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2023年03月24日16:28

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喫茶店のある街、その12の1

 筆者は喫茶店で本物の拳銃というものを二度も見たことがある。いや、正確には、二度とも拳銃は見ていない。それらしき物を見ただけだ。一度目は、風呂敷に包まれていた。四人のそれらしき男たちの話で、それが拳銃に違いない、と、そう思ったのだった。ゴトリという重い音は今も耳から離れない。二度目の拳銃は発砲されたものだった。テレビや映画ほど派手な音ではなかった。新宿の今はなき大型の喫茶店での出来事だった。驚くことに店は阿鼻叫喚とはならなかった。筆者自身も自分でも驚くほど平然と店を出た。店員はレジで、すみません、と、詫びていたが、彼も慌ててはいなかったように思う。
 そして、どちらの喫茶店も、その後も、筆者は利用していた。
 喫茶店の前で刃傷沙汰があったということもあった。刺した女は知らないが刺された男のことは知っていた。親しいわけではなかったが、エロ業界の仲間ではあったからだ。命にかかわるほどの傷ではなかった。
 深夜のチェーンの喫茶店でサマーセーターの下に手を入れて女の胸を揉む男がいた。抱き合うとかキスをしているぐらいは日常茶飯事だった。二十四時間喫茶の深夜二時から四時までは治外法権の無礼講なのだろうな、と、筆者は思っていた。もし、そこに全裸でいたすカップルがいても、少なくとも筆者は平気だったように思う。
 暴力はさすがに止めるが、怒鳴り合いぐらいなら介入しない。怒鳴り合うホストとホストよりも、詐欺まがい商法で純朴そうな若者を騙す男たちのほうが不快だったが、それにも介入はしないし、出来なかった。
 如何わしさやワイセツはいつだって隣にあった。それどころではない。命の危険さえあったのかもしれないのだ。
 筆者は喫茶店が趣味なので、観光地などに行っても喫茶店に入る。その時、なんだか落ち着かない気分になる。そこは安全で健全だったりするからだった。その感覚が逆であることは分かっている。分かってはいるのだが、やはり、落ち着かないのだ。水清ければ魚棲まず、と、そういうことなのかもしれない。
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