mixiユーザー(id:2938771)

2023年03月28日15:41

40 view

やるべきことの前の休憩、その3

 人はいつ頃から繋がりを求めるようになったのだろうか。絆、と、声高に叫ぶようになった頃からなのだろうか。それとも、そのもっともっと前から、人は、繋がりを欲していたのだろうか。
 筆者がエロ業界に入って来たばかりの頃、あの頃は、とにかく忙しくて、なかなか家に帰れなかった。忙しいが貧しかった。貧しかったが、いろいろな理由で日銭を持っていた。コーヒーが飲めて、居酒屋で食事が出来て、シティホテルは無理だがサウナには泊まれる程度のお金は持っていたのだ。そう、あの頃はホテルではなく、しばしばサウナに泊まっていたのだ。
 撮影や取材が終わり、少し事務所、事務所といっても他人の事務所で編集の仕事をして、一人でふらりと飲みに出て、サウナに泊まって翌日の撮影には一番乗りしていた。新宿集合で新宿に泊まっているのだから当たり前なのだ。
 ホテルというのはカプセルホテルさえ高いと感じていた。サウナで仮眠が料金的にも手ごろだった。
 さて、そのサウナというのは面白かった。当たり前だが、ほとんどの人が全裸なのだ。風呂場では、その光景にあまり違和感はないのだが、サウナ室はちょっと違う。狭い部屋に全裸の他人が並んでいるのだ。中には男と男の出会いの場のようなサウナもあるらしいが、そちらには興味のない筆者は行ったことがない。ゆえに、そうしたサウナでは知らないが、少なくとも新宿の普通のサウナでは他人に声はかけない。
 なかなか立派なモノをお持ちで、とか、いやいや可愛らしくて羨ましい、とか、良い身体ですねえ、スポーツは何を、とか、そんな話はしない。皆、無言のままに、しかし、全裸を晒して並んでいるのだ。自分のモノを隠しもしない人も少なくなかった。
 普段なら他人には見せないようなところまで晒しておいて、互いに互いを無視しているのだ。不思議な空間なのだ。
 そういえば、昔のマニアのイベントやパーティもそうしたものだった。性は晒すがプライベートは晒さない。それがよかったように思うのだ。
 刹那を楽しんだのである。いつまでも恋人とか、いつまでもお友達と、そんな関係は望まれていなかったのだ。ああ、そういえば、レストランというのは、刹那なものだ。ところが、今は、レストランの高級料理が望まれているのではなく、いつまでもある家庭料理が望まれているのかもしれない。
 刹那だからいい。そこで、こんな企画はどうだろうか。筆者とは、いっさい関わりのないままに、ほんの束の間、筆者と時間を共有し、それでいて、筆者の記憶に強烈に何かを刻み込んだ人たちのことを書くのだ。
 たとえばマニア雑誌編集部に遊びに来ただけの人たち。読者で、たった一回だけ撮影モデルをして消えて行ったマニア女性たち。一度の取材でいなくなった性風俗嬢たち。イベントなどで、ほんの少しだけ話をしただけのマニアたち。
 交差点ですれ違うのではない。喫茶店やサウナで隣り合う、そんな関係で終わった人たちがいる。そんな人たちのことを書くのだ。
 少し気障かもしれないが「瞬きの裏側」と、そんなタイトルではどうだろうか。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年03月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031