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2023年03月02日15:03

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喫茶店のある街、その4の1

 オシャレで綺麗なデパートを抜け、インテリジェンス溢れる書店の入ったビルを横目に大通りを渡ると、新宿はその顔色を変えた。小劇場のある不自然な自然公園とそこから見える古いラブホテル、その横にゴールデン街。まさに、当時の新宿を象徴するような光景。オシャレなデパートにも、ゴールデン街にも、ましてや、小劇場にも、筆者の用事はなかった。通りを超えて新宿七丁目に向かうと、テナントビルとラブホテルの混在する奇妙な空間に出る。そのあたりのいろいろなテナントビルの中にあったのが、SМクラブ、ホテトル、イメクラ、ファッションヘルスなどの性風俗店。
 いつもはパリジェンヌという半地下の巨大な喫茶店で時間をつぶしていた。その喫茶店も興味深いが、その話は後にしよう。
 パリジェンヌで時間をつぶし損なうことがあった。取材の突然のキャンセルとか、取材対象の大幅な遅刻がその原因だった。筆者は一時間以上、同じ喫茶店にいないと決めていた。自分ルールだった。ただでさえ、ノートワープロで仕事をするために四人掛けを一人で占有するのだから迷惑な客なわけで、それなら、せめて、一時間以上は利用するのを止めようと決めていたのだ。
 パリジェンヌを出て少し街を歩くと、ほんの少ししか歩いていないのに、新宿はさらに趣を変え、人の姿も極端に減る。そんな中にも喫茶店があるところが、また、新宿らしさでもあった。
 グリーンを基調として外装は、いかにも長閑だった。観光地にあれば、ちょっとしたデートスポットという雰囲気なのだが、中は違っていた。透明なガラスの嵌まるグリーンのドアを開くと、濃い赤のベルベット素材を思わせえる椅子と、何故か鉄製のテーブルが並んでいる。昭和の映画で観るような光景がそこにあった。
 レジには元は暴走族なのだろうな、と、そう思われる若い男。喫茶店の店員でありながら腰にはチェーンをぶら下げている。髪は金髪で、愛想も悪い。お客は、ごつい肉体をスーツで隠したような中年の男か、ギラギラと光るようなスーツのイケメン。ときどき、性風俗嬢と思われる女。そんな店にノートワープロを開いた筆者もいたのである。

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