予定から2ヶ月ほど遅れましたが、ようやく公開されましたね、「ウエスト・サイド・ストーリー」。まずはめでたし。
ロバート・ワイズとジェローム・ロビンス共同監督による61年版がド傑作である以上、あのスピルバーグといえどもどう頑張ってもあちらを超える事はできまいと踏んではおりましたが、こちらはこちら。善戦したな、という感じです。
今回の映像化で強調されているのは「対立を激化させる不良グループを産む、社会の歪み」だけでなく、「否応なく貧者を追い立て足蹴にする『再開発』という名の暴力」でした。
ジェット団とシャーク団がいくらシマ争いをしたところで、そしてどちらが勝ったところで、いずれ両者は街から追い出される。つまりどちらも「敗者」なんですね。
その現実を見ようとせず、ひたすら憎しみをぶつけ合い、傷つけ合うことの不毛。
それがスピルバーグ版のテーマになっていました。このアプローチは正しいと思います。
本作はミュージカルなので、ソング&ダンスシーンがきっちり締まってないとガックリきてしまうんですが、そのあたりもしっかり押さえてあって、嬉しかったですね。曲順のシャッフルについてはやや疑問点があるんですが(特にマリアの「アイ・アム・プリティ」をあのタイミングで出すのはどうかなあ?)、プエルトリコ人たちが陽気に歌い踊る「アメリカ」というナンバーを、真昼の雑踏の中で大々的に披露するというのは良かったですね。前作では、夜の、アパートの屋上だったので、スケール感が全然違いました。
あと、ダンスの振付ですが、かのジェローム・ロビンスの振付が随所で生かされていたのもポイント高し、です。特にトニーとマリアの出会いのシーン。二人が両手をまっすぐ横に伸ばし、軽く膝を折りながらフィンガースナップをするというスウィートな動き。あれをちゃんと再現しているのが、いいです。
あまり意味のないキャラクター改変があったりとか、不満もなくはない本作ですが、まずは見応えある力作としてあの名作を再構築して見せてくれたスピルバーグには、とにかく賛辞を贈りたいですね。
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