遼次郎です」と紹介。
「ご高名はかねがね。以後お見知りおきを」と
緊張の面持ちの遼次郎には、磐音への憧れが感じられてなんとも初々しい。
出演暦を見ると、崎本くんは大河ドラマなど時代劇にもよく出演しているし、
若いけれどこういう世界によく馴染んでいるのが感じられる。
原作では、磐音は佐々木家に養子に入ってしまうため、
坂崎家を継ぐために、この遼次郎があとに入ることになっている。
それを思うとこの顔合わせには、さまざまな感慨が湧いてくる。
まだやや頼りない感じはあるものの、
素直で美形の若者が、磐音のあとを継ぐのは嬉しい。
坂崎家の使用人たちだって、磐音のような素晴らしい嫡男が出て行ってしまって、
あとを継ぐのがしょうもない人材だったら、
「我らが若様」として承服しかねるに相違ない。
「姫侍」の系譜を継ぐような麗しいひとで良かった良かった。
＜撮影合間の和気藹々＞
例によって、この一連の会話場面も、カットを割って繰り返し撮影。
遠いだけに、アップ撮影のためレフ版で囲われると見え辛いし、
きらきらとした照り返しがまぶしい。
カメラが回っていない時には、久々に日除けの傘が差しかけられる。
今年に入ってから、2月、3月、4月と見てきたロケ撮影の頃は、
まだまだ寒い時期なので、暖を取るほうが大変だったが、
また日傘の季節がやって来たんだなあ。
本日の磐音傘係は、去年から付き人役をやっている、
耕史くんの実のお兄さんが勤めているが、
なんだかにこにこ楽しそうで、時々閉じた傘を上下に降っているのが、
祭りの纏持ちみたいに見えて微笑ましい。
引っ込んだかと思うと、紙コップの飲み物を届けたり、細かな気配り。
弟くんのほうはというと、相変わらずじっとしていられない性分で、
合間に相撲の四股踏みのようなポーズを取ってみたり。
ご兄弟、よく似ていらっしゃる。
おこんちゃんのほうは、昨日は磐音なしの撮影で、
全体に大人しい印象だったのと打って変わり、
今日はけらけらとよく笑う声が、こちらにまで響いてくる。
やっぱり耕史磐音が居ると居ないじゃ気分が全然違うのでしょうね。
彼女の日除け傘が間に合わなかった時、耕史磐音はさりげなく
自分の笠をかざして、おこんの顔に陽があたらぬよう影を作ってあげていた。
「やさしいわね」とKさんは感激の面持ち。
「さあ、参りましょう」という感じで、
五人が連れ立って坂崎家に向かう場面では、レールを敷いての撮影もあった。
最初レールが短く、私たちの見える範囲にまで進まないのでやきもきしたが、
願いが通じたのかレールが足され、なんとか視界に入るところまで来てくれた。
入ったと同時くらいにカットになってしまうけれど、致し方ない。
二時半頃に始まったこの関前登場場面は、二時間近くかかって終了。
井筒兄弟はこれで撮了らしく、スタッフから拍手。
＜霧子の道中陰警護＞
閉園時間まであとわずか。
これでいったん楽屋に帰るのか、と急いで町屋の通りに走っていくと、
撮了の井筒兄弟は引き上げてきたが、磐音とおこんはオープンセットの
宿場町通りのほうへ向かって行った。まだ旅の途中を撮るらしい。
残念ながら規制チェーンは、宿場通りへ向かう傾斜の手前に張られているので、
側まで寄ることは出来ない。
と、さきほど見た男装の霧子が、背に小さな荷を背負ってやってきた。
彼女も磐音たちと一緒に旅をするのかしら。
原作での船旅には、佐々木道場の若い門弟・松平辰平が同行するが、
ドラマではその替わりに、彼女が同行するのかもしれない。
ある意味新婚旅行のような旅だのに、おこんは気が揉めるかも。
などと考えていたら、宿場通りを揃って行く磐音とおこんの姿が一瞬横切り、
そのあと間を置いて、笠をかぶった霧子があとを付いて行くのが見えた。
あ、この感じだと、並んで同行する旅ではなく、
霧子は目立たぬよう、二人を陰で警護する役回りかもしれない。
ドラマでは雑賀衆たちとの戦いがメインとなるし、
最後まで雑賀泰造たちがまとわりつくのは分かっているから、
そこから外れ、磐音の味方となった霧子が密かに付き従っているのは、
心強いことだろう。
それにしても男装姿で磐音にぴたりと添っている霧子は、
たいへん良い役どころで、羨ましい。
規制チェーンから先の傾斜は、宿場通りに交差する坂なので、
宿場通りを、駐車場の方角から奥の館のほうへ進む磐音たちの姿は、
この坂に面した部分だけ、垣間見ることが出来る。
磐音、おこん、少し間をおいて進む霧子の道中姿は、
行ってはもとの方に戻り、何度か繰り返された。
このあたりで閉園時間いっぱい。
金曜日、雨で磐音の撮影が持ち越しになったこともあり、
まだワープロケは完全に終了していないらしいが、
予備日は次の火曜日だと聞いているし、もう仕事は休めない。
ともあれ、本日は道中姿がたっぷり見られたし、
伊代や井筒兄弟など、初めてお目にかかるひとたちも見られて嬉しかった。
これでもう当分来ることもないだろうけれど、実感が湧かないまま、
撮影の続くワープをあとにした。
（10日の見学記に続く）
ログインしてコメントを確認・投稿する