「あまろっく」〜LOCKもしくはROCK

笑福亭鶴瓶と中条あやみが夫婦役というだけでまずはファンタジー。それを現実世界に引き戻すのが江口のりこと尼崎の街。噛み合うことのないギクシャクした人間関係はいつどのようにして丸みを帯びてくるのだろうか。監督はこれまで関西を舞台にしたTVドラマをいくつも撮ってきた地元尼崎出身の中村和宏。オリジナル脚本。

不本意にもリストラに遭った優子(江口のりこ)は生まれ育った尼崎の街にリターン。失意の日々のなか鉄工所を経営する父・竜太郎(笑福亭鶴瓶)が連れてきた再婚相手はなんと20歳の早希(中条あやみ)だった。どこまでも水と油のままの優子と早希、“人生楽しんだもの勝ち”をモットーとする竜太郎を挟んだ3人での生活は続いていく。

一見可愛い女性に思える早希もけっこうやっかいな側面、この無茶な婚姻に至るまでの背景がしっかりと。おそらく観る側のほとんどは優子の側に感情移入するのでは。いやこの家族の物語こそが、姫路出身、関西弁による丁々発止のやりとりをしっかり手の内に入れた江口のりこの代表作だと主張するかたも少なくないはず。

笑って泣かせて人情喜劇としての定型はしっかりと踏襲、関西出身者で固めたキャストが尼の住民を楽しく演じる雰囲気が伝わってくる。兵庫県先行上映はMOVIXあまがさきにてほぼ満席の地元民に混じって鑑賞。中条あやみはロケのあいだ阿倍野の実家から尼崎まで毎日通っていたという。それやったら最初からそう言うといてくれよ。