mixiユーザー(id:2938771)

2023年03月08日16:53

20 view

喫茶店のある街、その5の2

 午後三時からの取材。筆者は二時に喫茶店に入った。店に客はなかったが、ランチの後だったのだろう、いくつかのテーブルには、まだ、器が載せられたままになっていた。筆者は、自分がいつも利用している席にも汚れた器がそのままであることを確認し、レジ前のすでにテーブルが綺麗になっている席に座った。レジはカウンターの端にあり、カウンターの上もすでに綺麗になっていたが、常連でもない筆者はそこに座るのは失礼と遠慮していたのだ。
 まだ、ランチの後片づけも出来ていないのだが、店主らしい婦人には慌てる様子もなく、どちらかといえば、のんびりとした雰囲気で水を片手に注文を取りにカウンターから出て来た。いつもはトレーに水を載せて来るので、トレーもふさがっているのかな、と、筆者はそんなことを思いながら「ホット」と、婦人を見ることもないままに言った。
 しばらくノートワープロに向かっていると、常連らしいお客の男が入って来た。駐車場がいっぱいだった、と、言っていたので、彼が車で来ているらしいことが分かった。レジそばのテーブルはカウンターにも近いため、その男がカウンターに座ると、店主らしい婦人と男の会話が嫌でも聞こえて来る。
 会話は聞こえるのだが、二人は、いちおう、筆者に気をつかっているのか、声のトーンを下げていたので、その内容は明確には分からなかった。しかし、トーンを下げたとこで、ある程度は聞こえていた。その中途半端に聞こえる会話が不可思議だったのだ。男は、あの夫婦は来るらしいとか、今回は単独は入れない、と、そんなことを言っていた。別に、夫婦も単独も、普通の日本語だ、それを怪しく思うのは筆者がエロ本屋だからだ。
 ところが、聞いていると、当たり前の日本語だが、やはり不自然なのだ。ゴム、オイル、ガウンはいらない、ママは大きいのNGだから。
 これは、スワッピングパーティを主催している人たちの会話なのではないか、と、そう思うのだが、まさか、尋ねるわけにはいかない。知らない街の知らない喫茶店なのだ。昼にはランチもある普通の喫茶店なのだ。
 いや、これがさらに知らない街なら、話しかけてもいいのだが、知り合いのSМクラブの女の子たちのいる街の数少ない喫茶店なのだ。筆者が余計なことに関わり、彼女たちに何かマイナスの影響を与えるというわけにはいかないのだ。
 その男は筆者より先に店を出たので、一瞬だが、筆者と店主らしい婦人は店の中で二人になった。エロ本屋としては、すでにベテランと呼ばれる年齢だったが、結局、筆者には何も尋ねることは出来ず、そのまま、店を出た。その後も、その店は利用していたのだが、そのときの男が店には現れることはなく、また、別に怪しい様子もなかった。そして、SМクラブがなくなり、筆者はその店どころか、その店のある駅にさえ行く用事がなくなった。あの会話がなんだったのか、ゆえに、今も、筆者には分からないままなのである。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年03月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031