先日「モリコーネ 映画が恋した音楽家」(これ傑作!)を見たせいでエンニオ・モリコーネが音楽を手がけた作品がやたら観たくなったので、「アルジェの戦い」を約20年ぶりに観ました。
1950年代から60年代にかけて、フランス植民地のアルジェリアで起こった独立闘争を、ドキュメンタリーのように荒々しくリアルに描いた力作であります。
本作がすごいのは支配者フランス=悪、被支配者アルジェリア=善という単純な対立構造で描いていないところ。フランス側の警察による爆弾テロ(!)の残忍さをこれでもかと見せた後で、その報復としてアルジェ側が行った同時多発爆弾テロによる犠牲者の姿を遠慮なく見せてるんですね。
しかも、この両場面で流れるのは全く同じ音楽。爆弾の応酬で亡くなった人々を悼むような哀しい旋律が、武力闘争という行為に対する異議申し立てのように聞こえるのです。
作り手の意図は、どちらか一方をことさら責め立てるのでなく、事実を冷徹に描き、流血の酷さ虚しさを見る者に感じさせることであったと、あの音楽の使い方ではっきりわかりました。
とは言うものの、やはり圧政者フランスの行為はあまりにも残忍に過ぎましたね。
本作の後半でフランス軍空挺部隊が独立派のメンバーを片っ端から逮捕して拷問にかけるシーンがあるのですが、これがまあ、目を背けたくなるような惨たらしさ。
ひとたび「支配者」の側に立ち、「こんな奴らは俺たちの好きなように扱っていいんだ」と思い込んだら、人間はあそこまで冷血になれるのですね。恐ろしいことです。
あれを見て思い出したのは、吉田秋生の傑作漫画「BANANA FISH」。
あの物語の後半で、コルシカ人マフィアに雇われた傭兵部隊が出てくるのですが、その指揮官と隊員たちの、人を人と思わぬ残忍さはまさに「アルジェの戦い」で描かれたフランス軍空挺部隊そのものでした。
おそらく吉田秋生はこの映画にかかり影響されていますね。
「BANANA FISH」のサイドストーリー「PRIVATE OPINION」にも、アルジェリアのカスバの攻防に言及した箇所があるので、これはたぶん間違いないと思います。
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