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2023年12月11日13:30

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老いた編集者老いを語る、その3

 筆者の考えるところでは、編集者とは真面目な人なのだが、エロ本編集者は違う。雑なのだ。同じ雑誌でも、エロ雑誌や音楽雑誌の編集者は雑で、ファッション雑誌とか車やバイクの雑誌の編集者というのは几帳面で真面目なように思った。ゆえに、筆者は、真面目さにおいてはメジャーだったのだ。ただ、能力がマイナーなのでエロ本の編集者にしかなれなかっただけなのだ。ようするに、メジャーの出版社に見る目がなかったということだ。いったい、真面目さと能力のどちらが大事だと考えていたのか疑問なのだ。
 さて、そんな真面目な筆者は、若い頃、人間は老いれば雑になるのだと考えていた。細かいことが気になるのも、細かいことを気にしなければいけないのも、全ては若いからだと考えていたのだ。たとえば、食事だ。筆者は栄養のバランスとか、太り過ぎたないようにとか、少しでも美味しいものを、と、食事だけでも、実に、いろいろなことを、きちんと考え計画的に食べなければいけないと思っていた。思っていただけで、そうしていたわけではない。そんなに人生はかんたんではないのだ。しかし、きちんと出来ないことを後悔はしていた。後悔する度に、老いれば、そんなことは気にしなくていいのだ、と、そう思ったものだった。老いてまで栄養のことなど気にしなくていいし、女にモテる必要もないので太ってもいいし、どうせ食欲も減るから美味しいものという欲求も減るのだ、と、そう思っていたのだ。
 ところが現実は違う。人間は老いるほどに几帳面にならなけれならない。理由は忘れるからだ。
 喫茶店を出てコンビニで買い物をして、再び、喫茶店に入っていたということがあった。いつもの習慣では、コンビニ、喫茶店だったからだ。それを食べ物なども買う必要があるからと喫茶店の後にコンビニと替えたはずなのに、その食べ物を抱えて、いつもの習慣通りに一度入った喫茶店に再び入ってしまったのだ。
 美味しいと評判の店まで、わざわざ電車で出かけて行って、ようやく駅に着いて、そこでパソコンをひろげて店の位置を確認しようとマックに入ってハンバーガーを食べていたことがあって驚いたこともあった。
 老人というものは、慎重に計画し、メモし、行動の前にはメモを確認しなければならないのだ。雑な生き方は何でも忘れてしまう老人には向いていないのだ。
 これでも筆者は三十分のインタビューのテープおこしなら、一度聞けば最後まで書ける、と、言っていたほど、もちろん、言っていただけで、出来ていたわけではないのだ、そう言っていたほど、記憶力には自信があった、というだけだ。それが何一つ覚えられない、と、そう言ってもいいほどになっているのだ。
 ただし、何もかも忘れることは悪いことばかりではない。
 たとえば、明治の文学について尋ねられたりしたとき、それを知らなかったとしても、忘れた、出て来ない、と、そう言い訳け出来る。これは便利だ。これなら、筆者の知識はあらゆる分野で学者並みと言っていいのだ。言うのは自由なのだ。実際、元々なかった知識なのか、忘れたのかは、自分でさえ分からないのだから。ただ、それに調子に乗っていると、ますます、忘れやすくはなる。最近の筆者は「私が好きなあの作家のあの小説の題名は何だったかな、いや、その前に、その私が好きな作家って誰だったかな」と言っていた。困ったものである。
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