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2024年08月26日16:14

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ラストマイル

 巨大物流産業の内幕を重層的に描いたサスペンス群像劇「ラストマイル」、観てきました。
 ア◯ゾンを思わせる外資系物流企業の配送品の中に仕込まれた爆弾を巡り、様々な人々の思惑や人生が交錯する複雑な話ですが、さすがに名手・野木亜紀子の脚本だけあって一瞬たりともダレることなく2時間強の長尺を見せ切っておりました。見事です。

 と、その面白さを認めた上で、色々苦言もございます。

 野木は4年前にも「罪の声」という犯罪ミステリを手がけていて、こちらは派手な見せ場はないながらマンハントものの面白さを十全に追求、次から次へと登場する人物のバックボーンまで織り交ぜながら観るものを混乱させない、骨太のサスペンス作品に仕立てておりました。
 しかしながら本作は、なんだか色々と風呂敷を広げすぎた感が強い上、過去のTVドラマ「アンナチュラル」「MIU404」を絡ませたことでかえって観客の興味を分散させてしまい、ひどく散漫な印象を与えてしまっているのです。
 両ドラマの主要登場人物が物語を転がす上で重要な役割を果たすのならまだいいですが、正直、展開に貢献しているとは言い難いですね。それでもまだ「アンナチュラル」のUDIラボの面々は後半で重大な発見をしますが、「MIU404」の機捜はあまり役に立ってはいなかったです。
 観てて思ったのですが「MIU404」で強烈な印象を残した捜査一課の刑事・刈谷の出番がかなり多かったので、それならいっそのこと、流通センターのセンター長・舟渡エレナと彼が利害の対立や立場の違いを越え、犯人逮捕と被害拡大の阻止という点で互いを認め、やがてタッグを組むという話にした方がシンプルで面白くなると思いましたよ。
 さらにいうと、本作は音楽が饒舌すぎて耳障りでした。爆弾が爆発する前や、何かが起こりそうになるとやたら大仰な音楽が鳴り響くのはわかりやすすぎるし鬱陶しいし、かえって興趣を削ぐ結果になっています。
 また、画面に浮かび上がった字幕が実景の一部に同化するという見せ方も、まあ今風と言えば今風ですが、映画では使って欲しくない手法でしたね。ああいうことをやるのならいっそ映画ではなく前後編に分けたスペシャルドラマとして製作しオンエアした方がよかったんじゃないでしょうか。
 野木作品ですとNHKでやった「フェイクニュース」がその形をとってましたしね。
 まあ、先述した「罪の声」が「大地にどっしり根を張った大木」であるとするなら、「ラストマイル」は残念ながら「やたら横に広がった芝生」といったところでしょうか。

 色々批判を並べましたが、本作が社会派サスペンスとして極めて鋭い視点を持っていることには変わりはないと考えます。
 さらに言えばこれは「自分の仕事に誠実に取り組む全ての人々への賛辞」でもあると思います。これは野木がこれまで手がけてきた「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」などにも共通して言えることですね。
 本作では大手配送業者の下請けドライバーの火野正平と宇野祥平のコンビが印象的でした。劣悪な労働環境や不利な契約に苦しみながら懸命に物流の現場を支え、クライマックスでは思わぬ大活躍を見せるこの二人こそが、本作の真の主役であったように思います。
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