《バレエ》キエフに捧ぐ草刈民代の功績

『BALLET GALA in TOKYO』（昭和女子大学人見記念講堂）
素晴らしきやすらぎの郷を与えてくれた、草刈民代さんの行動に敬意を表し

映画『リトル・ダンサー』でアダム・クーパーを知り、しばらくマシュー・ボーンのバレエを追いかけていたことがあった。
もはやPTSDにもならんとする悪夢だった2015年8月、東京芸術劇場。
アダム・クーパー来日公演の演目はストラヴィンスキー楽曲『兵士の物語』★0.

当時の記録を見ると大枚12,000円×2枚。隣にワイフさんを従えて、最前列ほぼ中央。
客席数800余の中ホールに、観客はざっと50人、いや30人
舞台が始まり兵士に扮したクーパーが躍り出したものの、これが何とも言えない酷さで、学芸会のような英語劇が淡々と続けられた。
隣のワイフさんはすでに夢の中。周りを見ると、かなりの確率で船を漕いでいる。ここは海ではない。
映画も舞台も眠らないのが信条だったおいら。しかも最前列センター。
そして、いつの間にか眠りにつく。
この公演を境にアダム・クーパーとは絶縁し、バレエを鑑賞する機会もなくなった。
そんなトラウマを抱える夫婦2人が、いざキエフバレエ

談春独演会以来の人見記念講堂。
40年前の逸話を胸に秘めながら、チケットをもぎりドネイションBOXにチャリティの現金を投入する
公演自体は無料だけど「ウクライナへの寄付」がマスト。寄付金額のフロアも決められていて、そんな気持ちで1800人の招待客の1人となった。
チャリティコンサートの多くは「収益金の中から寄付をします」が定番なのに、この公演は開催経費は協賛企業やボランティアシーによって賄われているはずだ。
従って、寄付金がそのまま全額ウクライナの支援先に贈られる。とても気持ちがいい。

ロビーに飾られた生花札に違和感を覚え記録する。
「キエフ・バレエ様　御祝　楽天モバイル」
このような性格のチャリティガラに『御祝』はいかがなものだろう。

この違和感に答えが示されたように、並ぶ2つの生花には『祝公演』とある。
多くの演者が自主的に集まった『公演』に対する言葉としての『祝』ゆえ、素直に受け止めた。
一方のキエフバレエ団に対しての『御祝』には、何も気持ちが感じない。あの戦地のどこに御祝ムードがあると言うのだろう。
せっかく贈った花束だけど、与えられた仕事を機械的にこなす気持ちのこもらない担当がしでかした無策。
解約率30％の楽天モバイルの将来が気がかり。


総勢20名のプリマドンナ、プリンシパル、或いはダンサーたちがストイックに刻まれた肉体美でバレエダンスを披露する。
女性ダンサーはもちろん、男性ダンサーの美しさでさえ、ため息が出るほど筆舌に尽くしがたい。BRAVO！
レオタードさえ見られれば儲けもの。なんていう気持ちでやってきた自分を大いに恥じた。

マイベスト・ソリストはイングリッシュ・ナショナル・バレエに所属する猿橋賢
『「海賊」よりグラン・パ・ド・ドゥ』。彼のソロシーンをもう一度、大枚を払ってでも観てみたい。

シンボリックなステージは加治屋百合子と平野亮一ペアによる『「ジゼル」よりアダージョ』。二人ともほぼ下着。
駅前の裸像にいちゃもんをつける気の狂ったフェミニストPTAが観たら、目を覆うような出で立ちだけど、ほんとうに美しい。人間、生まれながらにして裸。
どうしてこの美しさに文句がつけられようか。

『二羽の鳩』も楽しかった。ほんものの鳩がダンサーとともに登場する。
「ハトが気になってダンスが目に入らない」のワイフさんの感想には同感。
バレエでは有名な演目のようだ。

ラストステージはキエフバレエからウクライナの2人。
顔の小さなプリマドンナと雄々としたプリンシパル。2人の顔に笑顔はなく、遠くウクライナを想いながら踊っていた。


10分にも及ぶカーテンコールに草刈民代がセンターに立ち、無言で観客に手を振った。
スタンディングオベイションはおいらと前の方の女性2人だけ。
それがコロナくんの礼儀とはいえ、哀しいエンディング。校則なんて無視して、満席の客席がスタンディングオベイションしてあげればいいのに。日本人の真面目さがもどかしい。

久しぶりの昭和女子。嬉しかったことがもう一つ。

ロビー正面に堂々と奥田元宗『秋嶽晩鐘』



草刈民代チャリティー公演開催「寄り添うことでテーマが見えて」寄付全額をキエフ・バレエ団へ
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